五里霧中

★ マンガなどの感想 ★

◆ 「お気に入り」4コマ漫画 いろいろ

2012年09月07日 | ◆「お気に入り」  4コマ漫画

「お気に入り」4コマ作品いろいろ。

1巻作品3つ、完結作品1つ、単巻作品2つです。

 

 

 

『イヴ愛してる』1巻 (伊藤黒介 先生)

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 「色魔イヴ降臨」 (オビ文より)

 サキュバスであるイヴが、人間界に子作りにやって来た・・・

 はずなのに、ターゲットがオカマさんだったことから、ややこしいことに!?

 

 と始まる物語なわけですが、いや~、かなり面白いです。

 主人公イヴは色魔ということで、お色気路線で攻めてくるのですけども、

 まあ何と言うか、人間臭い悪魔でありまして、そんなところが楽しいお方。

 あの手この手でターゲットのアキラちゃんを誘惑しますが、

 相手はオカマなので袖にされまくり。 それでも何とか食いついて、共同生活を営むことに。

 

 こう書くと、よくある同棲モノに近い作品のように思えます(間違ってはいません)が、

 伊藤先生の作風は、甘ったるい空気をまとったものとは異なり、

 生活感をただよわせる独特の雰囲気があって、ちょっと普通ではない趣があります。

 とくに後半登場する「天使」のエピソードなどは、不幸・暗さをストレートに出してくる話で、

 それが「人間」というものについて考えてしまうような、しかし決して説教臭くない、

 素晴らしい内容となっていたりと面白い。 基本はコメディなんですけどね。

 

 いわゆる萌え4コマが苦手な方でも、いや、むしろそのような方にこそ

 読んでいただきたい、そんな作品となっています。

 所々で引用される名著の文章も、作品の空気を引き締めていますね。

 などなど、最近の4コマ作品の中では注目作。 今後も楽しみです!

 

 

 

『桜乃さん迷走中!』1巻 (えのきづ 先生)

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 「桜乃芽吹、社会人なりたてで職も家もすべて失いました。」 (オビ文より)

 上京して1人暮らし、商社に勤める桜乃さん。

 しかし、ある日会社へ行くと倒産のお知らせが・・・ そこから始まる転落人生。

 公園生活に始まって、どこへゆくのか桜乃さん。 その迷走の日々を描く4コマ作品です。

 

 まんがタイムジャンボで連載中。

 私は毎月読めていないので、コミックスでまとめて読んで、いろいろ納得。

 というのも、はじめ桜乃さんが公園生活を始めた際には、

 なんとも気の毒で、けなげで、応援してあげたい! という心持ちだったわけですが、

 たまに連載を読んでみると、なんだかダメ人間というか、図太い人になっていて、

 まあそんな所が楽しいのですけども、あれあれ~?という感じだったのです。

 

 ただ、公園生活の頃から、凹みはするけど、すぐにボ~ッと立ち直るというか、

 どこか無になっているようなタイプの人だったので、不思議と安心感はありましたね。

 一緒にいる人形のクマゴローを大事にしている姿なんかには、ホロっとしたもんでしたが・・・

 

 そんな立場の桜乃さんを通じて、世知辛さを感じることもしばしば。

 でも、だからこそ、彼女のボ~ッとした図太さが、逆風に負けない様子には、

 世情に対する、ちょっとした痛快さを感じる部分もあるやもしれません。

 というか、大江さんがイイ人だよな~。

 作者・えのきづ先生の別作品もアニメ化決定してますし、こちらにも注目集まるかも?

 

 

 

『夜森の国のソラニ』1巻 (はりかも 先生)

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 夜の国に迷い込んだ、記憶をなくした少女の物語。 【試し読みあり

 “目覚めたくない人間”の住む場所。

 そこで、自分の名前さえわからぬ少女が出逢ったのは、夜の国の管理人・夜森。

 この夜森と共に暮らすことになる、ソラニと名付けられた少女を描く4コマ作品です。

 

 安直に言えば、夢の中であるはずの世界。

 しかし、そこから自分で目覚めることはなく、自然と目覚めの時をむかえるまで、

 人々は夜の国で暮らしているわけです。 目覚めないのは、心に傷を持っているから・・・

 その傷にちなんだ特徴をもっている住人達は、個性豊かで、かつ陽気。

 屑持、赤衣、王子というレギュラーメンバーの騒ぐ様子が、

 心の傷や夜の国という、陰鬱なイメージを感じさせない楽しい雰囲気を醸し出しています。

 

 言うなれば、逃避や閉じこもりという方向性で形作られているはずの世界なのですが、

 住人達にそんな様子はほとんど見られず、みんな気ままに生きているのが面白い。

 つまり、この世界は一種の安全地帯であり、癒しの空間として機能しているわけですね。

 はりかも先生が描く、美麗で絵本的な空間が、ひときわその優しさを感じさせてくれます。

 

 とはいえ、ソラニをはじめとする住人達の心の傷の問題は、

 おそらくいつか課題として目の前に提示されることになるでしょうし、

 それは目覚めの時を暗示しているわけで、そのあたりどうなってしまうのか・・・

 また他にも、魔女の存在や、なぜ夜の国に朝が来ないのか、などなど、

 気になる要素は盛りだくさんで、今後が楽しみな作品であります!

 「よつぎりポテト」さんの感想記事が、技法などについての素晴らしい内容となっています。

 

 

 

『ふたごもんじゃ』2巻 (矢直ちなみ 先生)

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 「ハートフル癒し系ふたごものがたり」 (オビ文より)

 奈乃子と香乃子は双子。

 顔はそっくりだけど、中身は正反対。

 仲良しだけど、「双子」という立場に嫌気を感じたりも。

 そんな2人を中心に、周囲の人々との日々が描かれる4コマ作品、その完結巻です。

 

 いつも通りに仲良く、だけど時折ケンカしたりする、双子の様子が描かれています。

 元気で活発な奈乃、おとなしめで気をつかうタイプの香乃。

 彼女たちの様子が可愛らしいやら、微笑ましいやら。

 また、周囲の友人・家族との関わりも楽しく、中でも田中先生と、その双子の姉・鈴さんは、

 奈乃・香乃にとっても大切な人たちで、彼らのエピソードが終盤に持ってこられたのも

 うなずける話です。

 

 あと、失言大王・大原先生のキャラクターも、なかなか面白かった。

 まさに失言ばかりの人で、無神経という言葉がお似合いな人なのだけど、

 それが逆にストレートな物言いとなって、役立つことがあったり、

 悪い人間ではないので、その真っ直ぐな人間性が爽快だったりと、

 見ていて飽きないところが、とてもよかったです。

 

 矢直先生の描く双子空間の楽しさ。

 連載が終わってしまって残念でしたが、楽しませていただきました。

 (連載時の最終回掲載号・感想

 

 

 

『強風記』 (カラスヤサトシ  先生)

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 カラスヤサトシ先生、初のフィクション作品集。

 売れない小説家の日々を描いた『強風記』

 とある盗人の生き様を描いた時代劇『HOME』、描き下ろし短編『かみなり』の3編を収録。

 人の営みを、世知辛く、寂しく、たくましく描いた作品ぞろいです。

 

 表題作『強風記』は、まんがタイムスペシャルで連載されていましたが未単行本化。

 今回、他出版社からの発売となりました。

 売文家・烏山を主人公に、同業者・白鳥や、性悪女・琴江など、

 一筋縄ではいかない登場人物たちが織り成す、日々の暮らしの物語。

 

 カラスヤサトシ先生の自画像と同じ顔をしている主人公の存在からは、

 売文家という職業と、漫画家という立場を重ねた思惑を感じずにいられません。

 向かい風となっている強風に立ち向かう、明日をも知れぬ己の身。

 情けない冴えない男である烏山は、はいずりながらも、確かに今を生きている。

 その姿に、奇妙な希望を覚えてしまうのは、私だけではないでしょう。

 

 性悪女を、それとわかっていても慕わずにはいられない男。

 葬儀で泣く妻の姿をみて、感傷を憎まずにいられなくなる作家。

 自由気ままながら、どこへ往くともわからぬ日々を生きる女。

 落ちぶれブンガク的に、どこかわびれた雰囲気をただよわせる作品。

 これは隠れた名作かもしれません。 (連載時、最終回掲載号・感想

 

 

 

『うた変。』 (杉田圭 先生)

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 超訳百人一首『うた恋い。』【異聞】。

 TVアニメ化もされていて、現在放映中の『うた恋い。』

 百人一首を題材に、歌人たちの姿を描く物語ですが、その裏話を収録したのが本作品。

 本編とはちょっと違った歌人たちを、楽しむことができます。

 

 宗貞の妹属性のヒドさやら、業平の歪んだブラコンぶりやら、女性の胸談義やら、

 『うた恋い。』での歌人たちのイメージが崩れてしまうおそれも・・・?

 とはいえ、けっこう「恋」に関するエピソードもあったりするので、

 「変」ばかりではないのは、本編ファンにとっても嬉しい所なのかもしれません。

 貞明と綏子の交換日記や、当子と道雅のお話などは、素敵な恋物語でありました。

 この2つのエピソードはグッときちゃいましたね~。

 

 まあ、本編でもそうですが、美化されているという側面は間違いなくあるのでしょう。

 ですが、それはまさに歌そのもののイメージなのですから、

 野暮なことは言わずに、素直に楽しむのも、悪くないのではないでしょうか・・・

 時代はどんどん進んでいますけど、本編の今後も、楽しみで仕方ありません!

 

 


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