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■櫂展 第8回 続き(2012年7月16~21日、札幌)

2012年07月21日 23時31分28秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(承前)

 前のエントリで、メンバー7人(梅津薫、川本ヤスヒロ、斉藤嗣火、田崎謙一、福島孝寿、藤井高志、渡辺貞之)の絵画作品の画像を紹介した。
 ここでは、もうすこし長い目で、北海道の美術史における櫂展の位置づけなどについて考えてみたい。


 会場では、最年長メンバーである渡辺貞之さんと話すことができた。
 それによると「櫂」は、誰かが声を掛けて集めたグループではなく、全道展の打ちあげなどで、気がついたら2次会、3次会で一緒に飲んでいる顔ぶれなのだ、という。

 だから、7人の顔ぶれが第1回から不動であり、しかも、全員でパリに旅行するほどの仲良しなのであろう。
 今回の案内状の写真は、ルーブル美術館の前で、シュルレアリストの集合写真をまねて撮った1枚とのことだ。

 渡辺さんには、以前、全道展の会報かなにかで、先輩画家の伏木田光夫さんが「若い世代はなぜつるまないのか」
と書いていたことが、気にかかっていたという。
 仲良しではあるが、絵画をめぐって議論をいくらでも重ねられる関係。美術家には、そういう「場」があったほうがいいのかもしれない。


 ところで、個人的に
「櫂って、ちょっと損してるよなあ」
と思うことがある。
 メンバーの力量は申し分ないのに、かつて北海道の美術史を彩った数々のグループ展のような扱いを受けていないように感じられるからだ。

 道立近代美術館にしても、吉田豪介著「北海道の美術史」にしても、道内の美術史は、団体公募展とグループ展を基軸として記述されている面が、けっこう強い。
 たとえば、「組織」「オード」「北象展」「TODAY」「玄の会」「10人空間」といったグループである。これらのうち、札幌を拠点とするものは、大丸藤井や札幌時計台ギャラリーを会場として開かれ、道立近代美術館の開館後は、そこを会場とする場合もあった。

 渡辺貞之さんに直接お聞きしなかったが、彼らが「北象展」「玄の会」などをまったく意識していないということはいささか考えにくいと思う。これらには、全道展メンバーも多く加わっていたことだし。

 しかし、世の中の関心は、絵画や彫刻から現代美術へと移ってしまい、「櫂」は、絵画のグループ展というだけで、注目されなくなっているのではないだろうか。

 だとしたら、なんだか残念だ。



 人間の頭脳では、10も30もあるファンクションが独立して動き回るさまをとらえることは難しい。
 せいぜい2~4の仲間にまとめないと、理解できないのだ。
 だから、道内の美術に限らず、日本近代文学や政治など多くの歴史は、グループの歴史になりがちだ。
 逆に言えば、いまはなかなかグループが成立せず、歴史が書きづらい時代だと思う。
 日本文学でも美術でも、戦前の通史は山ほど出ているのに、戦後が少ないのは、個人プレーが圧倒的に多くなった時代の反映でもあるのだろう。
 北海道の美術史では、会場の制約もあって、70年代ぐらいまでは個展がそれほど開催できず、必然的にグループ展が多かった。その後は「個の時代」の性格が強まり、といって、突出した才能も見いだしづらくなり、歴史をおおまかに捉えにくい時代になっているというのが、個人的な印象である。



2012年7月16日(月)~21日(土) AM10:00~PM6:00(最終日は5:00まで)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西2 地図A

・深川巡回展
第1部 8月16日(木)~31日(金) 
第2部 9月1日(土)~15日(土) いずれも午前10時~午後6時(月曜休館)
アートホール東洲館(JR深川駅前)


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