気づけば二週間経ってしまったジェローム、五島さんとの演奏会。
遡ること11年、私にとってジェロームとの共演は、当初、異文化を知って驚きの連続だった。
その頃、私はジェロームの能力に嫉妬し、自分の才能の無さに落ち込んだ事もあったが、しかしそう思った事がきっかけで、次第に「私に出来る事」という思考を持つようになった。
そしてもう一つ、私自身があらゆることを維持するモチベーションは、「人の為に」が先に、その後に「自分の為に」ときており、しかしそれは広く大衆にと言うよりは、共演者なり、主催者なり、感謝している人になど、特定の誰かをイメージしているような気がしている。
それは文章を書くこと、例えばこのブログや、曲目解説執筆でも同様で、1から10までを全て説明すると長大且つ大変な労力になることと、文章に情緒が無くなってしまい、全てを書かなくても、その人ならば「わかってくれるだろう」、「察してくれるだろう」、「後で調べてくれるだろう」と、実はその都度、特定の誰かに向けて書いているということがある。
閑話休題。
先日の演奏会の曲目解説はジェロームと私で分担して書き、私はナウシカとパガニーニ・ロストを担当し、その2作品の解説を以下に残しておく。
---
「風の谷のナウシカ」より 組曲5つのメロディー (久石 譲)
Joe Hisaishi: Suite "Nausicaä of the Valley of the Wind"
I. 風の伝説 The legend of the wind
II. はるかな地へ Toward the Faraway Land...
III. レクイエム Requiem
IV. 遠い日々 The Days Long Gone
V. 谷への道 The Road to the Valley
「だとしたら、ぼくらは滅びるしかなさそうだ」
腐海(ふかい)の生まれた訳を話すナウシカに対し、アスベルの核心を衝く台詞は、映画封切りから33年経った今でも、色褪せず胸に突き刺さる。
栄華を極めた文明の片鱗と、蟲(むし)と菌類が支配する世界の、とかく「環境問題」を想起させる物語だが、しかしそれはもっと身近な事柄へ、例えば「双方の相入れない言い分の何処に落とし所を見出すか」、あるいは「社会の中、組織の中での自分の居場所は何処なのか」などと拡大解釈する事も出来るかも知れない。
映画のサウンドトラックを手がけた久石譲33歳の頃の作品、チェロとピアノの為にリダクションされた版。
---
パガニーニ・ロスト (長生 淳)
Jun Nagao : Paganini Lost
美、色彩、幻想、快楽、陰鬱など、長生氏の作品には様々な性格や感性が思われ、たとえ先人の名作を編曲したものであっても、奥行き、温かさが増し、新たな「長生作品」として生まれ変わってしまう。ただし演奏する側として、それらに一貫して言えることは、「一筋縄ではいかない技術的な難しさ」である。
2008年、2本のアルト・サクソフォンとピアノのために書かれた、この「パガニーニ・ロスト」も例に漏れず、およそ9分という演奏時間の中にパガニーニの旋律が、時に浮き出ては消え、そうかと思えば突き刺さるように鋭く、はたまた切なく、そして希望を持って歌われ、色々な感情や表情を味わえるだろう。
初演から話題を呼び、程なくして吹奏楽版、サクソフォン・アンサンブル版が生まれ、数ある長生作品の中でも傑出した人気作である。
遡ること11年、私にとってジェロームとの共演は、当初、異文化を知って驚きの連続だった。
その頃、私はジェロームの能力に嫉妬し、自分の才能の無さに落ち込んだ事もあったが、しかしそう思った事がきっかけで、次第に「私に出来る事」という思考を持つようになった。
そしてもう一つ、私自身があらゆることを維持するモチベーションは、「人の為に」が先に、その後に「自分の為に」ときており、しかしそれは広く大衆にと言うよりは、共演者なり、主催者なり、感謝している人になど、特定の誰かをイメージしているような気がしている。
それは文章を書くこと、例えばこのブログや、曲目解説執筆でも同様で、1から10までを全て説明すると長大且つ大変な労力になることと、文章に情緒が無くなってしまい、全てを書かなくても、その人ならば「わかってくれるだろう」、「察してくれるだろう」、「後で調べてくれるだろう」と、実はその都度、特定の誰かに向けて書いているということがある。
閑話休題。
先日の演奏会の曲目解説はジェロームと私で分担して書き、私はナウシカとパガニーニ・ロストを担当し、その2作品の解説を以下に残しておく。
---
「風の谷のナウシカ」より 組曲5つのメロディー (久石 譲)
Joe Hisaishi: Suite "Nausicaä of the Valley of the Wind"
I. 風の伝説 The legend of the wind
II. はるかな地へ Toward the Faraway Land...
III. レクイエム Requiem
IV. 遠い日々 The Days Long Gone
V. 谷への道 The Road to the Valley
「だとしたら、ぼくらは滅びるしかなさそうだ」
腐海(ふかい)の生まれた訳を話すナウシカに対し、アスベルの核心を衝く台詞は、映画封切りから33年経った今でも、色褪せず胸に突き刺さる。
栄華を極めた文明の片鱗と、蟲(むし)と菌類が支配する世界の、とかく「環境問題」を想起させる物語だが、しかしそれはもっと身近な事柄へ、例えば「双方の相入れない言い分の何処に落とし所を見出すか」、あるいは「社会の中、組織の中での自分の居場所は何処なのか」などと拡大解釈する事も出来るかも知れない。
映画のサウンドトラックを手がけた久石譲33歳の頃の作品、チェロとピアノの為にリダクションされた版。
---
パガニーニ・ロスト (長生 淳)
Jun Nagao : Paganini Lost
美、色彩、幻想、快楽、陰鬱など、長生氏の作品には様々な性格や感性が思われ、たとえ先人の名作を編曲したものであっても、奥行き、温かさが増し、新たな「長生作品」として生まれ変わってしまう。ただし演奏する側として、それらに一貫して言えることは、「一筋縄ではいかない技術的な難しさ」である。
2008年、2本のアルト・サクソフォンとピアノのために書かれた、この「パガニーニ・ロスト」も例に漏れず、およそ9分という演奏時間の中にパガニーニの旋律が、時に浮き出ては消え、そうかと思えば突き刺さるように鋭く、はたまた切なく、そして希望を持って歌われ、色々な感情や表情を味わえるだろう。
初演から話題を呼び、程なくして吹奏楽版、サクソフォン・アンサンブル版が生まれ、数ある長生作品の中でも傑出した人気作である。