雲が広がったりはしましたが穏やかな一日でした。
今朝、カッコウの声を聞きました。
どの辺りに居るものかと窓を開け、声のする方に耳を傾けました。
が、カッコウの声は、もう聞こえません。
飛んで行ってしまったものか、それとも私の空耳。
窓を閉めずに、しばらく明るい初夏の朝を眺めていました。
この時期になりますと、カッコウにまつわる民話を語りたくなる私です。
62年前に逝った母への懐かしい思いと一緒に。
≪ざっとむかし、
ある村に母ちゃんと女っ子が二人で暮らしていたんだと。
母ちゃんは毎日、朝から晩まで、せっせと働いたけど、貧乏暮らしだったとな。
夏が近づいて、村の祭りが近くなってくると、村の女っ子は みんな赤い鼻緒の
「かっこ」(下駄)を買って貰うんだって。
女っ子はな、家が貧乏なことを知ってるもんだから、
「母ちゃん、かっこ買って」
って、言い出せなかったんだと。
母ちゃんも「祭りの かっこ」のことなど、何にも言わなかったんだって。
だけど、毎晩、夜遅くまで頼まれものの縫物の仕事をしていたんだってよ。
お祭りの前の日、母ちゃんは、町へ縫いあがった着物を届けに行った帰りに、
赤い鼻緒のかっこ 買ってきてくれたんだって。
女っ子は嬉しくて 嬉しくて、すぐに履いてみたかったんだと。
そしたら、母ちゃんが、
「かっこは、夕方 下ろすもんでねぇ、明日の朝にしろ」
って言ったんだって。
でもな、女っ子は履きたくて 履きたくて我慢できなかったんだなぁ。
裏口からそっと外さ出て言って、かっこ履いてみた。
赤い鼻緒の かっこ をな。
嬉しくて、嬉しくてなぁ、
「あーした天気になーれ」
「あーした天気になーれ」
って、片方の下駄を「ポーン・ポーン」と飛ばして遊んでいたんだってよ。
やがて、辺りは暗くなってきた。
「ポーン」と飛ばした片っ方の かっこが見つからなくなってしまったと。
「おらぁの かっこ どこだ」
「おらぁの かっこ どこだ」
「おらぁの かっこ かっこ かっこ」
あっち こっち、泣きながら探しまわっているうちにな、
女っ子は鳥になってしまったんだって。
「かっこう」という鳥にな。
今でも、夏が近づいて、村の祭りがやって来る頃、かっこう鳥は
「おらぁの かっこ どこだ」
「おらぁの かっこ どこだ」
「カッコウ カッコウ カッコウ」
って、無くなってしまった赤い鼻緒のかっこ、探しに来るんだって。
ざっとむかし さけぇだ≫
(再話 筆者)
今朝、カッコウの声を聞きました。
どの辺りに居るものかと窓を開け、声のする方に耳を傾けました。
が、カッコウの声は、もう聞こえません。
飛んで行ってしまったものか、それとも私の空耳。
窓を閉めずに、しばらく明るい初夏の朝を眺めていました。
この時期になりますと、カッコウにまつわる民話を語りたくなる私です。
62年前に逝った母への懐かしい思いと一緒に。
≪ざっとむかし、
ある村に母ちゃんと女っ子が二人で暮らしていたんだと。
母ちゃんは毎日、朝から晩まで、せっせと働いたけど、貧乏暮らしだったとな。
夏が近づいて、村の祭りが近くなってくると、村の女っ子は みんな赤い鼻緒の
「かっこ」(下駄)を買って貰うんだって。
女っ子はな、家が貧乏なことを知ってるもんだから、
「母ちゃん、かっこ買って」
って、言い出せなかったんだと。
母ちゃんも「祭りの かっこ」のことなど、何にも言わなかったんだって。
だけど、毎晩、夜遅くまで頼まれものの縫物の仕事をしていたんだってよ。
お祭りの前の日、母ちゃんは、町へ縫いあがった着物を届けに行った帰りに、
赤い鼻緒のかっこ 買ってきてくれたんだって。
女っ子は嬉しくて 嬉しくて、すぐに履いてみたかったんだと。
そしたら、母ちゃんが、
「かっこは、夕方 下ろすもんでねぇ、明日の朝にしろ」
って言ったんだって。
でもな、女っ子は履きたくて 履きたくて我慢できなかったんだなぁ。
裏口からそっと外さ出て言って、かっこ履いてみた。
赤い鼻緒の かっこ をな。
嬉しくて、嬉しくてなぁ、
「あーした天気になーれ」
「あーした天気になーれ」
って、片方の下駄を「ポーン・ポーン」と飛ばして遊んでいたんだってよ。
やがて、辺りは暗くなってきた。
「ポーン」と飛ばした片っ方の かっこが見つからなくなってしまったと。
「おらぁの かっこ どこだ」
「おらぁの かっこ どこだ」
「おらぁの かっこ かっこ かっこ」
あっち こっち、泣きながら探しまわっているうちにな、
女っ子は鳥になってしまったんだって。
「かっこう」という鳥にな。
今でも、夏が近づいて、村の祭りがやって来る頃、かっこう鳥は
「おらぁの かっこ どこだ」
「おらぁの かっこ どこだ」
「カッコウ カッコウ カッコウ」
って、無くなってしまった赤い鼻緒のかっこ、探しに来るんだって。
ざっとむかし さけぇだ≫
(再話 筆者)