らんかみち

童話から老話まで

呪われたコンパ

2008年10月25日 | 童話
「あんたの日常なんかどうでもええから、もっと小マシなこと書かんかい」というご託宣をいただきました。ごもっともですと反省して、このところ見る悪夢の話など書いてみたいと思います。

 ウドドは祟る……

 そのころ、生保の勧誘員は三日にあげず会社に来ていた。「♪ニッセイのおばちゃん自転車で、今日も……」なんてCMがあったが、あんなテレビ映りのいい、誠実そうで清楚な勧誘員なんているわけがない。いたとしても俺が勤めていた会社に入り込んでいたのは、絵に描いたような強欲丸出しのおばちゃん二人だった。
 
 二人はライバル会社に所属しているというのに、仲良くタッグを組んで好き放題に新入社員を勧誘して回っていた。恐らく社長以下、人事部長その他の要職にある連中に体を張って取り入っていたに違いない。
 
 名古屋支店から大阪本社に転勤したばかりの俺のところにも、その生保のおばちゃんの片割れがさっそく勧誘に来た。
「初めて見る顔やな、なかなかええ男やん。ちょっとここに名前書いたってえな、悪いようにはせえへんさかい」
 肥満と豊満の狭間にある胸を、腰掛けた俺の肩口あたりに押し付けながら、書類にサインしろと無理強いしてくる。色仕掛けというには品が無さ過ぎはしないか。それともこの程度のことで懐柔されると値踏みされたのか、俺は!
「間に合ってます。色香にも、生保にも」
 本当はどちらも欠乏していたのだが、やせ我慢という性格は一朝一夕には改まらない。
 
 デブのおばちゃんは以外にあっさりと引き下がった。ふむふむ、引き際も心得ていると見た。さすがは生保レディ、営業マンの俺としても見習うべきところは少なくないな。そう感心していたら、次にやって来た貧相なおばちゃんは手強かった。そのおばちゃんのせいではないが、結果的にそのときに選べるうちの最悪の選択肢を俺は選んでしまった。

 つづく

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