その7「オルランド」篇はこちら。
監督 デヴィッド・クローネンバーグ
出演者 ヴィゴ・モーテンセン ナオミ・ワッツ
音楽 ハワード・ショア
デビッド・クローネンバーグとくれば、「スキャナーズ」で頭が爆発し(ビートたけしがよくネタにしていた)、「ラビッド」で伝説のポルノ女優マリリン・チェンバースの腋の下に男根を生えさせ、「ヴィデオドローム」ではβのテープが腹にくいこみ「ザ・フライ」で人間とハエを融合させ……あんたしかし歪んでるよー、と言いたくなる作風で有名。
でもその一方で「デッドゾーン」(原作スティーブン・キング)、「クラッシュ」「スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする」など、静謐な哀しさをみごとに描く巨匠でもある。
今回は両方の特徴が出た傑作。東方の約束、と呼ばれるロシアンマフィアによる人身売買を背景に、異邦人として結束を強めるアメリカのロシア人社会と、そのなかで“生き抜く”ひとりの男の強さと弱さが語られる。
そこはしかしクローネンバーグ(彼もまたカナダ出身の異邦人だ)のことだからまともな描写はしない。ハリウッドのコードを鼻で嗤い、空気感が違うとしか思えないクールな映像が連続する。
で、「ロード・オブ・ザ・リング」の王様であるヴィゴ・モーテンセンが、ヘアどころかちんこ丸だしでアクションを演ずるサウナですら、乾いて、冷たい触感なのだ。明らかに同性愛者であるヴァンサン・カッセルにしても、静かに消えゆくラストにいたって、やはり哀しさをただよわせている。おみごと。
ヘアー関係はどうしたって?あ、そうか。モーテンセンのあそこは、王様とまではいきませんが立派な騎士でしたー。
ものすごく遠くへ飛ぶけどその9「愛の新世界」につづく。