くぬぎのたろぐ

くぬぎ太郎の日常的視点

びわ

2007-05-26 19:21:18 | Weblog
食べ物の中でなにが好きかと尋ねられたら、
寿司とかたこ焼きとかいろいろ迷ってしまって即答できないけれど、
範囲を絞って果物の中でなにが好きかと尋ねられたら
「びわです」と即答できる。

どこの国から来たか知らないけれど日本的な淡い色、控えめで上品な甘さ、
繊細で傷つきやすくて、食べられるところはほんのちょっとで
すぐになくなってしまうはかなさに心惹かれる。

年に数回の贅沢と、思い切って買ってみてもすぐになくなってしまう。
もっと食べたいと思っても庶民には頻繁に買える値段ではない。

どうしてびわは高いのか。
他の果物と何が違うのか。
びわの視点に立って考えてみる必要がある。

スーパーで売られているびわ。
そこらの安い果物のようにむき出しで山積みされていることはまずない。
しっかりとしたプラスチックのケースに入れられ、
びわの身体にフィットするように成形されたフカフカのスポンジに包まれて
互いのびわが触れ合うこともないように気を遣われている。
もちろんケースに入れられていても重ねられることはない。
スーパーマーケットにおいてこのような陳列の仕方は相当なVIP待遇であろう。
さすが高価な果物は違う。

でも視点を変えてみると、
このVIP待遇こそびわが高く売られている理由かもしれない。

びわはデリケートで傷つきやすい。
収穫されてからスーパーで売られるまで、
どんな道を歩んでくるのかわからないけど、
相当な気の遣われ方をされているのは間違いない。
もしかしたらびわを1段だけ積んだ大型トレーラーが街を走っているのかもしれないし、
全コンテナびわ1段という貨物列車も走っているかもしれない。
そうだとしたら輸送費はかなりの額になるはずだ。
また、スーパーに並べられたびわが傷ついていないか
警備員やカウンセラーを巡回させるにしても人件費がかさむ。

つまり、ただでさえ高価でデリケートなびわは
びわを取り巻く人々の献身的な働きに対する莫大な輸送費と維持管理費が上乗せされて、
さらなる高値がつけられているのだろうと考えられる。

そう考えれば、
びわが高価なことも納得できるし、ますますありがたみも増してくる。
やっぱりびわはすごいって。

子供の頃、
親が買ってきてくれたちょっと上質なびわがとても美味しかったのを覚えている。
確か一個ずつ和紙に包まれていた。
あれはどこぞのお姫様だったのだろうか。
再びあんなすてきなびわに出会えることを、この季節には夢見ている。