らんかみち

童話から老話まで

オンリーワンに逃げるな

2008年10月30日 | 童話
5-Yr-Old Violinist Paganini Caprice No. 24


 ちょっとブレイクして……。
 以前、バイオリンを弾く小学生の女の子を主人公にした童話を書いたことがあって、その子のバイオリンの腕前をどの程度にしようかと悩んだことがあります。あんまり高度な曲を弾かせると、「そんなのありえへん」といわれそうだし、幼稚な曲では緊張感を欠くように思えます。
 
「音楽は他人との競争じゃなく、気持ちを伝える手段なのだから、だれかと自分を比べるのは意味の無いことだよ」と、さとしたいんですが、
「でも、いっしょに始めた○○ちゃんは次のステップに上がったのに、自分はいつになったら追いつけるの?」と、返されて答えに窮します。
「そんなことはない。オンリーワンでかまわないんだよ」といったところで、負けたと感じている子どもを納得させるのは難しい。

 映像は5歳の女の子がパガニーニの超絶技巧練習曲「24のカプリース」の24番を演奏しているものです。この曲がどれほど難しいかといえば、ぼくは二人のバイオリン教師に教わったんですが、お二方ともこの曲は演奏できませんでした。
 パガニーニがこの曲集を発表した頃も、「悪魔に魂を売って得た演奏技術」と噂された彼以外には、だれも演奏できなかったんです。それを200年後には5歳の女の子が弾きこなすとは、彼自身思っていたでしょうか。
 
「オンリーワンはいやだ。ナンバーワンになりたい」とイチロー選手はいうわけですが、凡人はああいう言葉は聞かなかったことにした方がいいでしょう。ナンバーワンを目指すのはいいとして、たった一人しか頂点には立てないのですから。
 でも昨日、NHKで放送された「プロライダー ノリック青春の軌跡」を観て、ナンバーワンを目指しながら成し得ず逝った彼の美しさが記憶に残りました。
 もしかしたら子どもには、「ナンバーワンを目指して、人々の記憶に残る者になれ」と教えるべきなのかも知れません。全ての子どもは「天才」と呼ばれる可能性を秘めているのなら。

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