ひとこと・ふたこと・時どき多言(たこと)

〈ゴマメのばーば〉の、日々訪れる想い・あれこれ

耳を澄ませば、

2015-03-06 06:41:41 | 日記
つい先日まで、北側の生け垣下に残っていた雪が消えていました。
土が柔らかくなっていて、ネコヤナギの花穂がふくふくと、薄桃色に、ふくらんでいます。
『雪ん子』という民話を一つ。
日本海沿岸の地域に多く伝承されているようです。

“ざーっと むかし”
で始まります。
  ≪山里の村に、じいさまと、ばあさまが暮らしていました。
   二人には子どもがいませんでした。
   冬のある日、雪がモッくら モッくら降り積もった朝のことです。
   じいさまは、庭の雪で、めんこい女の子をこしらえました。
   目と鼻は炭で、口には椿の花びらをつけました。
   ばあさまは、毛糸の帽子をかぶせ、赤い ちゃんちゃんこ(袖なし半纏)を女の子に
   着せたのです。

   二人が、お茶を飲んでいると、“おはようさん”と声がして、女の子が戸口に立っていました。
   それは、じいさまがこしらえた「雪の女の子」だったのです。
   じいさまと、ばあさまは、女の子を「雪ん子」と名づけ、たいそう可愛がりました。

   お正月が過ぎ、節分も過ぎ、
   やがて、桃の節句に。
   村の童たちが、
   “雪ん子 遊ぶべ”
   とやって来ました。
   雪ん子は
   “おらぁ、行ぎだぐネェ”
   と言いますが、
   “子どもは風の子だ、みんなと外で遊んでこ”
   と、ばあさまに言われて、雪ん子は外へ出て行きました。

   広場には大勢の童たちが集まっていて、焚火をしたり、餅を焙って遊んでいました。
   “雪ん子、こっちゃこ(ここに来い)、寒いから火にあたれ”
   そういって、みんなで焚火の すぐそばに連れていったのです。

   突然、『ジューン』と大きな音がして、辺りは、霧に包まれたようになったのです。
   しばらくして、辺りが見えるようになりますと、焚火は、すっかり消えてしまっていました。

   そして、空には薄桃色の淡い雲が、ふんわりと浮かんでいたのです。
   雲の中に、雪ん子が立っていました。
   雪ん子は、静かに、優しく手を振っていたのです。
   “さようなら さようなら”と。
   そして、いつのまにか、雲と一緒に、雪ん子の姿は見えなくなってしまいました。

   空は、もう、すっかり春の色になっていました≫
   “ざーっと むかしさけだ”
                                    (再話 筆者)

我が家の雪は、じんわりと土に沁み込んでいったのでしょうか。
耳を澄ませば、
薄桃色にふくらんだネコヤナギの花穂の中から、
“ここ ここ、ここですよ”
との、ささやきが、聞こえるかもしれません。
                                   〈ゴマメのばーば〉
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