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■志摩利季銅版画展「北辺ララバイ」 (2016年6月22日~7月4日、札幌)

2016年07月04日 10時34分14秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 ギャラリー犬養には佐藤菜摘さんの絵を見に行ったのですが、2階の志摩利季さんとおっしゃる方の版画展が思いのほか良かったので、ここで少しだけ記しておきます。
 おしゃれなセンスとか、軽やかな線とか、そういうものとは正反対の、素朴な絵柄なのですが、北国へ寄せる作者の思いの強さが、こちらにも伝わってくるようでした。

 個展タイトルにもなっている「北辺ララバイ」は、野に敷いたシート? の上にうつぶせで横たわる裸婦の上に、人工の星々がつり下がっているという不思議な光景。
 「北冥または二つのレクイエム」は、2枚組みの大作で、背中に羽根をはやした天使が大きな木の枝に止まり、明るい彗星がいくつも落ちる夜空を見上げる中、たくさんのつがいの動物たちが木のまわりに集まっているという1枚と、背中に木の枝をはやした人魚が海の上でクジラや海獣とともにやはり空を―上の方には小屋が浮かんでいます―見上げています。古い神話の一場面のような、幻想的な世界です。

 さらに「夜行眼」は、海岸地方の空を大きな目が飛んでいくという、ファンタジー的でちょっと怖い光景を描いています。

 会場にあった「経歴」によると、志摩さんは1954年利尻島生まれ。
 その後、宗谷管内枝幸町を経て札幌に移り、多摩美大で油彩を学ぶ。スペイン滞在時に版画に転じ、千葉や埼玉で教員をしながら制作、2011年に札幌に引っ越してきたとのこと。
 今回の個展は「銅版画展」と銘打っていて、エッチング、ドライポイント、アクアチントなど多彩な技法が用いられているほか、油絵などもあり、盛りだくさんです。

 これは、筆者の勝手な思いの投影かもしれませんが、北の果てで生まれた志摩さんの故郷への強い望郷の念がどの作品にも込められているように感じられました。
 逆に言えば、その懐郷の思いの強さが、作品を支えているようにも思えたのです。


2016年6月22日(水)~7月4日(月)午後1時~10時30分、火休み
ギャラリー犬養(札幌市豊平区豊平3の1)


●ギャラリー犬養への道

・地下鉄東西線「菊水駅」から約700メートル、徒歩9分
・中央バス「豊平橋」から約180メートル、徒歩3分

・地下鉄東豊線「学園前駅」から約1キロ、徒歩13分




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