事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

追徴PARTⅢ~トニー滝谷

2007-10-04 | 社会・経済

Rie1 「であのぉ、いかほど支払えば」
「えーとですね、浩さんの方は『同居老親』の控除がなくなったということで、あ、源泉徴収票はお持ちですね?んー46,400円になりますね。お父さんの方は…………79,600円ですか。」合計126,000円。

「はあ。」まあ、そんなものか。
「それでですね、申し訳ないんですけれど、今回のケースは確定申告が期限内に行われなかった、ということになるんです。その場合、『加算税』が15%かかるんですよ。」
「は、はあ。」
「それから、A夫さんの方は期限から納付までの間の利息も支払っていただきます。」
「は?わたしの方はいいわけですか?」
「ええ。浩さんの方は額が少ないんで。」税務レディは電卓のキーを親の仇のように叩いて答える。よくわからん。
一括でお支払いになります?」最後に、彼女が艶っぽく微笑んで交渉は終了。

「あのぉ、これは世間話でききたいんですけど、葬式の費用とかそういうのってなんかの控除になるんですか?」
「なりますよ。相続税の控除の対象です」
「へー」
「でもですね、相続税って基礎控除が5,000万円で、相続者一人あたり1,000万円加算されるんです。ということはですよ、お母さんの場合は少なくとも7,000万円以上の財産を相続するんじゃなければ……」
「意味がないと。」
「めったにいらっしゃいませんねぇその控除を使う人は。」
そうだったのか。ベンツに乗ってる親戚のアドバイスを真にうけたのが間違いだったー!

Rie2  さて、そこまでばらすかと追徴の過程をお送りしてきたが、そのあと、誰の金で納付したかまではさすがに説明できないのであった。家族とはもっと穏やかな関係を築いておくべきだったと知る四十代の晩夏(T_T)。ちゅーかさ、あふれる退職者たちって個人年金とかを受け取ってるはずだけれど、あんたたちちゃんと確定申告してるんだろうな!ってお話でした。
【追徴・おしまい】

画像は「トニー滝谷」(’04 ウィルコ)
 村上春樹の原作を市川準が監督。イッセー尾形と宮沢りえ(二役)が主演し、「アンフェア」でクールなところを見せた西島秀俊がナレーション。そして音楽は坂本龍一。豪華な75分。もっとも、画面は前衛劇のようにおそろしく簡素なのだが。
自分の欠落を埋めるために洋服を買い続けなければならない女と、その女とまったく同じサイズであるだけで代役を務めることになる女。絶世の美女でなければ演じられないファンタジー。こりゃ、宮沢りえでなければスクリーンがもたないわけだ。傑作。☆☆☆☆

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追徴PARTⅡ~デュエット

2007-10-04 | 社会・経済

Duetsposter2 父に収入があったことによって税控除が外れてしまうとは、事務職員としては恥ずかしいことに想定外。しかし、父の収入っていったい何だろう。わたしと父はほとんど会話を行わないので、フランクに訊くこともできない(話せば即ケンカ)。相続関係なら『譲渡所得(短期・長期)』になるだろうからやっぱり保険金だろ?このあたり、まったくわからないのである。今まで相続がどうしたのって事務をやったこともないし。

「(母の)葬式の領収書は全部とてあっさげ(とってあるから)、それももていげ(それも持って行け)」

 父親は言い放つ。親戚からとっておくと必ずいいことがあると聞かされていたので。説明が遅くなったけれど、父親にも例のハガキは来ていて、しかも

ねぐした(なくした)」

と平然としている。さすが年寄り。そのハガキがあれば、どんな種類の所得超過だったかがわかろうというものだが。

 さて、8月25日当日、2時間の年休をとって税務署に向かう。
「個人課税第一部門の○○さんをお願いします。」
受付の女性に取り次いでもらう。出てきたのは恰幅のいい中年女性。カウンターをはさんで対峙する。

Duets4 「お忙しいところ申し訳ありません」
低姿勢である。そりゃまあ、こっちは顧客だからなあ。
「で、いったいどういうことなんでしょう。相続とか?」
「いえいえ。これをご覧になってほしいんですけど」
彼女がとりだしたのは△△農協が発行した保険金支払証明書。
「去年、堀Y子さん……お母さんですか?お亡くなりになってますよね。それでこの死亡保険金が支払われているんですけれど、保険の契約者は堀A夫さん……お父さんですね?それでY子さんがお亡くなりになったことによってA夫さんに支払われた……これはですね、Y子さんが契約している保険で、Y子さんが死亡したときの保険金は『相続』の対象なんですよ。でもね、契約者と違う場合には『一時所得』になるんです。それで、A夫さんの去年の年金額が…………」
ドカドカと確定申告の計算がここで始まる。
「ね?ですからA夫さんを扶養控除するのは去年は無理だったんですねぇ。」

「はあ、そうですね。」
ものわかりのいい客。続きます。

画像は「デュエット」Duets(’00 アメリカ)
 グウィネス・パルトロウが、当時つきあっていたブラッド・ピットと共演するというふれこみだったのに、別れてしまったものだから幻の映画になりかけた……こんな情報ぜんぜん知りませんでした。なんとアメリカのカラオケ(ケィラオゥケー、と発音すると通かも)映画。「サイドウェイ」でもそうだったが、酔っぱらってだらしなくなる役をやらせたらもうポール・ジアマッティにかなう役者はいない。ほとんどのキャストが自分で歌っていて、そのうまさにびっくり。マリア・ベロも吹替なしらしい。軽い気持ちで見たらすごい傑作だった。なかなかビデオ屋にはないけど、あったらぜひ。泣けるぞこれ。

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