"HONJAMACA"という名のわが家の同居人は、魚類に属している。つまり、水の中を棲家とし、鰓で呼吸をし、ご主人さまヒイラギが毎朝水面に二つまみほど落とす浮遊性のエサ“きんとと”によって日々命をつないでいる。40センチ四方かそこらの水域の外に、HONJAMACAの宇宙は存在しない。
そんなこと、分かりきっているのに、妙なリアルさで、夢を見た。久々のカラー放送だ。
HONJAMACAが空を泳いでいく。
私は心配そうにHONJAMACAを見上げながら、その下を歩いていく。ちょっと変わった、「二人で散歩」スタイル。
しばらくごきげんで泳いでいたHONJAMACAが、パタリと私の足下に落ちてきた。ぴくりとも動かない。どうやらサンソが切れたらしい。
タイヘンだ!と両手のひらにHONJAMACAを載せて、右往左往する。一刻も早く、水の中に戻さねば!!
全速力で帰宅してHONJAMACAを水槽に戻すと、しばらくして気絶から覚めたみたいにきょとんとしながら、HONJAMACAは泳ぎだす。そして大きくウンッと踏ん張ったかと思うと、ポンと分身が生まれた。
丹頂族HONJAMACAの分身は、なぜか全身コバルトブルーの出目金だった…。
夢の意味はよくわからない。
でも目が覚めたとき、HONJAMACAはもっと伸び伸びお出かけしたいと思ってるんだ、と直感した。
宿題の山が片づいたら、ある晴れたうららかな春の昼下がりにでも、広い棲家にお引越ししてあげようね。
ちゃんとご主人さまに届いたぞ、HONJAMACAのテレパシー。