らんかみち

童話から老話まで

エセ蕎麦職人は帽子で悩む

2011年11月14日 | 酒、食
 蕎麦打ちをするときには帽子をかぶるわけですが、気の利いたのを持っていないのでカチューシャ入りのバンダナキャップをかぶったりしております。それで何の不都合もないんですが、安っぽさが蕎麦にまで伝染するんじゃないかと気が気じゃありません。
 人はとかく外見で他人を計ろうとするじゃないですか。蕎麦を食べてその味をどう評価すべきかと考えたとき、ヤンキー風の兄ちゃんが打った蕎麦より、いかにも頑固オヤジといった風体の職人が打った蕎麦に○を付け付けたくなるもんでしょう。

 そんなわけでワーキングショップに出向いて「蕎麦打ち職人のかぶる帽子を下さい」と店のおばちゃんにお願いしたら、小学生が給食のときにかぶるのを出してくれるではありませんか。
「いやそうじゃなくて、どういったら良いのかな、千利休がかぶっていたような帽子ですがな」
「あんたのいうこと、だんだん分からんなってきたよ、これでどうなの」
 おばちゃんが次に出してくれたのは、シェフがかぶるような帽子です。
「それで蕎麦を打てっちゃ打てるんですがね、もっと背の低い海上自衛隊の水兵さんがかぶっているのに似てやつなんですよ」
 実際、海自の紙帽子は持っていて、形はそっくりなんですが、口で説明するのは難しいもんです。
「バンダナは要らんいうんなら、いっそのことハンチングにしたら?」
 訳のわからん要求をする客に不機嫌な顔もせず聞いてくれたので、安いハンチングを一つ(助数詞を知らない)買いました。

 蕎麦打ちの帽子のことを何と呼ぶのか分からないのでネットで調べてみれば「和帽子」と。う~ん、でもぼくが欲しいのは菓子職人の帽子じゃなくて、蕎麦屋のオヤジがかぶっているやつなんですよね。
 蕎麦打ちを教えてもらった人たちは彼らのグループのロゴ入り帽子をかぶっていましたから、もしかしたら特注なのかも知れません。

 だったら水兵さんの帽子は何と呼ぶのかな、とミリタリー関係のショップを覗いたら「ギャリソンキャップ」とあり、似ているけど、旧ドイツ軍仕様の帽子をかぶって蕎麦打ちもねぇ……。
 おおっ! 「医療用、がん治療帽子」と謳われているのにお洒落なのがある。ああ、でも値段が高すぎて……などと、帽子一つにくよくよするエセ蕎麦職人なのでした。