事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

容疑者 室井慎次

2007-10-20 | 邦画

Muroi 「交渉人 真下正義」につづく「踊る大捜査線」スピンオフ企画第二弾。前作をしのぐ興行成績をあげる大ヒット。今年の東宝はなにしろ絶好調。ドラえもんのお休みを「ローレライ」でカバーし、東映の「四日間の奇蹟」とバッティングしてその勝敗が注目された「電車男」も、圧倒的な差でライバルをたたきのめした。まあ、感動大作としてセカチューやイマアイの三番煎じをねらった「四日間~」にただよう、一種の“古さ”が嫌われた以上に、会社の勢いの差がこんな結果を生んだのだろうか。

 まあ、これだけ儲けているんだし、公開も終了間際だから遠慮はいらないだろう。「容疑者 室井慎次」、徹底的に罵倒させてもらうぞ。

「踊る~」の生みの親である君塚良一が萩本欽一門下であることは「この1冊」や「裏情宣」でお伝えしたとおりだ。だから彼の心の中には欽ちゃんゆずりのサービス精神が息づいているに違いない。「踊る~」の、結局はキャリア官僚→室井に青島が“期待をしてしまう”決着は、お偉いさんのことが実は大好きな「大衆」の好みを君塚が知っているからこそだと思う。

Kimizuka  その室井を主演にすえ、君塚みずからが監督までしている今作は、しかしどうにも困った出来だった。悪役と呼べるのは極端なオタクにカリカチュアライズされた人権弁護士(八島智人と吹越満がかましまくり)と、残酷なまでにイノセントな少女。そして彼らに振り回されるキャリア官僚たち。はめられて容疑者になってしまう室井が名誉を回復する過程で、室井の弁護を担当する警察嫌いだった田中麗奈(陸上経験者って設定なのに、なんでグランドを逆走するんだ!)が、自らの傷も癒していく……狙いはわかるんだ。しかし、それぞれがあまりにもあざとすぎる。大学時代に恋人を失ったエピソードを室井が昔ながらの喫茶店で語るシーンが顕著だ。確かに泣かせはする。でもそれが感動につながらないのは、その泣かせのあざとさが観客の鼻についたからだろう。大衆を見誤ったのかなあ。

 かつて君塚が映画雑誌に連載をもっていたとき、わたしが感服したのは、「(実作者になろうと思えば)古典もけっこうだが、むしろこの10年に作られた失敗作を見た方がいい」との主張だった。君塚よ、この失敗を糧に、もっとクールで、もっと自然な「踊る大捜査線」の新作をたのむ。

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会社図鑑 ~旅行会社~

2007-10-20 | 社会・経済

Jtb  大学生に人気があり、親のウケもいいのに実態がちょっとトホホ(死語)なのが「旅行」と「製菓」だ。修学旅行等で学校にも縁の深い旅行業界を見てみよう。

 この業界、人気の割には給料が安いともよく言われることらしい。トップのJTBで30才の税込み年収が500万強。35才ぐらいで650万……おい、これで安いと言われると地方公務員の立つ瀬はないが。では、例によって主要三社の評価を引用。

・JTB(日本交通公社)
1912年に外国人誘致のためにできた任意法人に始まる、元は官業の会社。民営化は1963年で、国鉄が民営化されるまで長く独占的に旅を代販してきた。取扱高はダントツの1位。が、証券の野村や損保の東海(東京海上火災)のような業界を牛耳る実力会社、とは言い難い。就職人気ランキングでは上位の常連だが「でっかいだけなのに態度もでっかい」「田舎と高齢者で食べてる要するに昔の自民党」……40歳をすぎると出向の嵐。第二の人生は労組と共同出資のJTBトラベランドで。

Knt・近畿日本ツーリスト
1955年に近鉄の旅行部門と日本ツーリストという新興会社が合併して設立された。通称「近 ツー」or「近ツリ」。修学旅行を軸とする団体旅行の営業に力を入れ、64年の海外旅行自由化でも大躍進、急成長した。業界2位の座は83年から。修学旅行分野は今でも十八番である。「関西気質で泥臭い」「上下関係が怖そう」早朝の経営信条唱和の声がバカでかいとか、ライバルとの競い合いでは儲けがなくても安売りするとか、たしかにイケイケ。が、近ツーの通ったあとにはぺんぺん草も生えない、のは昔話。

・H.I.S.
世界放浪の後に毛皮貿易や飲み屋経営をしていた29才の青年が、1980年に設立した会社。母体は格安旅行好きのサークルで、社長の澤田秀雄はそこの世話人だった。超急成長で業界恐怖のベンチャーサクセスへ。98年9月、ついにスカイマークエアラインズ就航!運賃今までの約半分!格安チケット界の覇者であり、その激安商法で“旅行業界の洋服の青山”マニュアル経営で“旅行界のマクドナルド”と怖れられている。転職先としては「あそこだけは絶対にイヤ」派が圧倒したが、経営については評価が分かれる。“目標”と呼ばれる販売ノルマきつし。コピー取りは「いつ、何のために、なぜ」をノートに記入。客に送る小包は上司の許可必要。「長くいる会社じゃないね」平均勤続年数3年以下。

……おやおや、コピー取りの時に記帳する(笑)学校は今でもきっとあるに違いないぞ。してみると学校の労働環境はH.I.S.並みってことか?旅行マンの苦労はこれにとどまらない。支店に配属された新人旅行マンは、さっそく修学旅行で初添乗を経験するというのがありがちなパターン。旅行会社にとって学校は大のお得意さま。絶対にソソウがあってはならない。社会性のなさでは定評のある学校の先生の無理難題をかわしたり、全ての先生のご機嫌をまんべんなくとったりすることを通じて、旅行マンの何たるかがおぼろげに見えて……やれやれ、新人の研修に教員はうってつけってことらしい。学校事務職員もどんな目で見られていることやら。先日の朝日の記事によると、修学旅行自体の利益率がどんどん落ちているそうなので、先生が旅行マンに“お殿様”扱いされるのも、今のうちかもしれない。

 他にもこの図鑑には、日本最大のマンション分譲会社大京(ライオンズマンションね)の、受話器に手を縛りつけての電話営業、屋上での“天突き体操”、契約が取れなかった者への“ゼロ社員ゼッケン”制度に代表される『わが社のあんまりな実態』が数多く紹介されているので、次号で特集します。くれぐれも、民間てつらいなー、だけではなく、わが身に置きかえてお考え下さい。ほぼ全ての業界が、バブル以降の構造改革期に突入しており、洪水の前の生き残りに血を流していることをお忘れなく。そしてこの洪水が、公務員の世界だけを素通りするわけでもないことを。

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会社図鑑 ~製薬~

2007-10-20 | 社会・経済

Visual 業界それ自体が恐ろしいのは製薬の世界。

MR(メディカル・リプリゼンティブ)と呼ばれる医薬情報担当者と医者との関係の歪みといったら……。塩野義製薬に代表されるそのお医者様へのご奉公ぶりはすごい。医者が旅行と聞けば留守宅の犬の世話から冷蔵庫の整理までを完璧にこなし、ご帰還にあわせてシャンペンも冷やしておくのが当たり前だとか、学歴は低い方が医者が見下せて良い、とかまるで営業というより奴隷の世界である。

MR自身も『医者のホステスor夫人のホスト』『うんこ(医者)にたかる銀バエ』と自嘲気味。私の親戚にも一人MRがいるが、ほんとにこんななの?とも聞きづらいほどだ。ただ、それでも彼らがそこまでやるのは、もちろん薬が金になるからである

一般のイメージとは違い、医薬品市場の約90%は病院で使われる医家向けで、残りの10%が一般薬なのだそうだ。すなわち、影響力のある医者に取り入れば、数百億単位の金を営業マンの力で産み出すことができる世界。接待のし甲斐もあろうというもの。が、おかげで日本の医療がどれだけ異常なものになったか…。医者のプライドは結果としてとてつもないものとなり、例えばうちの校医の場合、絶対に開けないことになっている正門の車止めも、彼のためにだけ外すことになっている。

2006101201 「変じゃないか」と養護教諭に言うと「センセイには逆らえないの!」と逆ギレされてしまった。嬉々として『お仕え』しているのである。医療の世界の封建性はかなり強固とみた。逆に言えば、この封建性に素直に順応できる才能(泣)の持ち主にとっては、居心地のいい業界なのだろう。しかし、末期ガンの患者に一日3万円近くの投薬が行われる等、世界中で生産される薬の約30%(全欧に匹敵)を日本人が消費している現状をこの業界が作り出しているわけで、これはやはり、文字通り病んでいるとしか言いようがない。

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会社図鑑 ~ 新聞

2007-10-20 | 社会・経済

Chikushi  それでは紙面の内容がそのまま会社を表す(とも限らない)新聞業界はどうだろうか。

・朝日新聞社
自らを“朝日人”と称するご存じ天下の“良識派”新聞社。霞ヶ関の官僚が「日本のマスコミは朝日とその他」とするごとく、今でも絶大な社会的影響力を持つ。記者には最高の会社。「どこに行っても『取材してやっている』という態度は尊大」「本当にペンで社会改革をしようとしている奴がいるから驚く」「記者クラブでも他社の記者は麻雀にすら入れようとしない」「金持ちが庶民の代弁者になれるか」などなど。でも、給与他の待遇面になると「羨ましいですよね」とみんななる。年俸2000万超級のジジイがゴロゴロ。

・読売新聞社
Nabetsune 1000万部突破という世界一の発行部数を背景に憲法改正試案までブチあげた、超ワンマン社長ナベツネの会社。組合でも政治的な発言は絶対タブー。ちょっとのポカでも左遷あり。業界では「人を人とも思わない読売経営」と囁かれ……。権力と仲良くなってネタをもらう方針で徹底。評判最悪。「部数が世界一でも読んでない購読者数も世界一」「とにかくアソコには言論の自由がないじゃないですか」記者については「悪い人は少ないが上司の顔色ばかり窺ってる」「朝日を落ちて入った場合が多いせいか、会社の愚痴は言うけど実際はニヒっちゃってる」部数は多いが節約は厳しい。ボールペンは最後まで使い切らないと新品をもらえない。

・毎日新聞社
部数は地方紙状態でも、気持ちはあくまでも三大紙の新聞社。記事の社内検閲は少なく、採用も学歴不問。風通しはいいが、いかんせん商売が…。「みんないつ潰れるか予想しあってますよ」「紙面はスクープが多いし、愛読してる同業者も多いんですけどね」ホームページは更新も速く、中身もイケてると評判。でも、儲けにはならないのが悩み。

・産経新聞社
職場で卓球をする奴、酔ってゴミ箱に放尿する奴もOKという社風の寛容度で群を抜く。一般的には右翼チックな印象で記事の制限も実際あるが、社員個人の思想ノリのゆるい会社。でも、社員の不満は膨大で、最大原因は安月給である。若いうちの退職金は勤続年数×1万円が基本。右翼には評判が良くて、よく宣伝カーが大手町の本社前で「産経新聞ばんざ~い」をしてくれる。

……ああやっぱりなあ。『インテリが作ってヤクザが売る』新聞の、インテリサイドにもダークな部分は数多いんだ。記者クラブなんてものに安住してるからだ。他の業界にしてもあんまりな実態が満載なのだが、続きは次号。

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