あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

ミライの授業

2016-09-28 16:26:06 | 

 14歳の日本人、つまり21世紀人に書かれた、未来への視点を教えてくる授業の本です。実際に、灘中学校や福島県飯館村立飯館中学校などの生徒に語った内容です。現状を俯瞰しつつ、過去や現代において新時代を切り拓いた人物を再考しています。

 現在進行形の未来は、①世界規模で「安い賃金の人が選ばれる」、②AIが進歩し、「ロボットに仕事を奪われる」という2つの流れの中にあります。それでは、人として活かされる存在になるには未来を切り拓く発想の持ち主であり、それを実現する人になります。つまり、「未来をつくることができる」人。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という、ドイツ帝国初代首相、ビスマルクの言葉通り、 過去の変革者から5つの法則を挙げています。それは、

法則1  世界を変える旅は『違和感』からはじまる

法則2  冒険には『地図』が必要だ

法則3  一行の『ルール』が世界を変える

法則4  すべての冒険には『影の主役』がいる

法則5  ミライは『逆風』の向こうにある

としており、かなり詳細に解説しています。14歳にだけ独占させるにはもったいない教えです。特に、「課題をこなす人より、課題を見つける人になる」や、「まだ誰も手をつけていない『空白地帯』に仮説の旗を立てよう」など、大人にも参考になることが多く書かれています。本書では、「大人たちは、過去を引きずって生きている過去の住人」とされていますが、執着せず、素直にモノゴトを視る心を養っていきましょう!

『ミライの授業』(瀧本哲史著、講談社、本体価格1,500円)

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半市場経済

2016-09-21 15:41:17 | 

 グローバル経済や市場主義経済に大きく舵がきられてから、人間は幸せになったのか?という疑問をいつも抱いています。生活においては確かに便利になりました。商品ならなんでもすぐに手に入ります。しかし、手に入りにくくなったものもあります。人との間の関係性の希薄、また、自分が世の中の部品になり、交換可能な存在になって、透明人間になっていくような気もします。

 しかし、この経済体制が変わるはずはありません。まだ、グローバル化、経済原理主義が進み、個人事業者は減っていくでしょう。このような環境下でも、自分の生き様を明確にし、それを追求していかないと、幸福感を抱けないはずです。そこで、内山節氏が提唱しているのが「半市場経済」です。これは、

 「市場に依存し利益の最大化をめざすのではなく、また市場をすべて否定するのでもなく、生活者としての感性・感覚を事業活動にあてはめ、よりよき働き方やよりよき社会をつくろうとする目的を持って営む経済。『志』と『価値観』を共有することで、充足感と多幸感をもたらす新たな社会のかたちの創造でもある。」

と定義されています。自ずと「ローカル性」を持ち、人間間の「有縁性」が醸成され、「伝統回帰」に軸は移ります。さらに、倫理的になる可能性が高く、地球環境や技術の共有、共創に繋がっています。

 本書で強く印象を持ったのは第三章「存在感のある時間を求めて」です。我々現代人の時間を「未来による現在の支配」と評価しています。「現代社会では未来に目標を設定し、その目標を達成するために現代を効率的・合理的に生きている」ことは、老後のために安定した会社に就社し、そのために有名大学へ入学する線路に乗らされているわけです。しかし、過去があればこその今の自分であり、今の自分が生きた結果が未来につながるのであれば、「過去と未来を結ぶ『役割としての仕事』を意識している」限りにおいて、現代という時間を創造する人になれます。「いま、ここでいかに生きるか」を自問しなければなりません。

『半市場経済 成長だけではない「共創社会」の時代』(内山節著、角川新書、本体価格800円)

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母なるガンディー

2016-09-04 12:59:30 | 

 伝記はいくつになっても読めばいいと、国民教育の父・森信三先生が教えてくれました。ガンディーは歴史教科書で学ぶ人物で、非暴力主義でインド独立に寄与した人としか知りませんでしたが、まさに目からウロコの生き様を読みました。

 ガンディーの人生で常識では考えられない点は妻・カストルバーイとの関係です。同じカーストの13歳同士の男女が結婚し、愛欲の強いガンディーは4人の子供をもうけました。しかし、37歳の時に、プラフマチャリア(禁欲)の誓いを立て、以後は妻と性的な交わりを一切断ち、その後は同志として生きました。そして、ガンディーはインド独立という大義のために、父の役も捨てました。

 この禁欲が非暴力につながり、「暴力は暴力しか生まない。非暴力闘争に徹するしか道はない。」と強固にした非暴力への信念の根源が男性的なるものに由来しているということ。男性と女性の力の差が暴力と非暴力ならば、「女性性」に着目することこそ、平和を生むという思想は極めて興味深いですね。

 21世紀に立つと、ガンディーの思想は大きく注目される時が来たと著者・山折氏は訴えます。「ガンディーの非暴力思想をもって解決を目指すべき対象」である、貧困や格差は「構造的な暴力」としています。ガンディーの度重なる断食は欲を捨てることによって、その食を他へ譲ることになります。

 また、宗教間の戦いも、熱心なヒンズー教徒であったガンディーの「諸宗教を超越する『宗教性』を志向」する姿が答えになると述べています。「宗教性に基づく欲望のコントロール、そしてそのことで実現される非暴力によって、民衆一人ひとりが世界を平和の方向に向けていくこと、それがいま、何よりも求められている」

 現代に山積する世界の問題の解決の手立ての一つにガンディーは再評価されるでしょう。

『母なるガンディー』(山折哲雄著、潮出版社、本体価格1,400円)

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