Vol.24「白鳥の歌」はこちら。
めずらしく、ありふれた殺人からドラマがはじまる。激昂して妻を殺してしまい、動揺する夫。彼は隣人に助けを求め、隣人は周到にアリバイ工作まで指示してくれる。
なぜこんなにこの隣人は親切なのだろう。なぜ隣人はこんなに犯罪に対してクールでいられるのだろう。そして、なぜ夫は隣人に殺人の告白をあっさりしてしまうのだろう。
視聴者はそれぞれ考えこむ。答は意外な形で提示される。殺人現場において、彼は警官たちにも指示を与えているのだ。ロサンゼルス警察の署長代理だったのである。途中までまったく警察関係者であることを明かさないあたりがにくい。
リチャード・カイリー(吹替は北村和夫!)が演じるこの隣人がなかなかいい。ひとつの殺人事件を利用して(と同時に近隣に出没する空き巣も利用して)自分の妻を殺害する。
コロンボとしては、犯人が上司であることでやりにくい……この男にかぎってそんなことはまったくないわけで、むしろ機敏に動き回るあたりが笑わせてくれる。標的が強大であればあるほどモチベーションが上がるタイプ。
コロンボは、現場に“あった指紋”ではなくて“無かった指紋”に着目して共犯者の存在を導き出す。最後のひっかけは、例によって古畑任三郎の「笑うカンガルー」がスマートに引用しております。
原題の「A Friend in Dead」はA Friend Indeed(真の友人)のもじり。ことわざにいう
“A friend in need is a friend indeed.”(危急のときの友人が真の友)
をうまく皮肉っているのだろう。心の友と頼った隣人が、実は悪魔のような男だった悲劇。演出は俳優のベン・ギャザラ。ピーター・フォークの盟友だった人だ。たくさんの名作に出ているけれど、いちばん印象に残っているのはTVシリーズ「QBⅦ」だったんだよな。どうやらビデオになっていないようなので残念。すばらしいドラマだったのに。
PART26「自縛の紐」につづく。