全国各地から「前衛書」の作品が集まった展覧会。
書の中でも「前衛」は、北海道書道展や読売書法展には出品されないこともあり、札幌では見る機会は決して多いとはいえない。そんな中で、この分野の書が並んだ展覧会が2週にわたって開かれたことは、少なからぬ人に、新鮮な驚きを与えたことと思う。
なにせ、「前衛書」というのは、漢字などの書に根ざしながらも、文字にこだわらない。
そのぶん、書の素養が乏しくても、抽象絵画を見るのと同じような感覚で造形を味わえるという利点がある。
第1週と第2週では、違う書家が出品している。2週にわたって作品が出ていたのは、札幌の書家で、今回の作品展にあたって中心的な役割を果たした竹下青蘭さんと、招待作家的な位置づけであろう札幌の画家、江川博さんである。
絵画における「図」と「地」の問題について、長年にわたって実作で考察してきた江川さんは、前衛書の展覧会に招かれるにはふさわしい画家だ。
この作品を見ると、朱の線が図で、黒が背景のようであるが、その逆であってもいっこうに差し支えないわけで、「図と地」は、客観的な事実の問題というより認識論の問題なのではないかと考えられる。
さて、第1週の出品作の中から、いくつかを紹介する。
帯広の八重樫冬雷さん。
「けふもいちにち風をあるいてきた」(山頭火の句)
と図録にある。
もちろん、山頭火の句の文字を書いたのではなく、その流浪の精神を、絵巻物ふうに表現したということなのだろう。
笠田邦園さん(島根県浜田市)は、呉服を出品した。
東日本大震災への鎮魂の思いがこめられている。
愛媛県松山市の鎌田恵山(けいざん)さん。
この緊張感には、圧倒させられた。名剣士の居合い抜きに立ち会っているかのように、張り詰めた空気を、ひしひしと感じさせる。
静岡県富士宮市の赤池艸硲さん。
余白を生かし、点を打つことに精神を集中させた作品。
そのあり方が、李禹煥を連想させる。赤池、李の両氏は、異なる道を通って同じ山頂に達したのではないかとも思う。
竹下青蘭さん(札幌)。
淡墨の線と点がダンスを踊るように画面ではねる。
香川県高松市の東原吐雲さん。
こちらも、緊張感ある墨痕の配置。
会場風景。
ほかに川邊艸笛(大阪府高槻市)、喜代吉鐵牛(浜田市)、榛葉壽鶴(静岡県島田市)、外林道子(東京都世田谷区)、田中一遥(神奈川県藤沢市)、原雲涯(長崎市)、宮村弦(静岡県)の各氏が出品している。
part2 については、別項に続く。
2014年
part1: 7月22日(火)~27日(日)
PART2: 7月29日(火)~8月3日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
コンチネンタルギャラリー(札幌市中央区南1西11 コンチネンタルビル地下)
【告知】
■交錯する眼差しの方へ II 遠藤香峰・大川壽美子・須田廣充・竹下青蘭・吉田敏子(2013)
■江川博展 (2013)