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くぬぎのたろぐ

くぬぎ太郎の日常的視点

傷心りんご

2008-12-11 23:00:19 | Weblog
先日、例のごとくスーパーの食品売り場を
徘徊していると、妙に安いりんごが売られていた。
6個入り1袋で299円と書いてある。
その店は全国津々浦々、どこにでもある大手スーパーで
普段りんごは安くても1個100円前後である。
そんなに安くりんごを売っているのは見たことがない。

だが、立て札をよく読んでみると「雹害りんご」と書いてある。
見慣れぬ漢字、何て読むのかわからないが、
とにかく、このりんご達は何かしらの害に遭っていて、
どこかに傷がついているので安くなっているらしいが
透明な袋越しに見た所目立った外傷はない。
味に変わりはないとも立て札に書いてあるし、
何よりも安いので買ってみることにした。

翌朝、朝食に食べようと思い、袋から1個のりんごを取り出した。
手に取って360度舐め回すように観察してみるが
やはり目立った外傷は確認できない。
もしかしたら内臓疾患かもしれないとの仮説を立て、
メス(包丁)で一刀両断、真っ二つに切ってみたが
中身も正常、フジらしく蜜がつまって実に美味しそうである。
味がおかしいのか、と捜査の基本に立ち返って
スーパーの立て札を疑ってみたが、
食べたところ普通の味で、甘くて美味しい。

このりんごはいったいどこに傷を負っていたのか。
残るは心である。
おそらく何かしらの衝撃的な出来事を目撃して、
PTSD(心的外傷後ストレス障害)になってしまったのか、
あるいは、正常なりんごなのに傷物扱いされて、
心に深いトラウマを抱えてしまったのか。
だが、それを確認するのは容易ではない。
なぜなら「りんごの歌」にもあるようにりんごは何も言わない。
と同時に、「りんごの歌」にはあるけどりんごの気持ちはよくわからない。

結局判然としないまま、その1個のりんごを食べ終えた。
そういえば「雹害」って何て読むのだったか。
ふいに思い出してインターネットで調べてみると、
答えは「雹害(ひょうがい)」。
生育途中に雹に降られて表面に傷がつくのを「雹害」というらしい。
「また一つ勉強になりました」と一人納得し、
早速残りのりんごを確認してみたが、
一体どこに傷があるのかよくわからない。

この程度のことで安く売ってくれるのはありがたいことではあるが、
品質基準が厳しすぎるのではなかろうか。
まあ、生産する側に言わせれば
消費者が神経質すぎるということもあるだろうけれど。

りんごといえば静物デッサンでは定番のモチーフ。
浪人時代に美術予備校で描いて以来、
久しぶりにりんごをよく見た日であった。