ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

3000メートルを超えて(15)

2010年02月09日 21時20分05秒 | Weblog
命がけで集中力を養うとは将にこのことか。
少々オーバーだが、ジャンダルムを越え一息つくことができた。

「もう無いだろう。もう十分だ。もういいよ・・・」
情けないかな、これが本音だった。
ここから先は西穂高岳へ向け、単調な縦走を・・・と期待していた。
書籍類による事前の下調べでは、そうたいした難所はなかった・・・はず。
まぁ確かに「難所中の難所」はなかったが、大小いくつものピークを越えた記憶がある。
そして驚いたことに、「ここには絶対くさり場があってしかるべきだ」と思えるポイントに、そのくさりが・・・・・ない。しかも何か所もである。
己の手足のみで越えなければならない難所がいくつも点在した。

どのあたりだったかなぁ。
休憩をするためにザックを下ろし、岩の上に腰をついた瞬間だった。
グラグラと岩が揺れ、自分の体が背中から後ろに倒れそうになった。
「浮き石」だった。
迂闊だった。完全に気を抜いてしまっていた。
自分のすぐ50㎝ほど後ろは断崖絶壁。もう少し重心を失っていたらと考えると、身の毛のよだつ思いだ。
岩場やガレ場で休憩を取るときの、いたって初歩的な注意を怠ってしまっていたのだ。

西穂高岳のピークにさしかかり、雲行きが怪しくなってきた。
ゴロゴロという嫌な音が間近で聞こえ始めた。
高所での雷は、地上に落ちる雷とは動きが大きく違う。
地上では、稲妻は上から下へと向かってくるが、3000メートル近いここでは、稲妻はまるで光線銃のように真横にのびてくるのだ。稲妻が走るのだ。
この様子ではいつ光線銃が襲ってくきてもおかしくはない。
西穂山荘まではあとわずか。