事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

天然コケッコー

2007-10-01 | 邦画

Photo 中学二年生の右田そよ(夏帆)の住む村には、たった6人の小中学生しかいない。
そんな田舎の分校に、ある日、東京から大沢広海(岡田将生)が転校してくる。
そよたちの知らない言葉と、都会の匂いを放って。はじめてできる同級生との、楽しく過ごす毎日に、期待に胸膨らませるそよ。太陽や海や土に包まれ、美しい田園風景を舞台に、ゆったりと時が流れる。
(作品紹介より)

……作品の舞台になっているのは、原作者くらもちふさこの母の実家がある島根県浜田市あたり。脚本化したのは現在も島根県に在住している渡辺あや(「メゾン・ド・ヒミコ」「ジョゼと虎と魚たち」)。そのせいか登場人物たちの話す石見弁が自然で耳に心地いい。「いってきます」が「行って帰りまーす」になるのね。言葉が正しすぎて苦笑。

 監督は「リンダリンダリンダ」で、当時25才だったペ・ドゥナを女子高生に起用するという驚天動地のキャスティングを成功させた山下敦弘

今回も夏帆(かほ)をはじめとした子どもたちが圧倒的にいい。特に小学生組の天然ぶりは笑わせてくれる。が、彼らの素(す)の姿がスクリーンに提供されているかというとちょっと違う。リハーサルにリハーサルを重ね、主演の夏帆に至っては二ヶ月もの合宿を経過して演じさせているのだとか。観るとわかるけど、ほんと信じられないぐらいのナチュラルさなんだけどなあ。

 加えて、そよの両親役の佐藤浩市夏川結衣が、島根の風土にきっちりおさまっている。普通彼らのような『都会から来たスターさん』は、どうしても浮き上がって見えてしまうはずなのに。特に夏川結衣は、夫の浮気を見てみないふり(かどうかも微妙)をするあたりの視線など、みごとなもの。日本のレニー・ゼルウィガーに勝手に認定。

Making_bg  周到に計算された(だから計算されたように見えない)脚本と演出があるからこそ、中学二年生の女の子のとまどいが、わたしのような中年の心をうつ

「知らないあいだにわしは他人のことを傷つけておりゃせんじゃろか」

神楽を観ながら、ふきだす涙をとめることができないそよの姿に感動しない人はいないと思う。加えて、この小中併設校の圧倒的なディテールは、学校事務職員であるわたしだけでなく『かつて児童生徒だった観客、今児童生徒である観客』すべてを驚嘆させるはず。

原作とほぼ同じ規模の学校を居抜きで撮影した(どうぞ使ってくださいと使用を許可した校長はえらい!)効果がてきめんだ。学級目標・給食当番(お昼は小学生と中学生がいっしょに食べる)そして脚本にはなかったけれど、実際の学校で行われていたのがあまりに素朴だったので採用された“給食放送”が爆笑させてくれる。

 そよがラストシーンでキスをする相手が、もっとも愛する存在→「学校」だったあたり、教職員必見かと。こんなにも、こんなにも学校を愛してくれる生徒がいる……。

調子こいて「リンダリンダリンダ」もアップしておきます。

コメント
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