今週の『週刊エコノミスト』は渋い「低金利」特集、
内容はかなりレベルが高く、必読の記事が幾つもある。
JPモルガンの足立正道氏が「7月にも追加緩和か」と題して
経済低迷で日銀が追加緩和に追い込まれると予想するP34も見逃せないが、
(足立氏は「追加緩和をしなければ日銀が円高を許容したと市場が受け止めるリスク」を警告している)
何と言っても注目はP50である。
東京海上AMの平山賢一氏が金利2%(10年債)を歴史的な低金利とし、
過去にも存在した2%時代の後には、戦争やインフレ等によって
「国家の信用力が後退している場合が多い」と指摘している。
これは言う迄もなく、暗い日本の将来を予言する重大な警告である。
P100ではみずほ総研の鈴木将寛氏による、
消費税の軽減税率について素晴らしい分析があり
このエントリーのサブタイトルはこちらから取った。
経済リテラシーのある者なら至極当然の話であるが、
消費税の軽減税率は明白な高所得者優遇である。
既に利権化している配偶者控除と本質は何ら変わりない。
たとえ食品ゼロ税率でも逆進性は殆ど緩和されず、「額」で見れば高所得層の利得が最も大きい。
低所得層を支援する劇的な効果があるのは「給付付き税額控除」である。
一目瞭然の図表があるので参考にされたい。
これほど明確な効果があるのに給付付き税額控除ではなく軽減税率を求める者は、
単に頭が悪いか、それともずる賢い「偽装弱者」か、働きたくない怠け者か。
或いは所得・資産を捕捉されたくない悪者であると言えよう。
下のような実に馬鹿馬鹿しい図式である。
軽減税率を求める高所得層 → 自分の利得が大きいので黙ってほくそ笑んでいる
軽減税率を求める中所得層 → 目先の損得しか見えず、高所得層の利得増に協力してしまう
軽減税率を求める低所得層 → 目先の小銭に騙されて格差拡大策に賛成してしまう
ただ、日本の消費税は所詮、高齢者三経費へのバラ撒きで蕩尽されるので
少しでも税負担を軽くしたいという心情は理解できなくはない。
(そうした視野狭窄が実は高所得層の可処分所得を更に増やし、低所得層を苦しめるのだが)
最後になるが、富国生命の市岡繁男氏の連載は今回も良かった。
日本経済や世界経済のマクロ分析からは離れて
あのエマニュエル・トッド氏の卓越した先見性を知るのにうってつけだ。
かつての崩壊前のソ連の域にまでは達していないが、
氏がアメリカの乳児死亡率に懸念を示しているのに注意したい。
猶、直近の懸念はサウジアラビアだそうだ。
◇ ◇ ◇ ◇
今週の『週刊東洋経済』は期待していたが肩すかしだ。
これで満足する読者は素直過ぎて騙され易い「B層」であろう。
そもそもピケティは日本経済について、人口減少が経済格差拡大につながること、
アベノミクスは格差拡大をもたらすだけで終わる可能性があるとしているのだから、
この東洋経済の特集はピケティの主張を矮小化して「ネタ」にしている訳である。
従って、処方箋は「人口減少を緩和させる政策が必要」、そして
「実質所得を減少させるアベノミクスではなく真の所得増を」となる筈だ。
〝サバイバル術〟などと馬鹿馬鹿しい特集になる訳がない。
ピケティを「利用」して雑誌を売ろうとしただけであろう。
(実際、この寄せ集めインタビューを読んで「サバイバル」できる者など殆どいない筈だ)
あらゆる人に有効なのは匿名FPの言う「長く働く」ことだけで、
それにしても今の「次元の低い」雇用政策のままではおぼつかない。
ただP78は評価できる。「90%が沈む」日本の沈鬱な現状が分かる。
(時期から見るとこれは明らかに人口動態劣化の悪影響であると思われる)
飯田泰之氏は日本の格差は6割の中高所得層と4割の下層の間にあると
推測しているが、世論を見ていると確かにそうかもしれない。
この特集で最も有害なのは「成長不要」論者で、
本気でそう思っているなら積み立てもせずに自分が受け取っている公費は全て返却し、
子孫にツケ廻しする忌まわしいバラ撒き(社会保障給付の半分近くが既にそうである)を即刻やめるべきだ。
猶、特集で著名人があれこれ登場している中では渡邉正裕氏の主張が興味深いが、
氏は実際に留学に行っていないだけに「留学幻想」が強過ぎる。
留学に行っても碌でなしは碌でなしという、冷厳な現実への認識が足りない。
(寧ろ享楽的な海外の文化に毒されて益々駄目になるケースも実際にかなりある)
P120「私立大学の授業料、なぜ右肩上がりなのか」が個人的には興味深かった。
山内太地氏によれば、日本の私立大学は受験料収入の減少により
授業料を引き上げざるを得なくなっているとか。
何しろ売り込みのためか極端な言説が非常に多い氏だけに
鵜呑みにはできず検証は必要であるものの
少子化が大学に与えている悪影響は、長期間に渡って深甚である。
◇ ◇ ◇ ◇
『ダイヤモンド』エクセル特集は実用性の観点で見たが
職種や社内のポジションを具体化した事例を出した方が良かっただろう。
ややお得感が不足しているような気がする。
メイン特集よりも巻頭のクローズアップに出ている、
シニア客層が増えたファミレス市場の変化の方が興味深い。
(これは明らかに、高齢層に偏った日本の社会保障の歪みの帰結である)
食の質という観点では全く評価できない分野であるのに、カネと暇があるからだろう。
最も評価できるのは日本マクドナルドを取り上げた「企業レポート」である。
矢張り「クラッシャー」と称される原田体制の時期にマクドナルドは病み始めており、
実質的なピークは2010年だったと指摘されている。
原田氏に散々苦労させられた関係者の方々は納得できるところであろう。
◇ ◇ ◇ ◇
次週も東洋経済に注目、特に「5人に1人が貧困」とされているドイツ構造改革の記事に期待。
▽ 東洋経済は海外特集だと質が良くても売れない傾向があるが。。(高齢読者層のせい?)
▽ 「空き家1000万」と衝撃的な数値が出ているダイヤモンドも見ておきたい
▽ エコノミストは歴史特集、いま焦点の米利上げも扱っている
エコノミスト・レポートでは、あのイーロン・マスクが取り上げられている!
内容はかなりレベルが高く、必読の記事が幾つもある。
JPモルガンの足立正道氏が「7月にも追加緩和か」と題して
経済低迷で日銀が追加緩和に追い込まれると予想するP34も見逃せないが、
(足立氏は「追加緩和をしなければ日銀が円高を許容したと市場が受け止めるリスク」を警告している)
何と言っても注目はP50である。
東京海上AMの平山賢一氏が金利2%(10年債)を歴史的な低金利とし、
過去にも存在した2%時代の後には、戦争やインフレ等によって
「国家の信用力が後退している場合が多い」と指摘している。
これは言う迄もなく、暗い日本の将来を予言する重大な警告である。
『エコノミスト』2015年 3/3号 | |
P100ではみずほ総研の鈴木将寛氏による、
消費税の軽減税率について素晴らしい分析があり
このエントリーのサブタイトルはこちらから取った。
経済リテラシーのある者なら至極当然の話であるが、
消費税の軽減税率は明白な高所得者優遇である。
既に利権化している配偶者控除と本質は何ら変わりない。
たとえ食品ゼロ税率でも逆進性は殆ど緩和されず、「額」で見れば高所得層の利得が最も大きい。
低所得層を支援する劇的な効果があるのは「給付付き税額控除」である。
一目瞭然の図表があるので参考にされたい。
これほど明確な効果があるのに給付付き税額控除ではなく軽減税率を求める者は、
単に頭が悪いか、それともずる賢い「偽装弱者」か、働きたくない怠け者か。
或いは所得・資産を捕捉されたくない悪者であると言えよう。
下のような実に馬鹿馬鹿しい図式である。
軽減税率を求める高所得層 → 自分の利得が大きいので黙ってほくそ笑んでいる
軽減税率を求める中所得層 → 目先の損得しか見えず、高所得層の利得増に協力してしまう
軽減税率を求める低所得層 → 目先の小銭に騙されて格差拡大策に賛成してしまう
ただ、日本の消費税は所詮、高齢者三経費へのバラ撒きで蕩尽されるので
少しでも税負担を軽くしたいという心情は理解できなくはない。
(そうした視野狭窄が実は高所得層の可処分所得を更に増やし、低所得層を苦しめるのだが)
最後になるが、富国生命の市岡繁男氏の連載は今回も良かった。
日本経済や世界経済のマクロ分析からは離れて
あのエマニュエル・トッド氏の卓越した先見性を知るのにうってつけだ。
かつての崩壊前のソ連の域にまでは達していないが、
氏がアメリカの乳児死亡率に懸念を示しているのに注意したい。
猶、直近の懸念はサウジアラビアだそうだ。
◇ ◇ ◇ ◇
今週の『週刊東洋経済』は期待していたが肩すかしだ。
これで満足する読者は素直過ぎて騙され易い「B層」であろう。
そもそもピケティは日本経済について、人口減少が経済格差拡大につながること、
アベノミクスは格差拡大をもたらすだけで終わる可能性があるとしているのだから、
この東洋経済の特集はピケティの主張を矮小化して「ネタ」にしている訳である。
従って、処方箋は「人口減少を緩和させる政策が必要」、そして
「実質所得を減少させるアベノミクスではなく真の所得増を」となる筈だ。
〝サバイバル術〟などと馬鹿馬鹿しい特集になる訳がない。
ピケティを「利用」して雑誌を売ろうとしただけであろう。
(実際、この寄せ集めインタビューを読んで「サバイバル」できる者など殆どいない筈だ)
あらゆる人に有効なのは匿名FPの言う「長く働く」ことだけで、
それにしても今の「次元の低い」雇用政策のままではおぼつかない。
ただP78は評価できる。「90%が沈む」日本の沈鬱な現状が分かる。
(時期から見るとこれは明らかに人口動態劣化の悪影響であると思われる)
飯田泰之氏は日本の格差は6割の中高所得層と4割の下層の間にあると
推測しているが、世論を見ていると確かにそうかもしれない。
この特集で最も有害なのは「成長不要」論者で、
本気でそう思っているなら積み立てもせずに自分が受け取っている公費は全て返却し、
子孫にツケ廻しする忌まわしいバラ撒き(社会保障給付の半分近くが既にそうである)を即刻やめるべきだ。
猶、特集で著名人があれこれ登場している中では渡邉正裕氏の主張が興味深いが、
氏は実際に留学に行っていないだけに「留学幻想」が強過ぎる。
留学に行っても碌でなしは碌でなしという、冷厳な現実への認識が足りない。
(寧ろ享楽的な海外の文化に毒されて益々駄目になるケースも実際にかなりある)
『週刊東洋経済』2015年2/28号ピケティの格差時代サバイバル術/低成長低金利時代の生き方/スカイマーク創業者 澤田秀雄エイチ・アイ・エス会長激白/[核心リポート]大塚家具 身内で泥試合/[この人に聞く]森下一喜ガンホー・オンライン・エンターテイメント社長 | |
P120「私立大学の授業料、なぜ右肩上がりなのか」が個人的には興味深かった。
山内太地氏によれば、日本の私立大学は受験料収入の減少により
授業料を引き上げざるを得なくなっているとか。
何しろ売り込みのためか極端な言説が非常に多い氏だけに
鵜呑みにはできず検証は必要であるものの
少子化が大学に与えている悪影響は、長期間に渡って深甚である。
◇ ◇ ◇ ◇
『ダイヤモンド』エクセル特集は実用性の観点で見たが
職種や社内のポジションを具体化した事例を出した方が良かっただろう。
ややお得感が不足しているような気がする。
メイン特集よりも巻頭のクローズアップに出ている、
シニア客層が増えたファミレス市場の変化の方が興味深い。
(これは明らかに、高齢層に偏った日本の社会保障の歪みの帰結である)
食の質という観点では全く評価できない分野であるのに、カネと暇があるからだろう。
『週刊ダイヤモンド』2015年2/28号特集1 エクセルで数字力を鍛える! 初心者から達人まで ステップ別 極意を完全図解/特集2 ロボット界のiPhoneになれるのか?ペッパー大増殖計画/レポート 日本マクドナルドホールディングス 売上げ急減で現場大混乱 外食王者の凋落 | |
最も評価できるのは日本マクドナルドを取り上げた「企業レポート」である。
矢張り「クラッシャー」と称される原田体制の時期にマクドナルドは病み始めており、
実質的なピークは2010年だったと指摘されている。
原田氏に散々苦労させられた関係者の方々は納得できるところであろう。
◇ ◇ ◇ ◇
次週も東洋経済に注目、特に「5人に1人が貧困」とされているドイツ構造改革の記事に期待。
▽ 東洋経済は海外特集だと質が良くても売れない傾向があるが。。(高齢読者層のせい?)
『週刊東洋経済』2015年3/7号欧州 完全保存版/フランス現地報告/[図解]一目でわかるEU/[核心リポート]大塚会長が宣戦布告/[ひと烈風録]柳沢幸雄 開成中学校・高等学校校長 東大名誉教授 | |
▽ 「空き家1000万」と衝撃的な数値が出ているダイヤモンドも見ておきたい
『週刊ダイヤモンド』2015年3/07号 | |
▽ エコノミストは歴史特集、いま焦点の米利上げも扱っている
『週刊エコノミスト』2015年 3/10号 | |
エコノミスト・レポートでは、あのイーロン・マスクが取り上げられている!