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■第三十四回北海道抽象派作家協会展 (07年4月22日で終了)

2007年06月08日 21時06分48秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 札幌の前衛美術シーンのけん引役だった故・渡辺伊八郎(1918-90年)の呼びかけで73年に結成された団体。
 メンバーの「同人」と、同人が年ごとに推薦する作家の2本立てで、これまで運営されてきました。すでに別エントリで書いたとおり、来年からは、アンデパンダン形式にして出品者を募ることにするそうです。

 あたらしい顔ぶれが、市民ギャラリーの大きな空間をつかって作品を自由に展開すれば、近年同人メンバーが固定化している協会展に、新風をふきこんでくれそうです。ただ、さいきんの若い人(って、いかにもおやじくさい言い方だけど)は、チマチマしたものをつくるのがわりと好きなようなので、どうなるかはわかりません。抽象へのこだわりも、あまりないみたいだし。

 美術史的にみて、あるいは、日本の西洋美術の受容の流れからみて、「抽象」が前衛(このことばも死語化しつつありますが)と、かなりの部分で同義だったのは、抽象表現主義、アンフォルメル、ミニマルアート…とつづいてきた戦後しばらくの時代であり、1980年代のニューエキスプレッショニスム(いわゆるニューペインティング)の流行から後は、いったいなにが最先端なんだかわからないごった煮状態がつづいているわけです。
 そういう現状では、抽象画というくくりは、絵画の中の一分野にすぎなくなっています。
 むしろ、美術界以外との交通を図り、みずからの主張を盛るためには、不都合な表現形式になっているということもできるでしょう。

 もちろん、最先端だからエライ、ということではありません。
 絵画、立体を問わず、抽象表現がやりのこしている未踏の分野というのは、きっとあるはずです。

 前置きはこのくらいにして、それぞれの作品について。
 まずは、オリジナルメンバー(第1回からの同人)に敬意を表して、今荘(いまじょう)義男さん(岩見沢市栗沢町)と、佐々木美枝子さん(札幌)から。 


 
 今荘義男さんは、図録には「古里(イ)」「古里(ロ)」の2点がリストアップされていましたが、会場には「古里(ハ)」も展示されていました。
 いずれも180×300センチの大作です。

 筆者は、今荘さんの絵がすきです。
 もう何度も書いていますが、今荘さんは、日本的な情緒を、フォルムや意匠ではなく、色で表現しようとしているからです。
 抹茶色や紺色など、おちついた油絵の具の筆触は、見るたびに感銘をさそいます。
 大作の新作4点を発表する若々しさは、1930年生まれとは思えません。


    

 若々しさでいえば、長く自由美術協会で活躍(現在は退会)した佐々木美枝子さんは1923年生まれですから、おどろくべき若さです。
 画像は「作品C」(F60)。
 ここ数年は、彩度の高い赤やピンクの大小の矩形を重ね合わせるような作品が多いです。
 赤と緑の補色のつかいかたも若いなあ。
 “枯れた”ところは、みじんもありません。

 ほかに、「作品A」「作品B」「作品D」。いずれもF60です。


           

 三浦恭三さん(小樽)は「移行過程」というシリーズを「1」から「4」まで出品(「4」のみF100号、あとはF120号)。
 緻密な計算による図形は後退し、青と黄色のさわやかな色彩の戯れが目を引きます。


           

 服部憲治さん(苫小牧)は、作者は一度もお会いしたことがありません。
 「作品A」「作品B」は、いずれもF50。
 矩形と矩形を描く筆に、デザインではない、絵画ならではの余韻を漂わせます。


           

 後藤和司さん(札幌)は、M100号キャンバス5点からなる「青のscene ’07 I」を出品。
 画像ではわかりづらいと思いますが、ツイード織のようなパタンの細い線を、ひたすら描き連ねて完成させた大画面です。
 単純な反復運動の中に、明るい線が交ざり、画面を生き生きとしたものにしています。

 同人ではほかに、旭川のあべくによしさんが「記憶の箱(風が透き通った日)秋の詩」を「I」から「III」まで出品。
 外山欽平さん(函館)は、例年通り、札幌時計台ギャラリーで発表したばかりの100号キャンバスを壁面で組み合わせたものを出品しています。ことしは12枚使用して「Jの旗のもとに」。図録には「454×648センチ」とあります。
 林教司さんの「種子 -インスタレーション-」は、1点1点手で描いたものではなく、ギャラリーたぴおでの個展のさいに印刷したDMの余りを、400×700センチという広大な面積にびっしりと敷き詰めたもの。ならべる作業は手で行なったので、微妙なずれが生じ、デザイン的な壁紙にならずに済んでいます。


           

 推薦作家は、ことしは6人。

 冒頭の画像で、天井から垂れ下がっている巨大な(500×150センチ)作品は、山岸誠二さん(札幌)の「ボクガ ココニイル ワケ」。
 絵の具の飛沫がオールオーバーに散った作品です。

 上の画像は、ギャラリーたぴおのグループ展や新道展でもおなじみの横山隆さん(札幌)。
 図録には「彼方へ 1」(92×182センチ)と「彼方へ」(130×182センチ)がリストアップされていましたが、会場にはほかに、「彼方へ」とだけ題された作品もありました。
 段ボールでつくった建築模型のような壁掛けの立体は、貧しそうな外観ながらパワーを感じさせます。
 

           

 甲斐野弘幸さん(札幌)は、新道展と水彩連盟展に出品しています。
 もともとは森木偉雄さんの水彩教室で湯淺美恵さんや小路七穂子さんとイーゼルをならべていた人なのですが、近年は黒や白の矩形で構成したダイナミックな画面をつくっています。
 「玄の跫音 2007-I」(F120)「玄の跫音 2007-II」(同)「玄の跫音 2007-III」(F80)「玄の跫音 2007-VI」(同)の4点で、画像は「III」です。


           

 岩田琿さん(渡島管内七飯町)も新道展でおなじみ(会員)。
 水彩で、機械部品や歯車などを執拗に描いていますが、画像ではわかりにくいでしょう。
 作品は「CUT.TURBO-1」(S150)と「CUT.TURBO-2」(同)。


 岩田琿さん(渡島管内七飯町)も新道展でおなじみ(会員)。
 道南の公募団体、赤光社でも拝見したような…。
 水彩で、機械部品や歯車などを執拗に描いていますが、画像ではわかりにくいでしょう。

 ほかに、草野裕崇さん(江別)が「遊園地」「静と動」「帰り道」という、いずれも180センチ四方の絵画を、鈴木薫さん(札幌)が「作品(架空の根に聞く)」「作品(記憶の根に聞く)」(いずれも182センチ四方)を、それぞれ出品しています。


 

07年4月17日(火)-22日(日)10:30-18:00(初日13:00-、最終日-17:00)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G)

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