「交渉人 真下正義」につづく「踊る大捜査線」スピンオフ企画第二弾。前作をしのぐ興行成績をあげる大ヒット。今年の東宝はなにしろ絶好調。ドラえもんのお休みを「ローレライ」でカバーし、東映の「四日間の奇蹟」とバッティングしてその勝敗が注目された「電車男」も、圧倒的な差でライバルをたたきのめした。まあ、感動大作としてセカチューやイマアイの三番煎じをねらった「四日間~」にただよう、一種の“古さ”が嫌われた以上に、会社の勢いの差がこんな結果を生んだのだろうか。
まあ、これだけ儲けているんだし、公開も終了間際だから遠慮はいらないだろう。「容疑者 室井慎次」、徹底的に罵倒させてもらうぞ。
「踊る~」の生みの親である君塚良一が萩本欽一門下であることは「この1冊」や「裏情宣」でお伝えしたとおりだ。だから彼の心の中には欽ちゃんゆずりのサービス精神が息づいているに違いない。「踊る~」の、結局はキャリア官僚→室井に青島が“期待をしてしまう”決着は、お偉いさんのことが実は大好きな「大衆」の好みを君塚が知っているからこそだと思う。
その室井を主演にすえ、君塚みずからが監督までしている今作は、しかしどうにも困った出来だった。悪役と呼べるのは極端なオタクにカリカチュアライズされた人権弁護士(八島智人と吹越満がかましまくり)と、残酷なまでにイノセントな少女。そして彼らに振り回されるキャリア官僚たち。はめられて容疑者になってしまう室井が名誉を回復する過程で、室井の弁護を担当する警察嫌いだった田中麗奈(陸上経験者って設定なのに、なんでグランドを逆走するんだ!)が、自らの傷も癒していく……狙いはわかるんだ。しかし、それぞれがあまりにもあざとすぎる。大学時代に恋人を失ったエピソードを室井が昔ながらの喫茶店で語るシーンが顕著だ。確かに泣かせはする。でもそれが感動につながらないのは、その泣かせのあざとさが観客の鼻についたからだろう。大衆を見誤ったのかなあ。
かつて君塚が映画雑誌に連載をもっていたとき、わたしが感服したのは、「(実作者になろうと思えば)古典もけっこうだが、むしろこの10年に作られた失敗作を見た方がいい」との主張だった。君塚よ、この失敗を糧に、もっとクールで、もっと自然な「踊る大捜査線」の新作をたのむ。
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