コロナ禍では医療従事者の方々は大変な経験に強いられました。得体のしれない存在に対し、懸命に医療行為をしていただいたこと感謝に耐えません。新聞やニュースなどの報道で見聞きをしていましたが、やはり活字で読むと、脳内で主人公の気持ちを追体験するので、過酷な業務に心身が蝕まれていたことがよく理解できました。
本書は医者である著者・知念実希人氏が綴るコロナ関連に従事する3人を描いています。大学の附属病院の呼吸器内科の医師、そこでコロナ病棟に従事する看護師、そして、地域医療を守る町医者がいかにコロナに対応したかのドラマです。各々が時に挫けそうになっても、志高く、立ち向かう姿は美しいとしか言えません。特に、医師法第一条、「医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活をかくほするものとす。」に書かれた、医師のあるべき姿に立ち返っていたり、今まで培ってきた看護技術をもって重篤な肺炎患者を助ける思いは非常に尊重すべきことです。コロナウイルスは一つの自然災害としてとらえれば、全世界の人々が被害者であり、これを助けるのは医療従事者しかないと考えていましたが、本書内ではすべての人の協力の下にコロナに対峙しているという言質は医師ならではの言葉です。
これからもどんな感染症が発生するかわかりません。医療の大切さを改めて認識しました。
『機械仕掛けの太陽』(知念実希人著、文藝春秋、本体価格1,800円。税込1,980円)←10/20以降に発売