今週の『週刊エコノミスト』の特集「ハウジングプア」はいまひと息だろう。
人口減少や空き家、五輪後の「廃墟化」が噂されるタワマン等の方が
特集としては良かったのではなかろうか。
しかし、大和総研の廣野洋太氏による「生活費を切り詰め貯蓄に励む日本人」(46頁)は鋭い。
こちらはかなりのお薦めである。全世代で貯蓄志向が強まっており、
口だけアベノミクスがショボい失策でしかないことがはっきりと分かる。
ただ、著者は「企業外での人的資本投資」などを提言しているが、どれも非力でかつ無理がある。
①北欧並みの女性就労促進(配偶者控除は廃止して現物給付に移転)
②出生率引き上げ策(富裕高齢層へのバラ撒きを全廃して育児支援に移転)
③投資庁を設立して対内投資促進
④欧州並みの文化財保護で観光振興と高齢者雇用増
の内、複数を実行しないと現下の消費低迷は打破できない。
日本より合理的な海外の政策に学ぶべきであろう。
エントリーのサブタイトルで取り上げたのはエコノミストリポート、
噂の「カリフォルニア州独立」(キャレグジット)である。
昨年7月の世論調査ではカリフォルニア州住民の20%が賛成だったのが、
僅か半年でキャレグジット賛成派が倍増して41%にも達している。
このトレンドが維持されれば、今年夏には賛成が6割を超えることになる。
カリフォルニア州のGDPは英や仏の水準と同程度で、
2015年の段階では州民の27%が外国生まれとのことだから、
住民投票で「独立」の意志が示される可能性が急速に高まっていると言える。
合衆国憲法では、住民投票だけではなく
全米38州以上の知事の賛同と連邦議会での3分の2以上の賛成が必要とのころなので
キャレグジットは容易に実現するものではないのだが、
少なくとも住民投票で「独立」が選択され全世界に激震が走る可能性は急速に高まっている。
(加州の経済規模や人材、産業基盤を考えるとブレグジットより深刻かもしれない)
◇ ◇ ◇ ◇
『ダイヤモンド』のアート特集はかなり力が入っている。
美術作品のインデックスを見るとバブルかどうか判然としないが、
編集部の見解とは違い「高値波瀾」に見えるのだが。。。
メイン特集はどちらかと言えば後半の方が興味深い。
「「雑」芸員」と揶揄する声もある日本の学芸員の現状(134頁)、
結局は横並びで死屍累々の地方美術館の現状(146頁)。
数だけは多い日本の美術館のお寒い現状が分かる。
確かに金沢21世紀など成功例はあるが
あっと言う間に模倣ばかり増えるという不吉な展開である。
蓑豊氏のインタビューを見ると矢張り「道は遠い」という印象。
そろそろ蓑氏の後継者のような人材が現れて新風を吹き込んでもいい頃なのだが。
特集では、近年盛り上がっている芸術祭についても
美術館のような「乱立」状況に陥りつつあるとの証言が出ている。
……ややジャンルは違うが、水族館やアミューズメントパークとともに
新しい動きが見られる芸術祭についても今後のレポートを期待したい。
エコノミストの西濱氏がアトキンソン氏の新刊を論評しているが、
これだけだとこの著書の主張を曲解してしまうと思う。
アトキンソン氏はもっと辛辣に日本経済と政策を批判しており、
この論評は読まず実際に本に目を通した方が良いのではないだろうか。
▽ 女性と経営者を甘やかすのが元凶であると厳しく指弾している
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊東洋経済』のアニメ特集はそれなりに負の側面も書いており、
バランスが取れていた。国内では産業として非常に厳しい状況にあり、
(当ウェブログは国内でのアニメ人気は「日本の貧困化」の裏返しと見ている)
海外に売り込むしか活路がない現状だと分かる。
特に、「せめて生活保護並み」を求める労働者の苦境は
前々から言われていたことであるが全く改善の兆しがない。
116頁の方が遥かに重要であろう。先進国主要中銀のなかで
日銀だけが二次曲線的にバランスシートを膨張させている様子が分かる。
それでいて成長率も実質賃金上昇率も最低クラスなのだから、
安倍政権も黒田日銀も完全に「終わっている」のである。
◇ ◇ ◇ ◇
次週の注目もダイヤモンド、得意とする給料特集である。
▽ 「この10年の伸び率は最低 アジアで見劣りする日本」との指摘は完璧に正しい
▽ 「デフレ脱却の道筋が見えた」などと称している、後世で失笑必至の東洋経済特集
▽ エコノミストは、渋過ぎるメイン特集より早川英男氏に注目したい
レポート「北朝鮮 崩壊のウソ」は正しいと思うが、米中が密かに手を握ればその限りではない。
人口減少や空き家、五輪後の「廃墟化」が噂されるタワマン等の方が
特集としては良かったのではなかろうか。
しかし、大和総研の廣野洋太氏による「生活費を切り詰め貯蓄に励む日本人」(46頁)は鋭い。
こちらはかなりのお薦めである。全世代で貯蓄志向が強まっており、
口だけアベノミクスがショボい失策でしかないことがはっきりと分かる。
ただ、著者は「企業外での人的資本投資」などを提言しているが、どれも非力でかつ無理がある。
①北欧並みの女性就労促進(配偶者控除は廃止して現物給付に移転)
②出生率引き上げ策(富裕高齢層へのバラ撒きを全廃して育児支援に移転)
③投資庁を設立して対内投資促進
④欧州並みの文化財保護で観光振興と高齢者雇用増
の内、複数を実行しないと現下の消費低迷は打破できない。
日本より合理的な海外の政策に学ぶべきであろう。
『週刊エコノミスト』2017年04月04日号 | |
エントリーのサブタイトルで取り上げたのはエコノミストリポート、
噂の「カリフォルニア州独立」(キャレグジット)である。
昨年7月の世論調査ではカリフォルニア州住民の20%が賛成だったのが、
僅か半年でキャレグジット賛成派が倍増して41%にも達している。
このトレンドが維持されれば、今年夏には賛成が6割を超えることになる。
カリフォルニア州のGDPは英や仏の水準と同程度で、
2015年の段階では州民の27%が外国生まれとのことだから、
住民投票で「独立」の意志が示される可能性が急速に高まっていると言える。
合衆国憲法では、住民投票だけではなく
全米38州以上の知事の賛同と連邦議会での3分の2以上の賛成が必要とのころなので
キャレグジットは容易に実現するものではないのだが、
少なくとも住民投票で「独立」が選択され全世界に激震が走る可能性は急速に高まっている。
(加州の経済規模や人材、産業基盤を考えるとブレグジットより深刻かもしれない)
◇ ◇ ◇ ◇
『ダイヤモンド』のアート特集はかなり力が入っている。
美術作品のインデックスを見るとバブルかどうか判然としないが、
編集部の見解とは違い「高値波瀾」に見えるのだが。。。
メイン特集はどちらかと言えば後半の方が興味深い。
「「雑」芸員」と揶揄する声もある日本の学芸員の現状(134頁)、
結局は横並びで死屍累々の地方美術館の現状(146頁)。
数だけは多い日本の美術館のお寒い現状が分かる。
確かに金沢21世紀など成功例はあるが
あっと言う間に模倣ばかり増えるという不吉な展開である。
蓑豊氏のインタビューを見ると矢張り「道は遠い」という印象。
そろそろ蓑氏の後継者のような人材が現れて新風を吹き込んでもいい頃なのだが。
特集では、近年盛り上がっている芸術祭についても
美術館のような「乱立」状況に陥りつつあるとの証言が出ている。
……ややジャンルは違うが、水族館やアミューズメントパークとともに
新しい動きが見られる芸術祭についても今後のレポートを期待したい。
『週刊ダイヤモンド』2017年 4/1号 (美術とおカネ 全解剖) | |
エコノミストの西濱氏がアトキンソン氏の新刊を論評しているが、
これだけだとこの著書の主張を曲解してしまうと思う。
アトキンソン氏はもっと辛辣に日本経済と政策を批判しており、
この論評は読まず実際に本に目を通した方が良いのではないだろうか。
▽ 女性と経営者を甘やかすのが元凶であると厳しく指弾している
『デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論』(デービッド・アトキンソン,東洋経済新報社) | |
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊東洋経済』のアニメ特集はそれなりに負の側面も書いており、
バランスが取れていた。国内では産業として非常に厳しい状況にあり、
(当ウェブログは国内でのアニメ人気は「日本の貧困化」の裏返しと見ている)
海外に売り込むしか活路がない現状だと分かる。
特に、「せめて生活保護並み」を求める労働者の苦境は
前々から言われていたことであるが全く改善の兆しがない。
『週刊東洋経済』2017年4/1号 | |
116頁の方が遥かに重要であろう。先進国主要中銀のなかで
日銀だけが二次曲線的にバランスシートを膨張させている様子が分かる。
それでいて成長率も実質賃金上昇率も最低クラスなのだから、
安倍政権も黒田日銀も完全に「終わっている」のである。
◇ ◇ ◇ ◇
次週の注目もダイヤモンド、得意とする給料特集である。
▽ 「この10年の伸び率は最低 アジアで見劣りする日本」との指摘は完璧に正しい
『週刊ダイヤモンド』2017年 4/8号 (知らないと損する給料の秘密) | |
▽ 「デフレ脱却の道筋が見えた」などと称している、後世で失笑必至の東洋経済特集
『週刊東洋経済』2017年4/8号 (親子で学ぶ 経済入門) | |
▽ エコノミストは、渋過ぎるメイン特集より早川英男氏に注目したい
『週刊エコノミスト』2017年04月11日号 | |
レポート「北朝鮮 崩壊のウソ」は正しいと思うが、米中が密かに手を握ればその限りではない。