駒沢大学がデリバティブで大損失を被ったと先週報じられましたが、
その後の報道やコラムを見る限り、この事件の意味を
理解できている人が非常に少ないです。
また、的確に説明できる専門家が少ないのもまずい。
大学の行う資産運用の意味・目的・位置づけ、
(これらの条件次第で必然的に取れるリスクが違ってくる)
そしてアセットアロケーションをどうすべきか。
そこまで解説しないと不充分です。
まずは「最も悪い事例」から。
立正大、駒沢大の多額損失計上の背景(moneyzine)
http://moneyzine.jp/article/detail/110736/
”立正大学(東京都品川区)が20日、資産運用を目的とする金融取引で、今年
9月末時点で約148億円の評価損を抱えていることが明らかにした。また、既
に駒沢大学(東京都世田谷区)が資産運用で154億円の損失を計上したこと
が判明しており、世界金融危機は企業のみならず、大学経営をも直撃してい
る。
なぜ教育や学生サービスを基幹事業とする大学が、投機性の高い商品に手を
出していたのだろうか。これには国内の少子化の影響が少なからず関係して
いる。現在多くの大学では、学生が減ったことで授業料収入の減少が経営上
の問題となっている。授業料の引き上げを行わないかぎり収入の落ち込みに
つながるが、大学の人気にもかかわってくる授業料をそう簡単に引き上げる
わけにもいかず、そこで取り組んだのが積極的な資産運用だ。
たとえば米国では2兆5000億円の基金を有したハーバード大学が、過去10年
の平均運用利回り15%という高いパフォーマンスを見せており、またイェー
ル大学、プリンストン大学なども高収益を何年にも渡って得ている。これま
で日本の大学でも、現預金中心に運用が行われてはいたが、今後、大学経営
を支えるためには海外の例に倣い、リスクとリターンを踏まえた積極的な資
産運用に取り組む必要に迫られていたのだ。
運用自体は運用会社への外部委託が一般的だ。今回の件においても、立正大
学は国内の証券会社を通じて、駒沢大学は外資系金融機関2社との間で取引
を行っていた。大学による資産運用はほとんどが、株式だけではなく複数の
金融商品に投資する「分散投資」や長期投資の考え方に基づき行っていたは
ずだが、それでも今回のような多額の損失を計上してしまったのは、未曾有
の金融危機が勃発してしまったことに他ならない。世界中のほとんどすべて
の市場が下落しているような状況では分散投資をもってしてもリスクを軽減
することができなかったのだ。その結果、少子化による授業料の減収と金融
危機というダブルショックが今、国内大学の経営を脅かしている。”
→ 日本語の誤りもかなり目立つのですが、
そもそも「背景」の説明にすらなっていません。
学生の減少と積極的な資産運用の因果関係が
かなりいい加減に書かれていると思うのですが。
最も宜しくないのは「リスクとリターンを踏まえた」
とある部分で、もしそれが本当だったら
100億のエクスポージャーで150億の損失の出る商品など
持っている筈がありません。
駒沢大学の担当者が「リスクとリターンを理解していない」
「金融商品の中身を全く分かっていない」ことこそが
今回の事件を招いた最大の原因です。
金融マンにカモにされる大学 駒澤大と立正大は氷山の一角(diamond.jp)
http://news.goo.ne.jp/article/diamond/business/2008112604-diamond.html
”11月21日には、立正大学で148億円の含み損があることが明らかになった。
国債、地方債、社債、投資信託だけならまだしも、豪ドルを組み込んだ仕
組み債までも抱えていて、3月末時点で96億円だった評価損がやはり金融
市場の混乱や円高の影響で拡大した模様だ。しかし立正大は各種金融取引
について、「満期保有を基本としているため、最終的な損失額は確定して
いない」と言っていて、現時点では評価損を計上していない。後述するが、
こうした認識には大いに心配な点がある。
19日付の朝日新聞の記事によると、全国約650の大学・短期大学のうち、
少なくとも75大学がデリバティブ取引を行っていたという(日本私立学校
振興・共済事業団調査。2005年度の集計と古いため、数はさらに増えてい
る可能性もある)。むろん、このご時勢に資産運用で苦労していないとこ
ろはないだろうが、率直に言って、大学は金融機関(特に外資系)のいい
カモになっている。”
→ これは山崎元氏です。
氏のコラムには、誰かを批判する際には歯切れが良いのに
「どうすべきか」を明言しないという癖があります。
大学の資産運用は教育の充実のためにも必須です。
金融機関の利幅の大きいデリバティブを一律禁止させるべき、
程度のことは提言できるでしょうに。
日本の場合、専門家の層が圧倒的に薄いのも問題です。
アセットアロケーションまで踏み込まないと
解説にすらならないはず。
大学の資産運用失敗!? ~駒澤大学のデリバティブ損失と慶応大学の評価損~(為替王)
http://blog.livedoor.jp/kawase_oh/archives/51415524.html
”駒沢大学の事例は、「日本の投資家が外資系金融機関の食い物にされた」
ニュースが過去に何度もありましたが、まるでその焼き回しのようです。
企業の余資運用や年金基金の運用に、外資系金融機関が複雑な仕組み債や
デリバティブなど、ニーズに合っていないと思われるような金融商品(ま
たは投資家側に不利と思われるような粗悪な金融商品)をセールスし、担
当者もリスクを充分に理解せずに購入してポートフォリオに組み込んでし
まうというケースです。今から10年前のアジア通貨危機直後に、ヤクルト
が巨額のデリバティブ損失を抱えていることが発覚し、幹部辞任や株主訴
訟に発展しましたが、類似の事例は枚挙に暇がありません。
この場合の問題点は、担当者の勉強不足。およびチェック体制の不備。資
産運用について理論武装ができている担当者ならば、デリバティブ金融商
品を組み入れることによる、メリット・デメリット、最大許容損失などす
べて事前に考慮しますから、それができるレベルに担当者が達していなか
ったことと、チェック機能を果たす上司(理事会)も無防備だったこと、
そこを外資系金融機関に付け込まれたということ、もひとつ加えるならば、
担当者や理事が外資系のセールスマンたちのお得意の接待攻勢に負けてし
まったこと、などが原因と考えられます。(駒沢大学のケースは接待の有
無は知りませんが、かつてのヤクルトのケースでは、接待にとどまらずリ
ベートまでありました)”
結局、本当の意味で勉強になる解説は、
為替王さんたった一人だけでした。
その後の報道やコラムを見る限り、この事件の意味を
理解できている人が非常に少ないです。
また、的確に説明できる専門家が少ないのもまずい。
大学の行う資産運用の意味・目的・位置づけ、
(これらの条件次第で必然的に取れるリスクが違ってくる)
そしてアセットアロケーションをどうすべきか。
そこまで解説しないと不充分です。
まずは「最も悪い事例」から。
立正大、駒沢大の多額損失計上の背景(moneyzine)
http://moneyzine.jp/article/detail/110736/
”立正大学(東京都品川区)が20日、資産運用を目的とする金融取引で、今年
9月末時点で約148億円の評価損を抱えていることが明らかにした。また、既
に駒沢大学(東京都世田谷区)が資産運用で154億円の損失を計上したこと
が判明しており、世界金融危機は企業のみならず、大学経営をも直撃してい
る。
なぜ教育や学生サービスを基幹事業とする大学が、投機性の高い商品に手を
出していたのだろうか。これには国内の少子化の影響が少なからず関係して
いる。現在多くの大学では、学生が減ったことで授業料収入の減少が経営上
の問題となっている。授業料の引き上げを行わないかぎり収入の落ち込みに
つながるが、大学の人気にもかかわってくる授業料をそう簡単に引き上げる
わけにもいかず、そこで取り組んだのが積極的な資産運用だ。
たとえば米国では2兆5000億円の基金を有したハーバード大学が、過去10年
の平均運用利回り15%という高いパフォーマンスを見せており、またイェー
ル大学、プリンストン大学なども高収益を何年にも渡って得ている。これま
で日本の大学でも、現預金中心に運用が行われてはいたが、今後、大学経営
を支えるためには海外の例に倣い、リスクとリターンを踏まえた積極的な資
産運用に取り組む必要に迫られていたのだ。
運用自体は運用会社への外部委託が一般的だ。今回の件においても、立正大
学は国内の証券会社を通じて、駒沢大学は外資系金融機関2社との間で取引
を行っていた。大学による資産運用はほとんどが、株式だけではなく複数の
金融商品に投資する「分散投資」や長期投資の考え方に基づき行っていたは
ずだが、それでも今回のような多額の損失を計上してしまったのは、未曾有
の金融危機が勃発してしまったことに他ならない。世界中のほとんどすべて
の市場が下落しているような状況では分散投資をもってしてもリスクを軽減
することができなかったのだ。その結果、少子化による授業料の減収と金融
危機というダブルショックが今、国内大学の経営を脅かしている。”
→ 日本語の誤りもかなり目立つのですが、
そもそも「背景」の説明にすらなっていません。
学生の減少と積極的な資産運用の因果関係が
かなりいい加減に書かれていると思うのですが。
最も宜しくないのは「リスクとリターンを踏まえた」
とある部分で、もしそれが本当だったら
100億のエクスポージャーで150億の損失の出る商品など
持っている筈がありません。
駒沢大学の担当者が「リスクとリターンを理解していない」
「金融商品の中身を全く分かっていない」ことこそが
今回の事件を招いた最大の原因です。
金融マンにカモにされる大学 駒澤大と立正大は氷山の一角(diamond.jp)
http://news.goo.ne.jp/article/diamond/business/2008112604-diamond.html
”11月21日には、立正大学で148億円の含み損があることが明らかになった。
国債、地方債、社債、投資信託だけならまだしも、豪ドルを組み込んだ仕
組み債までも抱えていて、3月末時点で96億円だった評価損がやはり金融
市場の混乱や円高の影響で拡大した模様だ。しかし立正大は各種金融取引
について、「満期保有を基本としているため、最終的な損失額は確定して
いない」と言っていて、現時点では評価損を計上していない。後述するが、
こうした認識には大いに心配な点がある。
19日付の朝日新聞の記事によると、全国約650の大学・短期大学のうち、
少なくとも75大学がデリバティブ取引を行っていたという(日本私立学校
振興・共済事業団調査。2005年度の集計と古いため、数はさらに増えてい
る可能性もある)。むろん、このご時勢に資産運用で苦労していないとこ
ろはないだろうが、率直に言って、大学は金融機関(特に外資系)のいい
カモになっている。”
→ これは山崎元氏です。
氏のコラムには、誰かを批判する際には歯切れが良いのに
「どうすべきか」を明言しないという癖があります。
大学の資産運用は教育の充実のためにも必須です。
金融機関の利幅の大きいデリバティブを一律禁止させるべき、
程度のことは提言できるでしょうに。
日本の場合、専門家の層が圧倒的に薄いのも問題です。
アセットアロケーションまで踏み込まないと
解説にすらならないはず。
大学の資産運用失敗!? ~駒澤大学のデリバティブ損失と慶応大学の評価損~(為替王)
http://blog.livedoor.jp/kawase_oh/archives/51415524.html
”駒沢大学の事例は、「日本の投資家が外資系金融機関の食い物にされた」
ニュースが過去に何度もありましたが、まるでその焼き回しのようです。
企業の余資運用や年金基金の運用に、外資系金融機関が複雑な仕組み債や
デリバティブなど、ニーズに合っていないと思われるような金融商品(ま
たは投資家側に不利と思われるような粗悪な金融商品)をセールスし、担
当者もリスクを充分に理解せずに購入してポートフォリオに組み込んでし
まうというケースです。今から10年前のアジア通貨危機直後に、ヤクルト
が巨額のデリバティブ損失を抱えていることが発覚し、幹部辞任や株主訴
訟に発展しましたが、類似の事例は枚挙に暇がありません。
この場合の問題点は、担当者の勉強不足。およびチェック体制の不備。資
産運用について理論武装ができている担当者ならば、デリバティブ金融商
品を組み入れることによる、メリット・デメリット、最大許容損失などす
べて事前に考慮しますから、それができるレベルに担当者が達していなか
ったことと、チェック機能を果たす上司(理事会)も無防備だったこと、
そこを外資系金融機関に付け込まれたということ、もひとつ加えるならば、
担当者や理事が外資系のセールスマンたちのお得意の接待攻勢に負けてし
まったこと、などが原因と考えられます。(駒沢大学のケースは接待の有
無は知りませんが、かつてのヤクルトのケースでは、接待にとどまらずリ
ベートまでありました)”
結局、本当の意味で勉強になる解説は、
為替王さんたった一人だけでした。