らんかみち

童話から老話まで

地位が人を作るとは云うけれど

2010年10月12日 | 暮らしの落とし穴
 秋の風情を楽しむ余裕のかけらも無い新米損長のぼくなので、祭りを滞りなく終えて安堵したせいか、急に風をひいたっぽいような熱っぽいような。

 それにしても、何から何まで「どうしたら良い? こうした方が良いんじゃんないか」なんて細かいことに一々判断を求められても、ついこの前まで俺は平民だったっつうねん! 
「学級委員長は、HALくんが良いと思います」と、スカートめくりをした女子から嫌がらせで推薦され、「それならHALが学級委員長やらんかい」と、担任にお仕置きされる格好で渋々引き受けたのと大差ない状況だっての。

 そうは言っても引き受けたからには村人を代表しているわけですから、頭は寝癖でボサボサ、顔は無精ひげ、よれよれのTシャツに穴開きジーンズ、ゴムの緩んだパンツじゃ何か起きたときに具合も悪かろうってんで、パンツを新調することから始めました。

 島の衣料品店で慌ただしくパンツを買ってきて風呂上がりに履いてみたところ、あれれ前が開かない! 
 トランクスタイプのパンツを買って前が開かない失敗ってよくあるんですよね。何であんなものが売られているのか不思議でしょうがないんですが、ニーズがあるんだから仕方ない。
 風呂上がりとはいえ一度履いたからには、こんなものいらん、と返品するわけにもいかないので、改めてパンツを買いに行きました。

「穴の開いたパンツが欲しいんよ」と、例の衣料品店で訴えたところ、「こっちにあるよ」と案内してくれました。がしかし、陳列棚にはカラフルで扇情的な穴開きパンティーがズラリ。
「違うがなっ! 男のパンツはたいがい前に穴が開いてるやん。こんなもんだれが買ういうねん」と、店員のおばちゃんに詰め寄れば、「見知らぬおじさんが買っていく」のだそうです。
「あんたと俺は知り合いやろ、違うか」
「うん、そうやけど?」
「それやったらますます俺が買うわけないやろ」
「村長さんになったから彼女に履かすのかなぁ思って」
 そら彼女がおれば履かせてみたくは……じゃなくて、どんだけぼくが軽くみられているのかってことですよね。

「地位が人を作る」とは良く云われますが、履き古したジーンズのように、ぼくの身に損長職が馴染むのは、まだまだ先のことのようです。