事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

会社図鑑 ~ 銀行

2007-10-19 | 社会・経済

Kaishazukann ~業界別カイシャの正体~ オバタカズユキ&石原壮一郎著 しりあがり寿&加藤裕将絵

2002年版当時のもの。わずか5年で業界がいかに変遷したかがむしろよくわかる。

……公務員の仕事と生活は結構語られている。公僕、である以上仕方のないことだし、官僚の暴走や天下りのことを考えればもっと注視されていい。いい子ぶるわけでもないが、住民の税金で食べていることを《負い目》と感じる感性だけは失うわけにはいかない。まあそれでも「お前は公務員だからなー」とか「コウムインらしいこと言うじゃねーか」とカマされるとムカッとはくるし、明らかな誤解も入っていることが多い。しかしひるがえって私たちは、会社員、いわゆる『民間』のことをどれだけ知っているだろうか。

  学校事務職員には民間経由で就いている、いわゆる前歴保持者が多いのと、業者と接する機会が比較的多いので教員ほど会社について暗いわけではないが、それでもそのレアな実態はなお分明ではない。すくなくとも私は、彼ら(彼女ら)が何をし、どれだけの給料をとり、どんなことを考えているかの多くを、この図鑑で学んできた。大学生(特に高偏差値の)への就職情報を提供する、という建前で毎年編集されているため(さーすがダイヤモンド社、オヤジ経営者御用達)、メジャーな業界中心なのはもの足りない向きもあるかもしれないが、要するに“メジャーどころ”の実態がこの程度だからマイナーはもっと悲惨、こう考えて間違いはない。でも、そのメジャーが近頃悲惨この上ないのが情けないのだが……。

Mitsubishi  採り上げられている業界は、銀行、証券、生保、損保、不動産、ゼネコン、鉄鋼、製薬、ビール、製菓、自動車、鉄道、テレビ、広告、新聞、出版、商社、旅行代理店、百貨店…近年これにゲーム、コンビニ、携帯電話、アパレル、スーパー、コンサルタントが加わった。そしてその業界ごとに基本的性格、構造がチャート入りで解析され、主要業者がそれぞれチャームポイント、他社からの評判、その過去が具体的(ここまで書くか)に晒される。会社四季報では絶対にわからないネタがてんこ盛りである。

 例えば、合併だの事業統合だの持ち株会社設立だのとさっぱりわけがわからなくなった銀行業界をみてみよう。主要な銀行の評価は以下のとおり。
東京三菱銀行
「三菱は国家なり」と言ってのける財閥グループを背後につけたエリート銀行と、小粒ながら国際派としてプライド抜群の東京銀行が一緒になったゴジラバンク。基本的性格は「石橋を叩いても渡らない」保守的性格の旧三菱のままである。何をやるにも上司のハンコが大量に必要という官僚的体質は、今も安泰。大蔵省も一目置くのはここだけである。
住友銀行
強い速い挫けない。怖い冷たいえげつない。仕事のキツさは業界№1である。「灰皿が飛んできて正座させられると聞いた」「私の親友は住友に入って人間性まで変わってしまった」「やくざよりもボクは怖れる」「あそこだけはイヤだ」……。
Mizuhoさくら銀行
大合併劇からずいぶんたっちゃって、そうこうするうちにまた合併することになった。旧三井系の行員はプライドが高く、太陽神戸出身者はどんなに優秀でも支店長どまり。と、人事面の不協和音が有名だったが、今度はそんな悠長なことはやってられない状況。住銀の頭取に「救済ではない」と強調してもらっているところがかえって痛々しい。
富士銀行
「銀行といえば富士」といわれたかつての栄光は支えでも、度重なる金融不祥事の嵐の後片付けで体力を消耗。三行統合の発表時に、頭取が「日本の国益のために……」と発言したが、それを聞いた金融記者たちのあいだでは、「一兆円も公的資金をもらって助けられた銀行が、国益とはチャンチャラおかしい。国賊のまちがいじゃないか」と非難ゴウゴウ。

……“住友のイケイケ、紳士の三菱”はよく聞く話で、それはここで実証されている。ここまで、とも思うが。これは他の業界でも同傾向にあるようなので、まさしく、社風といったところか。旧三菱銀行に入行し、本部で大活躍、というエリートコースまっしぐらの高校の同期生に「お前んとこだけ、(バブルに)踊んなかったってホントか?」とジャブをかますと、「ふっふっふ、そーなんだよ。よくわかってるじゃないか」と胸を張られたが、これを読めば、フットワークが悪かったせいもあるんでないの?と皮肉な見方もできるぞ。
 高収入で有名な金融だが、荘内銀行(富士銀行系列)にいる友人はその話をすると「都銀と一緒にするなーっ!」といきなりキレるので気をつけなければいけない。地銀はどこもたいへん。

……とりあげられた銀行が、ひとつもそのまんまの名前で2007年現在残っていないことに驚く。巨額の公的資金がつぎ込まれた以上に、今のところ税金を免除されているあたりが小泉改革の正体ではなかったか。郵政の改革ではなく、銀行の優遇。

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