井戸書店の歴史の棚でも大きくスペースを占めている縄文。日本人のルーツであり、わからないことが多く、個人的にはロマンを感じます。また、環境問題を抱える現代人には重要なサジェスチョンを与えてくると思います。この縄文を探るべく、小説家の夢枕獏さんと考古学者の岡村道雄さんが探検隊を組み、縄文ゆかりの地を訪ね、縄文を深く掘り下げます。
狩猟採集生活を営んでいました縄文時代。ドングリ、特に栗を食し、美味しい、甘い栗を選び、栽培までしていました。人間、甘さを追及すると虫歯というデメリットも付加されていたのは現代人と一緒です。そして、一般的な食事は縄文土器による鍋料理、いわゆる寄せ鍋で、家族みんなで鍋をつつく団欒を過ごしてました。今の孤食とは違いますね。
縄文期に訪れた温暖化により、狩猟採集から定住生活へ移り、栗以外にも、粟や稗なども栽培し、川を遡上するサケも重要なタンパク源となっていました。住居は土屋根の竪穴式住居で、主には寒さ対策、断熱性で土製の家にしていました。
全国の縄文遺跡で発掘される翡翠(ひすい)や黒曜石(こくようせき)から、それらの産地から各集落へ運ぶ人の存在にフォーカスがあてられ、定住すると近親婚問題回避のため、また、各地の情報を運ぶ人として、彼ら渡りの、現代で言う運送、流通的存在は定住者にとっては歓迎されていたのでしょう。
また、多くの生活品や装飾品に漆が使用されていたこと、現時点では世界最古の漆使用品が北海道から発掘されていること、また、土器などの補修にアスファルトが使用されていることなど、縄文人の技術力には目を見張ります。
最後に、縄文人の幸福について。彼らは一日4時間労働で生活できていたこと、アニニズム信仰ですべてのものに感謝の念をもって生きてきたこと、生まれ変わりの思想を持っていたことなどは現代人も少しは学ぶべきでしょうね。おおらかな気風で貧富の差もなく、固い人間関係の下、すべての人が生きよい時間を共有していたのが縄文人だったと思えば、ジェラシーを感じて読了しました。
『縄文探検隊の記録』(夢枕 獏・岡村 道雄著、集英社、本体価格860円)