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■北翔大学大学院・研究生6人展 (1月19日で終了)

2008年01月30日 23時17分19秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 アップが遅れて申し訳ございません。
 この春、大学院修了などで北翔大を旅立つ6人のグループ展です。(長文です)

 こう書くとさしさわりがあるかもしれませんが、北翔大は旧浅井学園大時代から、札幌の美術シーンでは、道教大や大谷短大などと比べ、作家養成機関としてそれほど目立つ存在ではなかったように思います。
 公募展などをにぎわし始めたのはここ数年のことです。なかでも、ここに顔をそろえた6人の活躍は、めざましいものがあったといえるでしょう。

 今回は特別サービスで(?)、大きな画像で作品を紹介します。



 大学院2年生の石川潤さん「生命の旋律」(F200)です。
 これまでは、色のついているまるい「図」と、着彩のほどこされていない「地」が劃然と分かれていましたが、今度は全面に着彩され、より生命感のようなものがあふれる作品になっていると感じました。
 そのぶん、昨年のグループ展で見られたような、だまし絵的な効果は減退していますが、それはそれでいいと思います。

 石川さんは2006年、全道展、新道展、道展すべてに入選。昨年は道展で佳作賞を得るとともに、行動展でも入選を果たしています。




 大学院2年の大道雄也さん「つづくVII」(F100)。ほかに「つづくVI」(F150)も出品しています。
 20世紀の絵画の歴史は「脱・遠近法」「脱・透視図法」の歴史だったと言っても過言ではない側面がありますが、大道さんの絵はそれを逆手にとって、透視図法を前に押し出し強調することで絵画空間を成立させています。
 かくも「これが遠近法だっ!」と力んでいるみたいな労作を見ると、むしろユーモアさえ感じてしまいます。
 しかし、現実にはこんな空間はありえないわけで、遠近法を用いながらも純粋抽象画であるというおもしろい作品になっています。
 もう1点のほうでは、いちばん描出のむつかしい消失点附近をうまく処理することで、あらたな展開をみせています。

 大道さんは06年から2年続けて道展に入選しています。
 また04年の学生美術全道展で奨励賞を得ています。




 大学院研究生・小川豊さんの「もく0710」(P150)です。
 画面上方にライトが当たって見苦しい写真になってしまいました。ご容赦ください。
 今回の目録には、それぞれの生年は記されていませんが、小川さんが6人の中でいちばん年上ではないでしょうか。
 経歴をみても、2000年のサッポロアートアニュアルが最も古く、2005年の道展佳作賞、翌06年には小樽文化奨励賞、小樽市展北海道新聞社賞などに輝いています。新道展には2002-05年、道展には昨年まで3年連続入選しています。
 また、ことし8月20-24日には市立小樽美術館市民ギャラリーで個展をひらくそうです。

 小川さんの絵は、フクロウなどのデフォルメとして見ると、北方の森が持つ叙情性をたたえているようですし、抽象画として見ると、暖色のリズミカルなパターンが目を引きます。
 いずれにしても、どこかにあたたかみを感じる絵です。




 これから取り上げる3人はいずれも芸術メディア学科研究生です。
 草野裕崇さんの「夕暮れ」(180×180)。
 草野さんは近年の若手ではめずらしいぐらい、直球ど真ん中の抽象です。
 マスキングを駆使し、シャープな画面をつくっています。直線で構築された冷たさと、飛沫の生む熱さとが同居しています。
 そこには、ポロックをはじめとする抽象表現主義や、ポップアートなど、さまざまなアートの歴史がこだましているようです。

 この姿勢が評価されたのでしょう、2006年には北海道抽象派作家協会展に推薦されました。
 また、2005年には道展で新人賞を受賞、06年以降も入選を重ねています。




 2006年の新道展でみごと協会賞に輝き、昨年には会友に推挙された藤本絵里子さん「飛翔」(180×180)。
 これまでもっぱら海底の世界を描いてきた藤本さんですが、今回は海から大空へと飛び出しました。
 技法的にも、丸い板を並べるとともに格子状の箱を随所に導入し、集大成的な感があります。
 丸い板に星座図を描いているのがおもしろいです。ちょっと拡大してみます。
        
          

 かに、わし、おおぐま、水がめ、りょうけん、うしかい、しし(小じし含む)、いて、はくちょう、ペガサス、おおいぬ、さそり、うお、ケフェウス、ペルセウス…。
 見ていて飽きません。
 遙かな世界へのあこがれが具現化しているといえましょう。




 最後は、宮下佳菜未さん「かみさま…」(180×180)です。
 これも画面に光沢があるため、ライトが反射して見苦しい写真になってしまったことをおわびします。
 宮下さんの作品は、人物へとアリの群れがびっしり進んでいくという、一種神経症的な絵で見る人に強い印象を与えますが、今回は、アリの群れが反対向きです。アリは、中央にいる女性から遠ざかっているように見えます。
 さらに目を引くのは、中央の少女の手をしばっているのが米国旗であることです。
 そこに着目すると、地平線の下にうごめくのは、虐げられているイランの女性のように見えなくもありません。
 これまでひたすら自分の内部を見続けてきた宮下さんの表現世界が、広い外部へと目を向けていくきっかけの1点といえるのかもしれません。

 宮下さんは2006年に道展と新道展に、07年には道展に入選しています。


 6人は大学を巣立ちますが
「今後も何らかのかたちで表現は続けていきます」(藤本さん)ときっぱり。
 働きながらだとタイヘンだと思いますが、健闘を祈っています。


08年1月14-19日 10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A


□美術サークル 米-yone- http://www.hokusho-u.net/artyone/

新道展企画 第52回展受賞者展(07年12月、藤本さん出品)
第5回学生STEP-なんでもアリの学生アート展(07年11月=石川さん出品)
北翔大学美術サークル米-YONE- 夏休み直前追い込み美術展(07年7月=石川、大道、藤本さんら出品)
第34回北海道抽象派作家協会展(07年4月、草野さん出品)
学生STEP主催 卒業展(07年3月=藤本さんら出品)
浅井学園大学卒業記念3人展(07年2月=藤本、宮下さん出品)
新道展企画 第51回展受賞者展(06年、藤本さん出品、画像なし)


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2 コメント

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Unknown (Chieko)
2008-01-31 10:34:40
画像が大きくて見ごたえがありました。大サービスということですが時どきやってくださると嬉しいです。若い力が漲っていて気持ちがいい絵でした。
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2008-02-01 00:08:30
Chiekoさん、初めまして。
ありがとうございます。

複数の画像を大きくするのは、あまりやらないのですが、やってみました。

いささか面倒なんですが…。

また機会がありましたら。
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