らんかみち

童話から老話まで

断酒の王道を見つけました

2009年11月10日 | 暮らしの落とし穴
「兄さんの体不調はね、酒で肝臓をいわしとるのが原因なんでございます。アルコールを分解するだけで一生懸命の肝臓に、疲労物質の乳酸を分解すよる余裕なんざあるはずもございません。えぇ、かまわんのですよ、秘密を明かしても、どうせ兄さんは酒をやめられんのでございましょう? えっへっへっへ」
 整骨院に通っても足の痺れは一向に回復の兆し無く、たまりかねて按摩屋さんの門を叩くと、モミ爺こと座頭の父つぁんはこう言って針を取り出しました。
 
「針の後に低周波? そりゃ結構なんでございますが、ただ……」
 腰から膝にかけてチクチク、チクチクと数十箇所に針を打たれながら、この後で整骨院に行っても良いものだろうか、そう思ったのは胸に秘めつつ低周波治療について質しました。
「低周波は神経痛には効果があるんです、ただねぇ、兄さんの肩凝りには効かんのですなぁ、揉み解すか針で緊張を取るしかないんでございます」
 納得です、というのも以前その低周波治療器を使ったことはあるけど、言われるように肩凝りに効いたためしが無かった。
「柔道整体? それも効きますがね、歯茎が腫れるほどの肩凝りには無力なんでございますよ」

 按摩と針を妄信しているわけじゃないので、モミ爺が気を悪くしない程度の質問攻めにしてみたわけですが、整骨院の先生より分かり良い答えが返ってきます。だからといって整骨院を否定するつもりもありません。ロクロ腰に関してはモミ爺、ロクロ指に関しては整骨院のアプローチの方が効果がありそうに思え、二股をかける日々は続くのです。
 
 さて問題は断酒ですが、何が難しいといって、酒は旨いのです。酒と料理は車の両輪。そりゃ片輪車も意匠になれば美しかろうが、ぼくにとって断酒はダイエットに直結しているからこそきっかけが難しいのです。
 まあそれが一つあるのと、直ちに問題となるのは断酒開始の日から始まる睡眠障害、寝られなくなるんです。こりゃつらいですよ、若いころは三日で慣れたんですが、やがて五日となり、今は断酒から一週間しないと酒無しで眠れるようにはなりません。こんなに苦しいなら、いっそ酒を飲んで寝た方が体に良いぞ! そういう悪魔のささやきに抗えて初めて断酒成功となるわけです。
 
 しかしながら遂に断酒の王道を発見したのです。まずはダイエット効果によって、これからはもてるぞ! と自己暗示をかけること、これによって断酒のきっかけと為す。動機は不純な方が長続きして効果的、とは常々ぼくの主張するところでもあります。
 
 二つ目は薬物に依存すること、たとえば「アモバンテス」という名の睡眠導入剤は即効性が高ばかりか、ドカンと効く「ハルシオン」と違って残りません。効いて残らない、というと「飛んで曲がらない」みたいなゴルフのドライバーに付けられた胡散臭いキャッチコピーのようですが、空きっ腹なら半錠で30分の猶予も無いほどの効きの速さです。
 
 三つ目は、最近人気のノンアルコール・ビール。350mlの缶を開けて一口はビールを思わせる香りと咽越し。あれ変だぞ、これは本当にビールかな、と疑い始めた頃にはアモバンテスが効いてくるという段取りです。こうしてモテモテの夢を見ながらつつがなく眠れて目覚めすっきりという寸法です。
 
 ただこの方法はタイミングが難しい。食後だとアモバンテスの効きは悪く、そんなときに電話でもかかってこようものなら失敗は目に見えてます。またノンアルコール・ビール後30分経過すると、返って本物のビールが欲しくなる!
 そればかりかアモバンテス依存症になりかねない気がして、しかしながら意志の力だけではいかんともしがたく……。現時点ではこれがぼくにとっては断酒の王道かもしれません。

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