監督:トム・ティクヴァ
出演:クライブ・オーウェン ナオミ・ワッツ アーミン・ミューラー=スタール
国際的メガバンクが陰でどれだけ汚い商売をやっているか……を告発する映画ではおそらくない。むしろ、銀行側の理屈の方が、常にテンパって(顔を氷に突っこんで冷やすのが日常なぐらい)正義を叫ぶごひいきのクライブ・オーウェンやナオミ・ワッツよりも魅力的だったし。
銀行の儲ける手口はいっぷう変わっていて、戦争・内乱においては武器商人への資金供与よりも、焦げ付きのリスクなど承知で“負債によってその国をコントロールする”ことに妙味がある、と解説されている。なるほど、ちょっと納得してしまいました。
モデルになった事件は実際にあったらしい。頭取は悪辣な顔をしているわけではなく、よき家庭人であり、それなりにスマートな帝王学を幼い息子にさずけたりしている。
並のアクション映画なら、後半に判明する“真の悪役”や“殺し屋”の退場にカタルシスをもってくるだろうけれど、彼らの一種の諦念がそんな単純な結末にしていない。
お勉強になったのは、インターポールには逮捕権がないってことで、だからオーウェンはいつも切歯扼腕している。そうかあ、だから銭形のとっつぁんはカリオストロ公国まで埼玉県警を連れてかなきゃいけなかったんだなあと得心。
美術館での銃撃戦はちょっと笑っちゃうくらい壮絶。一生のうちに撃ちつくす銃弾数で(なにしろあの「シューテムアップ」があったし)、クライブ・オーウェンを世界一と認定。わたしが認定。