あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

どうして人は4時間も『とみ田』に並んでしまうのか

2015-02-25 15:13:23 | Weblog

 ラーメン、つけめん1杯に平日は平均2時間、休日は3時間、最長で4時間もの行列ができる店が千葉県松戸市にあるらしい。その店は『中華蕎麦 とみ田』。店主の富田治さんの経営哲学はラーメン職人の真髄でした。

 2006年に『中華蕎麦 とみ田』を開業以来、松戸市内を中心に6店舗と自社工場を展開し、現在は年商10億円。経営者の力量はいかにと思いきや、自分が磨き続けたラーメンで、目の前の人が幸せになることだけを願っている職人気質な人間です。経営計画などの数字よりも、仕事の目的に集中し、それが達成できるように頑張る、この一点に尽きます。彼の師匠である、「東池袋大勝軒」の山岸一雄さんの言葉

 「目の前の一杯を、自分が作る最後の一杯だと思って作りなさい」

は、常に今のことを精一杯励むこと、それが明日や将来につながると信じる。だから、原価率も人件費も念頭に置かず、お客さまの満足それだけを追い求めています。昨日の自分を今日は超えられるか、業界は違えども、ひたすら技を磨くことが大切だと教えられました。日本酒の「獺祭」も同様、一点突破こそが解決へのヒントかもしれません。

『どうして人は4時間も『とみ田』に並んでしまうのか 日本一の行列ラーメン店の非常識経営哲学』(富田治著、講談社、本体価格1,300円)

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友だちの数で寿命はきまる

2015-02-23 18:24:14 | Weblog

  健康書の人気は衰えず、一つの健康法が話題になると一極集中して売れ始め、他社版元からも2匹目のどじょうが出没する、おもしろいジャンルですね。昨年は「ふくろはぎ」でした!

 さて、本書の副題、『人との「つながり」が最高の健康法』からすると、運動するわけでもなく、身体の部位に刺激を与えることもなく、食事にも関せず、人間関係を改善するということです。多くの研究データから、健康になるには、禁煙、禁酒、血圧、コレステロール、運動、遺伝よりも重要なファクターが「つながり」としています。一つの研究成果を読んで苦笑しました。

  誰に介護されると寿命が延びるか?

  男性は、息子の嫁、娘、妻の順(つまり妻が介護すると、旦那は早く天に昇天する)

  女性の場合は、介護者は夫が最適であり、息子の嫁に介護されるとそうでない場合と比較して4.3倍も亡くなりやすい。

 他にも、様々なデータが提示されていますが、つながりが少ないことは死亡率を上げているのは間違いなしです。つながりはただ健康だけではなく、幸福感も左右するので、人生を謳歌する上でも、幼少期から人間関係の構築の必要性をしっかり仕込まなければなりません。

『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法』(石川善樹著、マガジンハウス、本体価格1,300円) 

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本棚にもルールがある

2015-02-14 16:50:09 | 

  場所にルールを決めてモノを置くことは店舗の棚では当たり前です。例えば、先入先出や賞味期限品の撤去などの基本的な決め事はあります。当店ではジャンル別に陳列しているので、このジャンルの意味が判らなければ、どこに本を並べるのか判断に困ります。

 しかし、家にある3本の本棚には明確なルールはありません。読んだ本を収納する場所であり、その人の歩んできた道を示すものだと私は思っていました。しかし、本書を読んで、本棚に対する意識が180度変わりました。本棚はその持ち主の知的生活に欠かせない戦略的な武器であると認識しました。

 著者・成毛氏の理想の本棚は

・見やすいこと 

・2割の余白があること

が条件です。見やすさは理解できても、2割の余白に関しては疑問符が付きましたが、「現代社会をサバイバルするのに必須の条件は、『有益で鮮度の高い情報を仕入れること』と『それを活かすこと』である」と規定すれば、本棚に並ぶ本の鮮度が命であり、「自分の脳の容量不足を補ってくれる知のハードディスク」にする必要があります。本棚に入れる本の基準、そして、その新陳代謝に時間を割けば、自分自身が活性化するわけです。本をジャンルで並べることを提唱していますが、これは井戸書店の棚と同じであり、そう考えると、今を生きるお客さまの知のハードディスクになることが当店にとっても理想だなぁと感じました。いやいや、感じるだけでなく、わが家の本棚も戦略的本棚へ変更中です。

『本棚にもルールがある  ズバ抜けて頭がいい人はなぜ本棚にこだわるのか』(成毛眞著、ダイヤモンド社、本体価格1,400円)

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人生には「まさか」の坂がある

2015-02-11 12:55:40 | 

 書名で手に取ってしまい、読んでみて、著者・安里賢次さんの破天荒な人生に驚き、彼の人生哲学に納得しました。沖縄県那覇市で「まさかやぁー」という太鼓ライブのお店の店主であり、琉球民謡の歌手の安里さんは中学卒業後、様々な職に就くも、酒癖が悪さから喧嘩早く、アウトローの道に足を染めました。

 その当時の逸話で、彼の母親の息子への愛が身に染みました。安里少年が喧嘩に負けて、やり返そうと思い、家へ戻り、包丁を手に持ったところ、母が様子を尋ねます。彼は「殺しに行く」と正直に告げます。すると、母も台所から包丁を持ち出し、一緒に行くと言い出す。

 「おまえがそれくらい思いつめるほど苦しんでいるのなら、私もそいつらが憎い。だから私も殺す。ひとりよりふたりがいいよ。さあ、行こう。」「おまえは金(きん)なんだよ。鉛みたいな人間とどうして命を替えるのか。」

 こんなに母親から愛されている彼が本書の中で悟っています。

 「無条件の肯定は、どこかで自分の人生を支える強さにつながっている。」

 そして、彼の人生観の根底には「他利」が息づいています。「今生(こんじょう)での自分の役回りは人助け。命はそのためにある。」生きる意味に気付いて、人生が豊かになる。歩んできた経験だけでこれだけの生き様が語れるのは素晴らしい。読めば、必ずポジティブになれます!

『人生には「まさか」の坂がある』(安里賢次著、二見書房、本体価格1,200円)

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億男

2015-02-07 18:15:20 | 

  お金については皆さん、悩みますよね。誰しも欲しいけど、入って来ないし、財布からは出て行くばっかり・・・。しかし、大金持ちになっても幸せになるのか?ということを考えても、富豪になったことがないのでわからないし・・・。賞金3億円の宝くじに当選した、主人公・一男が大学時代の唯一の友達で、卒業後ビジネスで大成功してお金持ちになった九十九に、その真相を訊きます。

 ソクラテス、ドストエフスキー、アダム・スミス、チャップリン、福沢諭吉、ジョン・ロックフェラー、ドナルド・トランプ、ビル・ゲイツ…数々の偉人たちの“金言”を引用しながら、「お金と幸せの答え」を導き出します。

 お金の多寡ではなく、九十九の答えは明解でした。

 「死ぬことも、恋することも、人間が誕生したときからそこにあったものだ。だけどお金だけが、人がみずから造り出したものなんだ。人の“信用”を形に変えたものがお金だよ。人間がそれを発明し、それを信用して、使っている。だとしたらお金は人間そのものだと思わないか?だから僕たちは人を信じるしかない。この絶望な世界で、僕たちは人を信じるしかないんだ。」

 我々、商売での儲けという字も分解すれば、「信者」ですからね。

 ちなみに、ポジティブ心理学の研究によると、年収600万円が幸福度のピークらしい。

『億男』(川村元気著、マガジンハウス、本体価格1,400円) 

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手毬

2015-02-01 15:08:04 | 

  92歳の瀬戸内寂聴さんの本を初めて読みました。晩年の良寛さんと貞心尼の恋物語の『手毬』です。

  長岡藩士の娘として育ち、17歳で医者に嫁ぎ、その夫の不能が原因であるにもかかわらず、子を産まないと姑にいじめられ、夫の急死で離縁させられ、24歳で出家の道を歩んだ貞心。その6年後に、あこがれの良寛に出会い、夢にまで良寛さんを慕う、恋心を禁じ得ず、70歳の良寛と詩や歌を詠みあい、師弟ながらも恋い焦がれる時を重ねました。良寛さんが病で倒れ、下の世話をする貞心の姿は美しい。

 「貞心さんや、信とは任すということだよ」

 「人には仏性がある、だから拝む」

という良寛さんの言葉がさらにラブストーリーを引き立てます。

『手毬』(瀬戸内寂聴著、新潮文庫、本体価格438円)

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