東の散歩道

B型ヴァイオリニストのマイペースライフ

エル・ブリの秘密

2012年02月25日 22時57分03秒 | 映画

 久々に映画を見て参りました。「エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン」。スペインのカタルーニャ地方にある、世界中に衝撃を与えたと言われる三ツ星レストランを舞台にした、ドキュメンタリーフィルムです。

 音楽家はもともとグルメが多いと言われています。私も美味しいものは大好きですが、この映画を見て、私はただの美味しいものの好きな人(嫌いな人はいないと思いますが。。。)であって、決してグルメではないな、と思ってしまいました。おそらくグルメとは、料理人が身を削って作った料理の全てを、あますことなく味わえる人なのではないか。このフィルムを見て、そんなことを考えてしまいました。

 

 映画はエル・ブリ(レストランの名です)の新メニュー開発シーズンのスタートから始まります。このレストラン、なんと営業期間は6ヶ月。残りの6ヶ月は全て、来期に向けての新メニュー開発期間なのです!年間にここで食事を出来るのは約8000人(一日あたり50人)に対し、予約希望の年間件数は200万件だとか。「世界一予約のとれないレストラン」といわれる所以です。

 調理スタッフはレストランから、調理器具は勿論、家財道具一切合切を持ち出して、研究スタジオに籠り、くる日もくる日も新メニュー開発に明け暮れます。まずは素材と徹底的に向かい合うことが出発点。素材を焼いたり蒸したりは勿論ですが、オイルにつけてみるならそれだけで何種類ものオイルを試し、他にも真空にしてみる、窒素で凍らせるなどの、普通の感覚では考えも及ばない方法を試して行きます。まさにそこは実験室。データは失敗も含め、全てパソコンに入れます。もちろんプリントアウトもしますが、データがあまりに膨大なため、紙だけでは保存しきれないのです。使えそうなアイディアかどうかを決めるのは、オーナーシェフのフェラン・アドリア氏。その下で、中心となるシェフが二人ほどいて、細かい指示を出し続けます。料理を見つめる調理スタッフの目は、顕微鏡をのぞく科学者と同じもの。研究に打ち込む彼らの様子には、鬼気迫るものさえ感じられるほどです。

 

 6ヶ月が過ぎると、彼らは再びレストランに戻り、今度はホールスタッフも含めての訓練が始まります。そして開店してからも、メニューは常に進化し続けるのです。映画の中でも何度もアドリア氏が言っているのですが、エル・ブリが求めているのは驚き、新しさなのですから(もちろん美味しいのは当たり前ですが)。

 

 エル・ブリは2011年7月におしまれつつも閉店しましたが、2年後に料理研究財団として再スタートをきるのだそうです。

日本でも「エル・ブリ」が話題になった頃、どこかの雑誌で「ここの料理は、レストランが考えた通りの食べ方しか許されない」という記事を読んだような記憶があります。結構古い話なので記憶違いだったらすみません、、、、でも、このフィルムをみて、きっとエル・ブリはそういうレストランだろうと思ったのです。それは良い悪いの話ではなく、客はフェラン・アドリア氏という希有な天才シェフを頂点とする、「チーム・エル・ブリ」の魔術に驚き、酔いしれるためにここへ足を運ぶのですから、それが当然なのです。

 

 ところでシーズンによって違いますが、ここの料理は1コースあたり30~40皿。3−4時間かかるようです。1時間あたり10皿というところでしょうか。これに全神経を傾けてるのは、食べる方にもなかなかのタフネスが必要だと思いませんか?

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする