hiroshi hara: saxophoniste

日々の思考の断片

ララン"Paysages lointains"

2007-09-16 22:26:50 | sax関係
ジェローム・ラランのCD"Paysages lointains"は非売品プロモーション用で、パリ音楽院製作によるもの。
ジェロームは来日の際に、色々な方々にこのCDを渡していたので、持っている方もいらっしゃると思う。

彼は昔から様々な音楽をやっていきたいと語っていたとおり、このCDではブルーノ・マントヴァーニから始まり、ジョドロフスキ、夏田さん、ピアソラ、エスケッシュと大変意欲的だ。
精神、音楽的に彼の最もとがっていた時期なのではないだろうか。

興味深いのが曲間に挟み込まれた即興演奏だ。
即興はほとんど独学で身に付けたそうなのだが、彼とそれぞれのパートナーとの独創的な即興をコンパクトに展開しつつ、前の曲の緊張感を引きずりながらも、次の曲へ緩やかな推移を見せている。
中でもジョドロフスキから夏田さんの間の即興が一番好きだ。

独奏。
サックスらしい音は皆無。
奇妙な歌声と舌を鳴らす音、まるでしゃっくりのように息を吸い込む音、キーを叩く音。
よく映画やテレビで見る、人の顔から別人の顔や動物などに移り変わっているCGを見ているような気分になる。

一見すると、繋がりの希薄な作曲家を連ねているが、それを感じさせないのが素晴らしい。
彼にはどの作曲家も、またどの音楽も等距離に見えているようだ。

CD録音はたくさんの素晴らしいプレイヤーと共に5日間かけて録音したそうだ。
「私のためにみんなから本当に良くしてもらった」と話していた。

お持ちでない方は、残念ながら購入することはできないが、彼のホームページで少しだけ視聴することができる。

ジェローム・ララン

2007-09-15 22:17:23 | sax関係
彼のことについて当たり前のように語ってきたが、今までここでしっかりと紹介したことがなかった。
この度ホームページが新しくなったそうで、早速リンクを張った。

Jérôme LARAN - ジェローム・ララン(仏語、日本語)

彼と初めて会ったのは1998年のディナンのコンクールの本選の時だった。
(一位がアレクサンドル・ドワジー、二位がオーティス・マーフィー、三位が私だった。)

本選の演奏終了後、ジェロームから声を掛けてきてくれた。
当時、彼はまだパリへ上京してきたばかりで、セルジー・ポントワーズでフルモー氏に習いつつパリ音楽院を目指していた。

その後、見事にパリ音楽院に入学し、2001年のミュンヘンではセミファイナルまで残り、2002年のディナンでは第5位入賞と、たちどころに頭角を現してきた。

更にその後、パリ音楽院に新設されて間もない"le cycle de Perfectionnement"(大学院のような位置付け)というクラスに進んだ。

このクラスには、サックスのクラスではクリスティアン・ヴィルトゥ氏、ヴァンサン・ダヴィッド氏、エルワン・ファガン氏等が在籍していた。
現在はミハ・ロギーナ氏が在籍している。

このクラスでは、全ての楽器の中から年間六名の優秀者にはCDを製作してくれるという特権もあり、そこで"Paysages lointains"(遥かなる風景)が生まれた。

このCDについてもいずれ詳しく書きたいと思う。

構想2

2007-09-14 22:26:45 | 日常
来年6/20のリサイタルの曲目は全てオリジナル作品、アルトでと思っている。

サックスの魅力のいくつかに「持ち替えの妙」、「様々なジャンルの音楽に対応できる能力」が挙げられると思う。
前回に引き続き、書き出すと大げさになってしまうが、今回はそうした外側の自由さを廃し、一つの楽器、オリジナル作品という制約の中から、そこから更に二通りの可能性と方向性を探ろうと考えた。

それは候補曲を並べた上で結果的にそのような構想にいたった訳で、実はソプラノでアレンジものをとも考えたのだが、並べて見たときに、その曲だけ違和感がありやめてしまったのだ。

無伴奏作品とピアノ・デュオ作品、現代作品とフランスアカデミズム作品、また作曲家も日本人、外国人(結果的に全てフランス人になった)によるものとして、鈴木純明さん、シャルル・ケックラン等を考えている。

ピアノは野原みどりさん。

みどりさんとは2003年のサクソフォーンフェスティバルで共演させていただいたことがきっかけで、今回の依頼にも快くお引き受けいただいた。

みどりさんのことについてはまた後日書きたいと思う。

左薬指

2007-09-13 21:55:41 | sax関係
サックスにとって、左薬指の敏しょう性は重要だ。

私の場合は右手の音域との連結(例:「ファ」-「ラ」)、
高音サイドキーの音域から左手の音域への連結(例:「高音レ#」-「ソ」)、
隣接する音との連結(例:「ソ#」-「ラ」-「シ」)等、いつも苦労している。

日々の鍛錬と気をつけるに他ならないが、特に疲労が溜まっているときなど、どうしようもないほど反応の鈍いときがある。
左手全体の使い方や、左腕の角度も起因しているかもしれない。

二拍三連符の教え方

2007-09-12 21:43:16 | 日常
自分では理解していてもそれを人に伝えることは難しい。
楽器演奏に関しても同様で、正しく伝え理解してもらったとしても、それを実行に移すことは、また大変な作業だ。

毎年夏休み前には吹奏楽コンクールのために様々な学校で指導を行うが、特に中学生には二拍三連符の正しいリズムを伝え、正しく演奏してもらうことがとても難しい。

ちなみに複数拍連符の考え方だが、1拍を連符の数で割り、それを拍の数で束ねる。

二拍三連符なら、3連符が2つずつ。
三拍四連符なら、16分音符が3つずつ。(四分音符が一拍の場合)
四拍三連符なら、3連符が4つずつ。
二拍五連符なら、5連符が2つずつ。

ここまでは算数的に理解してもらえるが、その先が大変なのだ。
どうしたら伝わるのかと前々から考えていたのだが、先日とても効果的な指導法をご教示いただいたので紹介したい。

まず生徒たちには手拍子と声を出してもらう。
二拍三連符を例に取ると、
1. |タンタ|タタン|、
2. |タカタ|タカタ|、
3. |タカ タ|カ タカ|、
4. |ター タ|ー ター|、

といった手順で行っていくと感覚をつかみやすく、演奏にもいかされやすい。

四拍三連符はどららにしても難しいが、私が高校生の頃に演奏した「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に出てきた。
1. |タカト|タカト|タカト|タカト|、
2. |タカト|コ タカ|トコ タ|カトコ|、
3. |タート|ー ター|トー タ|ートー|、
4. |ターウ|ー ター|ウー タ|ーウー|、
5. |ターア|ー ター|アー タ|ーアー|、
6. |ターー|ー ター|ーー タ|ーーー|。

9.11

2007-09-11 21:40:02 | 日常
六年前の今日、私はミュンヘン国際コンクールを受けていた。

予選はバイエルン放送局内で行われ、一次予選の最中、会場内で突然黙祷のようなものが始まり、そのときはまだ何も知らず、何が起こったのかと思っていた。

会場ロビーのテレビに事態の様子が映し出されており、ようやく少しだけ理解したのを思い出す。

私は一次予選で落選してしまい、コンクールを最後まで傍観ていた。
入賞者は一位無しの二位がアレクサンドル・ドワジー、三位がジュリアン・プティとルッツ・コペッシュだった。

その後は南ドイツを小旅行したが、現実離れした素晴らしい風景を見ても覇気が無く、その後の人生を案じていた。
当時は辛いことばかりではなかったはずなのだが、思い出すのはなぜかそんなことばかりだ。

世界中をを震撼させた事件と、その時の自分の記憶とが結びついてしまっているのだろうか。

写真は当時、夕暮れ時に写したミュンヘンの市街地。

尚美授業 15日目

2007-09-10 22:17:35 | 尚美
*****************************
●今日の授業メモ(自分用)

試験:
実技-オーケストラスタディー
「アルルの女」第二組曲より間奏曲、ラプソディー・イン・ブルーのどちらか。

*****************************

今日で前期授業が終了。
終盤は追われるように過ぎ去ってしまった。
来週から実技試験等があるため、次回の授業は一ヵ月後。
後期はより実のある授業にするため、シラバスを練り直す必要がある。

リンク

2007-09-09 22:04:17 | 日常
Hitomusique サクソフォニスト金子瞳の音楽空間

瞳さんと初めてお会いしたのは1994年のディナンのコンクールでのこと。
たしか当時、瞳さんは留学生活を始めたばかりで、緊張感漂うコンクール会場にも関わらず胸躍らせていたのが印象的だった。
後になって、実は同門だったということを知ったが、そのコンクール以後はお会いできる機会がなかった。

ところが、昨年3月に瞳さんが東京でリサイタルを開催されて、本当に久しぶりにお会いすることができた。
今書いて気づいたが、12年振りだったのだ。

現在は演奏、レッスンだけではなく、家事、育児と精力的に活動されており、本当に頭が下がる思いだ。

「レ」-「ファ#」

2007-09-08 22:09:33 | sax関係
昨日の根深いと感じた技術的に釈然としない事柄のひとつ。

低音及び中音「レ-ファ#」の連結。

右手で、中指を残しつつ人差し指と薬指を同時に上げる動作。
左手の「ソ-ド」、ならびに逆の「ファ#-レ」も簡単なのだが、右手の「レ-ファ#」はきれいにつながらない上に転びやすい。

手は、握る力は強いが開く力は弱い。
速度もおそらくそれに準じて、キーを閉じる加減はコントロールできても、開ける速度、強さの加減は難しいのだと思う。

また、左手はトーンホールが小さくキーの動きも軽い為レスポンスが良いが、右手のそれは大きい。
しかもマウスピースからも遠いため、当然音響的なレスポンスも遅くなる。

書き出すと大げさなのだが、指と楽器、双方の不具合が重なっている部分だと思う。

根深い

2007-09-07 22:59:58 | 日常
午前中の洗足高校は台風の影響で休校。
今日はそれを知らずに学校へ行ってしまった。

とは言え、大学は午後から通常授業だった為、ファンファーレバンド、レッスンを終えて先ほど帰宅した。

最近、技術的に釈然としないことが多く、空き時間に練習しながら、気になる事柄をメモしてみた。
単なる指の問題かと思っていたのだが、書き出してみると、意外に根深いものがあるのかもしれない。

時間があるときにまとめて掲載したいと思う。

練習の壁

2007-09-06 22:29:32 | sax関係
今日は洗足レッスン。

尚美と同様に、夏休み中も真剣に練習していたようで、意気揚々と挑む学生。
台風の影響で電車が止まってしまい、来られなくなってしまった学生。
夏休み中、一度も楽器ケースを開けず、マウスピースにカビが生えてしまった副科の学生など様々。

サックス初心者の副科学生にとって、練習を進めて最初にぶつかる壁はタンギングのようだ。
理屈ではわかっているようだが、感覚的に音を息で止めてしまい、舌を効果的に使えないようだ。

舌をリードに触る、いわゆる舌突きは音の処理をつかさどり、舌を放すことによってアタックが得られる。
また舌のスピード、角度、方向でタンギングによる様々な音色が得られる。

フェルリング

2007-09-05 23:00:41 | sax関係
Franz Wilhelm Ferling (独 1796-1874)

フランツ・ヴィルヘルム・フェルリングは、ドイツ・ブラウンシュヴァイクの宮廷オーボエ奏者として活動し、その頃の音楽的嗜好を反映させ、1840年にこの「48の練習曲 op.31」を完成させた。

現在では様々な版が存在するが、サックスの世界ではミュールが増補改訂したルデュック版が使われる。

このルデュック版は、活版印刷からコンピューター浄書に変更された際、ターンがほとんど転回ターンになってしまっているが、正しくは全て普通のターンである。

組織

2007-09-04 22:39:09 | 日常
今日は父の命日だった。

だからという訳ではないが、昨晩から当時の良い思い出、苦い思い出、得もいえぬ複雑な感情が蘇ってきて、今日は一日中体が重かった。

父が亡くなって、ようやく家族を自分自身属する組織としてを意識し始めたような気がする。
遅すぎると思われるかもしれないが、真の意味で、そのような意識を実感したのは、確かにその時だった。

尚美授業 14日目

2007-09-03 22:21:45 | 尚美
*****************************
●今日の授業メモ(自分用)

Paule Maurice: Tableaux de Provence

オケスタ(アルルの女、ラプソディー・イン・ブルー)
*****************************

授業終了後、学生が楽器を落としてしまった。
よくあるケース閉じ忘れだった。

慌てていたり、喋りながら片付けていると、つい閉め忘れてしまうことがある。
他人事ではなく、明日は我が身なのだ。

見た限り、大きくへこんだような感じではなかったが、大切な楽器の無事を祈りたい。

下準備

2007-09-02 23:15:56 | 日常
今日は知り合いの声楽家のリサイタルへ伺い、その後、久しぶりに実家に顔を出した。

気づけばもう9月。
明日から完全に通常の生活が始まり、慌しくなってくる。

日曜日の夜は、度々翌日の授業の下準備などを行う。
これでは宿題に追われている子供と同じだ。

私は子供の頃から季節の変わり目に弱く、体調を崩しやすい。
大事な時期でもあるので、寝冷えなどには注意が必要だ。