hiroshi hara: saxophoniste

日々の思考の断片

仏サックス協会会報4(最終回)

2006-12-30 23:31:16 | sax_仏サクソフォン協会会報

詳細については「sax_仏サックス協会会報」カテゴリーをご覧ください。


7)フランスのサクソフォーンについてどう思われますか?

様式感(スタイル)については個人差があるので一概には言えません。
ただフランスを中心としたヨーロッパ人は、
サクソフォンを身体の一部のように操っているイメージを抱きます。
そのイメージは日本人が笙などの和楽器を演奏することと同じものです。

私が考えるサクソフォンとは、音域によって抵抗や音色が変わり、
したがって楽器そのものに不具合があるため、
奏者は音楽性や技術の向上とはまた別の次元で、その不具合を緩和させる努力をしなければなりません。
このサクソフォンの不具合は誰もが感じるものだと思いますが、
しかしフランスで聴かれるサクソフォンの音色は、音域に関係なく均一です。

私はフランスのあまり上手ではない学生の演奏を観察したことがあります。
素晴らしい演奏とはいえませんでしたが、
しかしその不具合を感じない均一な音色に驚いたことがあります。




8)今後のコンサート等の企画、展望について教えてください。

サクソフォンの特徴の一つとして「持ち替えの妙」があげられます。
私はいくつかの企画案を持っていますが、その持ち替えを最大限に利用し、
聴衆を飽きさせない曲目の組み立てをしたいと思っています。
・一人の作曲家(もしくは複数の関わりの深い作曲家)に焦点を当てた演奏会。
・トランスクリプションや若手作曲家への委嘱。
・クラシックの名曲などを若手作曲家によって再作曲してもらうようなコラボレーション。


以上。

仏サックス協会会報3

2006-11-25 11:23:42 | sax_仏サクソフォン協会会報
詳細については「sax_仏サックス協会会報」カテゴリーをご覧ください。


5)若い作曲家とのコラボレーションなどはされていますか?

最近ではジェローム・ララン氏とともに鈴木純明氏の"Antienne pour 2 saxophones soprano"を演奏しました。
2006年7月、The 14th World Saxophone Congress(Slovenia)で初演。
後に東京、フランスでも演奏。
この作品はジェローム・ララン氏が委嘱したものです。
私は鈴木氏にサクソフォンの特殊奏法をレクチャーしました。


6)音楽的又は芸術的に、どのような嗜好をもたれていますか?

私は子供の頃から色彩豊かなオーケストラが好きで、今でも変わりません。
またコンテンポラリーにもとても興味があります。
印象主義のように調性の持つ力を最大限に引き出した音楽も好きです。
また調性のバックグラウンドを借りず、音響の模倣や倍音を構造解析したものなど、
音の構造に特化した音楽も好きです。
残念ながらサクソフォンはオーケストラに就職することが出来ません。
したがって私たちは音楽活動していく上で、自身でポストを築かなければなりません。
しかしそれがアクティヴ且つクリエイティヴな嗜好へと促されます。

仏サックス協会会報2

2006-11-17 23:22:52 | sax_仏サクソフォン協会会報
先日の続き。

3)2002年のディナンのコンクールで優勝されましたが、このことによってあなたの音楽人生に何か影響はありましたか?

大きく影響しています。
このコンクールをきっかけに、私は「純日本製のサクソフォニスト」と呼ばれるようなりました。
サクソフォンに限らず、これまでの国際コンクールでは主にヨーロッパ人、もしくはヨーロッパで勉強した日本人が優勝していたため、日本だけの音楽教育ではヨーロッパに追いつけないのではと思われていました。
しかしこの出来事によってそのような風潮が払拭されました。
またこの出来事が音楽大学で教鞭をとるきっかけにもなりました。

余談ですが、2005年9月にディナンの市内の橋や教会など59か所の名所で、日本語の説明文を加えた案内板が設置されたそうです。



4)東京においていくつかの大学で教鞭をとっていらっしゃいますが、どのように授業を運営なさっていますか(生徒のレベル、授業の内容、レッスンの時間等)?
どのような曲を教材に使用されていますか?


私は2つの学校で教鞭をとっています。

・Senzoku Gakuen College of Music
学生一人に対し、週1回50分間の個人レッスン。年26回、試験は年1回(任意の楽曲)。
1~3年生に対しては、学生に見合った練習曲、独奏曲(主にフランスの出版社)を私が考え、50分間でトータルなレッスンを行います。
4年生に対してはレパートリー拡大のため主に楽曲のレッスンになります。
選曲は学生の希望を尊重するようにしています。
卒業後、フランスのコンセルヴァトアールに留学する学生が多いです。

・Tokyo Music & Media Arts Shobi
この学校は私の母校です。
学生一人に対し、週一回40分間(3年生からは50分間)の個人レッスン。年30回、試験は年4回。
この学校は試験が頻繁に行われ、音階、初見、練習曲の試験と楽曲の試験が年2回ずつ、計4回あります。
それは3ヶ月ごとに練習曲と楽曲の試験が交互に行われます。
その試験はグレード制(等級制)で、10から1までのグレードに見合った練習曲、楽曲の中から任意に選びます。
レッスンの内容は基本的に試験に向けられたものとなります。
例えば練習曲の試験前なら練習曲のみを、という感じです。
また楽曲の試験では、すべての学生が暗譜で演奏しなければなりません。

仏サックス協会会報1

2006-11-13 23:55:14 | sax_仏サクソフォン協会会報
この度、フランスのサックス協会「A Sax (Association des Saxophonistes)」の会報「Les Cahiers du Saxophone」に私へのインタビューを掲載していただけることになった。
発行は来年1月とのことで、もちろんフランス語なのだが、オリジナルの文章を数回に分けて掲載いたします。

またパリ在住のクラリネット奏者、森あゆみさんにフランス語翻訳をしていただきました。
この場を借りてお礼申し上げます。



1)どのようにしてサックスの勉強を始められたのですか?

サックスを始めたのは中学校の吹奏楽部からで、きっかけは見た目のカッコよさからです。
それまでは何の楽器もやったことがありません。
ただ小学生の頃からオーケストラに興味を持ち始め、中学校に入ったらホルンをやりたいと思ってました。
そして部活動に行ってみると、それほどカッコよくない同級生がサックスを持ったときにとてもカッコよく見えたので、私もサックスを選んでしまい現在に至ります。



2)日本のサックスの教育事情について。

ほとんどの学生は私と同様に中学校、高校の部活動から楽器を始め、吹奏楽やアンサンブルを行いながら、基礎的な奏法を学んでいます。
更に専門的に学びたいと思っている人は、プライベートでレッスンを受け音楽大学を目指します。
音楽大学の入学試験には、音階、練習曲(Ferling etc..)になることが多いです。
音大入学までは音階、練習曲が中心になり、主に技術の習得をします。
音大入学後は週1回のレッスンの中で練習曲、楽曲が行われ総合的なレッスンを受けます。

音楽大学で使用する練習曲、独奏曲のほとんどはフランスから出版されているものを使用しています。
内容はフランス各地のコンセルヴァトアールと似ていると思います。

当然、先生によっては特色あるレパートリーを取り上げています。
例えばアメリカ人、日本人による作品やトランスクリプションされたものなど。
近年、フランス作品以外では下記の作品がよく試験で演奏されています。
Benhard Heiden: Sonata
Ingolf Dahl: Concerto
Yasuhide Ito: Mouvement Supplemntaire a "ZWEISAMKEIT"