今週の『週刊エコノミスト』の特集「人口と世界経済」は
今年最も優れた内容だったと言って良い。
唯一、当ウェブログが先週書いたように、
「ドイツよりも日本にとって参考になるスウェーデンが出ているかどうか」
だけが残念だった。スウェーデンと比較すれば日本経済の弱点が明瞭に分かるのだが。
(今やアメリカ経済を上回るスウェーデンの卓越性、今後の特集に期待したい)
メイン特集の中で最も優れた記事として、
36頁「少子化でも労働力増で成長できる」が一推しである。
ドイツは大して成長率が高い国ではないが、日本よりはましで、
その理由は労働投入の増加、特に移民受け入れと積極的労働市場政策、女性就業率向上であるようだ。
(出生率が高く、育児関連現物給付が充実しているスウェーデン経済はもっと優秀である)
すぐ隣の熊谷徹氏のコラムも秀逸だ。安倍政権の「働き方改革」のインチキと口だけが一目で分かる。
日本より21%短い労働時間、20%以上高い一人当たりGDPの秘密は
罰金を課すなど労働規制の厳しさ、労働監督局の抜き打ち調査、悪質企業名公表、
残業代の高さ、連邦休暇法。次元の低い安倍政権と大違いだ。
(因に、「閉店法」も日本との違いである)
他にも、32頁「ルイスの転換点を超え著しい成長低下」(中国経済分析)、
88頁「高齢化・人口減少で生産性は下がる」(加藤久和教授による)、
92頁「イノベーションが起こらなければ立ち行かなくなる」と喝破する小峰隆夫教授、
(根拠なきイノベーション信仰にすがる吉川教授より遥かに説得力がある)
今週のエコノミスト特集は非常に素晴らしかった。
おまけにハインゾーンのユース・バルジも紹介されていて、
「移民は暴力の輸入」「教育は不平等を生む」
「ドイツ移民の第二世代は親世代より学力が落ちている」
という思わず考え込まされる指摘が多数ある。
残念だったのは、日本総研・瀧口氏による「バイオマス発電バブルが来る」だ。
バイオマスは国産資源に限界があり、コージェネにしないと意味がないだけでなく、
エネルギー効率が大幅に低下することへの言及が必要である。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊ダイヤモンド』のネスレ特集は非常に良かった。
企業人や経営層にとっては「保存版」である。
日本企業との「経営力」の違いがこれほどはっきり出るのは珍しいだろう。
何しろ「水」だけで1兆円の売上である。
巧みなM&Aによるブランド力の向上と世界中で進める現地化。
事業ポートフォリオ分析ツールも素晴らしい。
停滞する日本経済においても成功を収め、
給料でも日本企業にも勝つという「完勝」ぶりだ。
巻末のユニ・チャームの伸び悩みと比較数すると、
ネスレの優秀さは一層明確になる。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊東洋経済』の経済特集は完全に期待外れだった。
雑学を集めたような印象である。
結局、取材であれこれ情報を集めただけでは鋭さは生まれないという典型例のような内容だ。
経済学者やエコノミストの献策が全て期待外れに終わったこと、
リフレ派の言動は国民を欺く誇大広告だったこと、
アベノミクスは口だけで大した成果を上げていないこと、
こうした歴然たる事実を明記すべきではなかったのか。
佐藤優氏の連載コラムだけは非常に良かった。
外務省で「サンカク官僚(義理を欠き、人情を欠き、平気で恥を欠く)」が増え、
今の次官を見て「俺にもチャンスが」と狙う者が続出しているとか。
佐藤氏によれば、まともな北方領土交渉の戦略が立てられず
首相が直接鈴木宗男氏に会って助言を受けるなどという事態になっていると言う。
(選挙で権力にしがみつくため北方領土交渉を利用する首相の発想がそもそも間違っているのだが)
尚、佐藤氏は豊洲移転問題について
「意思決定の不透明さを追及するうちに何か大きなスキャンダルが出てくる可能性がある」
と書いているが、全く同感である。恐らく自民党議員に関係する不祥事が発覚する可能性が高い。
◇ ◇ ◇ ◇
次週はダイヤモンド必見、配偶者控除・マイナンバー・ふるさと納税と注目情報が勢揃い。
▽ 矢張り節税の王道は法人化だった
▽ ちょっと焦点がボケた東洋経済、「スマホは脳を壊す」に注目
▽ 「「よいデフレ」だった90年代前半」が必読、リフレ派の主張がいかにお粗末か分かる
タイムリーな韓国財界のレポートも見ておきたい。
今年最も優れた内容だったと言って良い。
唯一、当ウェブログが先週書いたように、
「ドイツよりも日本にとって参考になるスウェーデンが出ているかどうか」
だけが残念だった。スウェーデンと比較すれば日本経済の弱点が明瞭に分かるのだが。
(今やアメリカ経済を上回るスウェーデンの卓越性、今後の特集に期待したい)
メイン特集の中で最も優れた記事として、
36頁「少子化でも労働力増で成長できる」が一推しである。
ドイツは大して成長率が高い国ではないが、日本よりはましで、
その理由は労働投入の増加、特に移民受け入れと積極的労働市場政策、女性就業率向上であるようだ。
(出生率が高く、育児関連現物給付が充実しているスウェーデン経済はもっと優秀である)
すぐ隣の熊谷徹氏のコラムも秀逸だ。安倍政権の「働き方改革」のインチキと口だけが一目で分かる。
日本より21%短い労働時間、20%以上高い一人当たりGDPの秘密は
罰金を課すなど労働規制の厳しさ、労働監督局の抜き打ち調査、悪質企業名公表、
残業代の高さ、連邦休暇法。次元の低い安倍政権と大違いだ。
(因に、「閉店法」も日本との違いである)
他にも、32頁「ルイスの転換点を超え著しい成長低下」(中国経済分析)、
88頁「高齢化・人口減少で生産性は下がる」(加藤久和教授による)、
92頁「イノベーションが起こらなければ立ち行かなくなる」と喝破する小峰隆夫教授、
(根拠なきイノベーション信仰にすがる吉川教授より遥かに説得力がある)
今週のエコノミスト特集は非常に素晴らしかった。
おまけにハインゾーンのユース・バルジも紹介されていて、
「移民は暴力の輸入」「教育は不平等を生む」
「ドイツ移民の第二世代は親世代より学力が落ちている」
という思わず考え込まされる指摘が多数ある。
『週刊エコノミスト』2016年10月04日号 | |
残念だったのは、日本総研・瀧口氏による「バイオマス発電バブルが来る」だ。
バイオマスは国産資源に限界があり、コージェネにしないと意味がないだけでなく、
エネルギー効率が大幅に低下することへの言及が必要である。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊ダイヤモンド』のネスレ特集は非常に良かった。
企業人や経営層にとっては「保存版」である。
日本企業との「経営力」の違いがこれほどはっきり出るのは珍しいだろう。
何しろ「水」だけで1兆円の売上である。
巧みなM&Aによるブランド力の向上と世界中で進める現地化。
事業ポートフォリオ分析ツールも素晴らしい。
停滞する日本経済においても成功を収め、
給料でも日本企業にも勝つという「完勝」ぶりだ。
『週刊ダイヤモンド』2016年 10/1号 (凄いネスレ) | |
巻末のユニ・チャームの伸び悩みと比較数すると、
ネスレの優秀さは一層明確になる。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊東洋経済』の経済特集は完全に期待外れだった。
雑学を集めたような印象である。
結局、取材であれこれ情報を集めただけでは鋭さは生まれないという典型例のような内容だ。
経済学者やエコノミストの献策が全て期待外れに終わったこと、
リフレ派の言動は国民を欺く誇大広告だったこと、
アベノミクスは口だけで大した成果を上げていないこと、
こうした歴然たる事実を明記すべきではなかったのか。
『週刊東洋経済』2016年10/1号 (日本経済の今を「総括検証」 経済の新常識) | |
佐藤優氏の連載コラムだけは非常に良かった。
外務省で「サンカク官僚(義理を欠き、人情を欠き、平気で恥を欠く)」が増え、
今の次官を見て「俺にもチャンスが」と狙う者が続出しているとか。
佐藤氏によれば、まともな北方領土交渉の戦略が立てられず
首相が直接鈴木宗男氏に会って助言を受けるなどという事態になっていると言う。
(選挙で権力にしがみつくため北方領土交渉を利用する首相の発想がそもそも間違っているのだが)
尚、佐藤氏は豊洲移転問題について
「意思決定の不透明さを追及するうちに何か大きなスキャンダルが出てくる可能性がある」
と書いているが、全く同感である。恐らく自民党議員に関係する不祥事が発覚する可能性が高い。
◇ ◇ ◇ ◇
次週はダイヤモンド必見、配偶者控除・マイナンバー・ふるさと納税と注目情報が勢揃い。
▽ 矢張り節税の王道は法人化だった
『週刊ダイヤモンド』2016年 10/8号 (国税は見ている 税務署は知っている) | |
▽ ちょっと焦点がボケた東洋経済、「スマホは脳を壊す」に注目
『週刊東洋経済』2016年10/8号 (最新科学でわかった! 「脳」入門) | |
▽ 「「よいデフレ」だった90年代前半」が必読、リフレ派の主張がいかにお粗末か分かる
『週刊エコノミスト』2016年10月11日号 | |
タイムリーな韓国財界のレポートも見ておきたい。