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★ 『灰と幻想のグリムガル』12巻・感想 竜の島ですごす夏休み

2018年06月22日 | ★その他

『灰と幻想のグリムガル level.12 それはある島と竜を巡る伝説の始まり』
 
(著:十文字青 先生/イラスト:白井鋭利 先生)

 

 作品紹介ページ(試し読みあり)
 
 オルタナへの帰還を目指し、海へ出るハルヒロたち。
 その海辺に乗り上げていた一隻の船には、海賊(?)たちがいて・・・

 と始まる12巻。
 海賊(?)の少女・モモヒナとの出逢いを経て、エメラルド諸島へ向かうハルヒロ一行。
 そこには竜が住んでいるとされ、到着した途端、街が竜に襲われる場面を目撃することに。

 ここから始まる事件の真相を追う物語。
 交渉、聞き込み、夏休み、決闘、竜襲撃と、様々な出来事が飽きさせない面白さ。
 そうした冒険の果てに、伝説が始まります(ぇ

 もう13巻が出ている所もあるようですが、まだ12巻の感想を書いていなかったので・・・
 
 
 
 

以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)

 
 
 
 
 

【ネタバレ感想】
●オルタナへの道は険しく

 まだまだ続く帰還への旅路。

 正体不明の生物に襲われるのは、いつものこと。
 それに慣れることもなく、悪戦苦闘しながら進む道のり。

 途中、ドワーフ製の宝箱を発見するも罠に引っかかったりと、やっぱり前途多難。
 上手くいきそうでいかない、ハルヒロたちらしい道中でありましたけど、
 やがて海へ出た一行は、そこでひとつの出逢いを果たすことに・・・

 いつも、谷だの丘だの森だので息苦しい戦いを強いられてきた一行が、
 海という開けた場所へ出たことで、ちょっとした開放感を覚えたりも。
 このあたり、なかなか爽快な印象を与えてくれましたね。

 

 

●メリイの変化とハルヒロと

 自分に戸惑うメリイと、つなぎとめようとするハルヒロと。

・変化への戸惑い
 知らないはずのことを知っていたり、使えないはずの魔法を使えたり、
 相変わらずメリイの様子がおかしいわけですが、彼女自身もその変化に困惑。

 そして、そんなメリイに対する周囲の反応も、腫れ物に触るというか、
 メリイの言葉を聞いて黙りこくってしまうもので、気まずい雰囲気になっています。

 ハルヒロはフォローしようとしますが、同時に、こういう時に遠慮なく
 言いづらいことを言える「あの馬鹿」がいれば、と考えていたのは面白い所。
 パーティにおけるランタの有用性というか、ありがたさを感じられますね。

 まあ、言ったら言ったで、「余計なことを」とか思ってしまうのでしょうけど。
 ハルヒロは間違いなくウザがるはず(^^;

 
・メリイとハルヒロ
 メリイは、みんなが気を遣ってくれていることをわかっていて、
 そのことをありがたいと思ってはいるものの、自分が変わったことに怯え、
 自分がおかしいかったら、おかしいと指摘してほしいと語りつつ、混乱している様子。

 そして、メリイが取り乱しそうになると、ハルヒロが彼女を抱き寄せていたのには、
 うっひゃあと驚かされましたね。

 そんな行動に出ながらも、ハルヒロらしく色々ネガティブに考えていたのが可笑しかった。
 とはいえ、メリイを守りたいという一念が軸にあって、何とか彼女を安心させようと
 ハルヒロらしからぬ頑張りを見せていたのは、好感触でありました。

 メリイもメリイで「ずっと、こうして欲しかったの」って、まあ大胆。
 それ以上、ハルヒロは踏み込めませんでしたけど、それでも大きな前進でしょう。

 
・メリイをつなぎとめる存在
 ただ、このハルヒロの行動は重要な気がします。
 自分の変化に戸惑い、混乱しているメリイは、いわば自分を見失いそうになっている状態。
 そんな彼女をつなぎとめられるのは、もしかするとハルヒロだけなのかもしれません。

 ジェシーから受け継いだ記憶の荒波の中で、消えてゆきそうになるメリイの心を
 呼び止めることができる存在に、ハルヒロがなれるかどうかは、今後の鍵になりそうです。

 

 

●K&K商会との邂逅

 海辺で出逢う謎の少女と・・・

 海へ出た一行が見つけたのは、座礁しているらしき船。
 その近くの岩浜には、人間とオークとコボルド等が一緒にいる集団が。

 そして、まさかの鉄砲による銃撃を受けますが、「鉄砲」のことを
 ハルヒロたちは前の世界の記憶で知っていて、セトラがわかっていなかったことは、
 やはり“世界”の違いを感じさせる描写でしたね。

 それはともかく、集団のリーダーである少女・モモヒナ。
 彼女は、十文字先生の別作品『大英雄が無職で何が悪い』の登場人物らしいですね。
 私は読めていないのですが、グリムガルと同一世界の物語のようで、興味津々です。
 (web版は更新止まっているみたいですけど途中まで読めます

 ということで、モモヒナと出逢い、色々あって彼女らと行動を共にすることになり、
 海賊商会K&Kの一員として、その本拠地・エメラルド諸島へ向かうものの、
 そこでトラブルに巻き込まれてしまうあたり、ハルヒロたちらしい展開でありました。

 また、ユメ以上にぶっ飛んだモモヒナの明るく軽いノリや、K&K商会の個性的な面々は、
 トッキーズっぽい雰囲気を醸し出して、いつもと違った空気をつくり出していましたね。

 

 
●竜のいる島

 竜という存在。

 島へ着くと、3頭の竜が港を襲っている現場に遭遇。
 竜は大昔から住んでいて、守り神とすら言われているのに、なぜこんなことを?
 という所から、ハルヒロたちも、その調査に乗り出すことになる展開が面白かった。

 竜といえば、ファンタジー世界では最高峰の強さであることが多い存在。
 そんな竜を相手取って何が出来るのか? というのは、なかなかに気になる所でした。

  

 
●冒険と一行と

 冒険の中での動向。

・クザク
 この巻で大きな見所があったのは、クザクでしょうか。
 竜による襲撃事件の真相を探る際、頭部がキツネに似ている種族ルナルカに捕らわれ、
 クザクが決闘に代表として出ることになっていたのは、見せ場でしたね。

 ちょっと頼りない所もあるクザクですが、ここでの戦いは見事なものでしたし、
 対戦相手ムァダンも引けを取らない戦士であり、名勝負となっていました。

 また、ハルヒロへの無垢な信頼を感じられる描写があったり、
 ハルヒロのミスにも率先して切り替えの姿勢を見せたりと、
 ハルヒロとの関りで、色々と見せてくれるものがありましたね。

 それと、シホルに犬扱いされるシーンには笑!
 背中や頭まで撫でられるとか、何なのこれ・・・

 

・セトラ
 とくに気になったのは、セトラでしょうか。
 ハルヒロの気持ちが誰に向いているかを察した彼女の行動は、
 以前のように、ハルヒロに馴れ馴れしくすることが、なくなっていますね。

 ハルヒロとメリイが2人きりなることも厭わず、むしろ推奨しているような?
 さらに、積極的にならないハルヒロに、じれったさを覚えてもいる様子。

 かと思えば、気味の悪い生き物から救ってくれたハルヒロに思わず「すきだ」
 なんて言ってしまうくせに、後から「さっきのは忘れろ」と忠告する矛盾。

 これらから、ハルヒロへの想いを抱えつつ、彼の意向を尊重するセトラの愛を
 感じてしまうのですが、いかがでしょう。 これはツライことだと思いますよ。

 

・シホル
 シホルに関しては、ハルヒロからの信頼感が増している印象。
 とある場面で、これでいいのかな? と考えた際、シホルを見てしまうハルヒロは、
 「迷ったときはついシホルに救いを求めてしまう」なんて思うほど。

 このあたり、もはやパーティの参謀格になっているシホルの風格を感じます。
 クザクを犬扱いして愛でるのに!

 あと、謎の生き物が背中に入って「ぎゃあああ!」と叫ぶ彼女は愛嬌あってよかった(ぇ
 がたがた震えて、精神が遠くへ飛んで行ってしまった彼女は、格別でありましたよ(ォィ

 

・ユメ
 今回、あまり目立たなかったかな? と思えるユメさん。
 ですが、最もインパクトある行動をとったとも言えるでしょうね。

 魔法使いにして、カンフーマスターであるモモヒナに、興味津々だった彼女が、
 ああいった行動をとったことは、パーティにとって大きな影響がありそうです。
 でも、ユメさんなら大丈夫と思える安心感もありますね。

 

 

●夏休み

 中休み的な物語。

 前巻のあとがきに「明るく楽しい」内容になると書かれていた12巻。
 色々大変なことはあったものの、概ね間違ってはいなかった気がします。

 海でくつろぐシーンでは、女性陣が戯れる平和な光景を見て「夏休みみたいだな」
 なんて言葉も出て、貴重な時間を過ごしていることを感じさせてくれました。

 さらに皆で遊んだり、大笑いしたり、ハルヒロも珍しくはしゃいだりと、
 これまでの過酷な道のりを思うと、休養をとれたような気にもなって、
 癒される感覚がありましたね。

 

 

●そして伝説へ・・・

 竜の巣へ。

 事件の解決のため、情報を集め、行動したハルヒロたち。
 ついには、竜の巣へと立ち入ることになるのですが・・・

 巣まで行く道中の過酷さが、これでもかと描かれる場面は、いつも通りの苦労の連続。
 だったのですが、この過程の厳しさがあればあるほど、この後、一気に街までの行程を
 ショートカットしてしまう爽快感が、際立つようになっていたのには脱帽でありました。

 ハルヒロにとっては、死を覚悟しなければならない状況だったでしょうけど、
 このショートカットの爽快感は、なかなか得難いものだったと感じます。

 そして、事件を解決へ導いたハルヒロたち。
 ゴブリンスレイヤーに変わる通り名を付けられていたのは愉快でしたし、何より痛快。
 まさに、「明るく楽しい」内容にふさわしい物語となっていました。

 しかし、最後に起きた突然の出来事には、驚かざるを得ませんでしたね。
 これがこれから、どのような影響をハルヒロたちに与えるのか、注目ですけども、
 前向きな方向性ではありますので、約束の日を待ちたい気分でいっぱいです。

 また、ハルヒロがスランプ気味であることも気になります。
 これは悪い前触れなのか、はたまた新たなステージへ進む前兆なのか。

 それと「受信石」が壊れたらしいことも。
 本当に壊れたのか、はたまたソウマたちに何かあったのか。
 今後のハルヒロたちの動向共々、諸々が気になりつつ、今後も楽しみです!

  


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