凄い男が登場した。
アメリカはこれだから侮れないのだ。
多くの人が口を極めて賞賛するこの人物は、
一体どのようなバックグラウンドを持ち
どのような精神の持ち主なのか。
長らく不思議に思っていたが、
報道を見ていて初めて理解できた。
この大統領であれば、アメリカを変えることができるだろう。
また、そう人々に確信させ得る傑出した人物である。
偉大なリーダーには、国を変えるだけの力がある。
私はこの今の瞬間に、日本が人類史において
プレゼンスを薄れさせ、後退したのを感じた。
我々はどうするのか。これほど偉大な人材を
日本は生み出すことができるのだろうか。
それだけの力を残しているのだろうか。
オバマ 勝利の真実(2)シカゴ オバマを鍛えた貧民街(日本経済新聞)
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/nbonline.cfm?i=2008110700718cs
”11月4日夜、シカゴの中心にあるグラントパークには、約10万人の支持者
が集まっていた。CNNのニュースがスクリーンに流れる。そして、午後10
時、カリフォルニア州やワシントン州の開票時間に、「オバマが大統領に
当選」というテロップが流れた。
その瞬間、大観衆が拳を突き上げ、地響きのような歓声がわき起こった。
抱き合う若者たち、輪になって踊り出す黒人、そしてテレビの女性リポー
ターが涙を流した。
「歴史が変わった」「偉大な大統領が誕生した瞬間だ」
興奮が収まらない聴衆は、主役の登場を待った。
午後11時、ついに、壇上にバラク・オバマが姿を現した。再び、歓声が耳
を劈く。
「Hello Chicago」
オバマの第一声は、地元への感謝の言葉だった。
「この勝利は、間違いなくあなた方が勝ち取ったものだ。そのことを、私
は決して忘れないだろう」
そして、大統領としての姿勢を、こう語った。
「政府がすべての問題を解決できるはずもない。だから、私はあなたの声
に真摯に耳を傾けるだろう。特に、私に反対している人の声に」
大衆の声から、政治を考える――。
究極のボトムアップ型の政治を宣言した。それは、新しい世紀の大統領像
だった。
演説が終わったシカゴの街は、お祭り騒ぎとなった。あちこちで歓声とオ
バマコールがわき上がる。集会に参加できなかった人がビルの窓から手を
振ると、街頭の人々が拳をあげ、歓声で応える。”
→ 非常に質の高い日経BPの取材です。
歴代大統領とは明らかに熱気が違います。
実際には彼の手腕は内政でも外交でも未知数。
それでも何か偉業を成し遂げてしまいそうな
強烈な存在感があります。
”それは、シカゴのサウスサイドで、貧困を救うために20年以上を費やして
きたオバマにとってのサクセスストーリーでもあった。彼がサウスサイド
で地域活動家(オーガナイザー)になった時、ハドソンは4歳だった。そ
の後、オバマは貧民街の子供の未来のために、教育を受ける環境作りに打
ち込むなど、地域住民の生活向上に力を注いできた。
今年の民主党大会は、サウスサイドから生まれたこの2人の国民的スター
にとって、飛躍の舞台でもあった。
ところが、ハドソンは一瞬にして悲劇のどん底に突き落とされた。
米国社会の現実――。
シカゴの街でこの話題を出すと、意外なほど冷めた声が返ってくる。
「サウスサイドでは日常茶飯の事件さ。芸能人の家だから話題になったけ
ど、隣の家だったら、誰も取り上げなかっただろうね。毎日、銃で誰かが
死んでいる所だから」
ホテルマンのエリックは、そう言って肩をすくめた。
オバマは、あえて、米国が抱える社会問題と隣り合わせに生きようとして
いるのではないだろうか。
「プライベートジェットは快適だが、人々の生活感覚を失いそうになる」
と感じるという。そして、「人々の暮らしの中にこそ、真実がある」と語
っている。
23年前、オバマがシカゴに来た時もそうだった。アイビーリーグの一角、
名門コロンビア大学を卒業し、ニューヨークのコンサルティング会社で高
給を取っていた生活を捨てて、サウスサイドにやってきた。そして、住民
が抱える社会問題を解決するために、年俸1万ドルで地域活動家になった。”
→ これは、政治的野心や功名心ではありません。
すべてアメリカ社会に捧げた精神。
この人物がアメリカ国民を熱狂させるのも当然でしょう。
日本とは比較にならない超格差社会アメリカ。
その過酷な試練の中から飛翔する人材もまた、
日本とは比較にならないアメリカ。
”ハーバード・ロー・レビュー編集長という要職を務めたオバマには、卒業
時に数々の輝かしい道が用意された。その1つには、連邦控訴裁判所裁判
長の補佐官があった。学者としての将来を考えれば、誰もが飛びつくはず
のポストだった。
だが、その要請を断って、オバマはシカゴに戻る。そして、弁護士事務所
に勤める傍らで、シカゴ大学の教壇に立つ。
「彼には明確なビジョンがあった。シカゴに戻って行政に関わりたいと言
っていた」
シカゴ大学教授のジェフリー・ストーンは、ロースクール学長として採用
面接を担当して、その知性に惚れ込んだという。
だが、シカゴに戻ったオバマが目にしたのは、地域活動では手に負えない
ところまで悪化した地域社会の実情だった。
公営住宅団地オールトゲルドの惨状に、ジョンソンはため息をついた。
「オバマが去ってから、どうなったと思う? 荒廃する一方よ。今では、
2000戸のうち、623戸しか入居してない。ついに、この地区の失業率は87
%になったわ」
90年代、マクロ経済で見れば、米国は不況から脱して成長軌道に乗ってい
る。だが、多くの貧困地区は状況が好転することはなかった。富の集中度
を示すジニ係数は上がり続け、先進国で最も格差が激しい社会になってい
る。それでも、高所得者への優遇税制を続けるべきなのか。一部の富裕層
の所得が増え続ける状況に、多くの米国民が疑念を抱く。
オバマの「ブッシュ減税廃止」や「中間層減税」「国民皆保険」などは、
シカゴで遭遇した庶民生活の視点から生み出されている。だから、予備選
がスタートしてから1年弱の間、大きな政策のブレがない。”
「オバマのアメリカ」はどのような経済になるのでしょうか。
欧州型の社会民主主義にシフトすることは間違いありません。
その場合、アメリカ経済の成長率はどうなるのか。
世界経済にどのような影響があるのか。
実効的な成長政策は行われるのか。
『暴走する資本主義』のロバート・ライシュ氏が
オバマ次期大統領のブレーンに加わっていると伝えられています。
また、アメリカの変化は強烈な影響を日本に与えます。
(最近の「富裕層バブル」がその一例)
遠からずその新たな姿が見えてくるに違いありません。
アメリカはこれだから侮れないのだ。
多くの人が口を極めて賞賛するこの人物は、
一体どのようなバックグラウンドを持ち
どのような精神の持ち主なのか。
長らく不思議に思っていたが、
報道を見ていて初めて理解できた。
この大統領であれば、アメリカを変えることができるだろう。
また、そう人々に確信させ得る傑出した人物である。
偉大なリーダーには、国を変えるだけの力がある。
私はこの今の瞬間に、日本が人類史において
プレゼンスを薄れさせ、後退したのを感じた。
我々はどうするのか。これほど偉大な人材を
日本は生み出すことができるのだろうか。
それだけの力を残しているのだろうか。
オバマ 勝利の真実(2)シカゴ オバマを鍛えた貧民街(日本経済新聞)
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/nbonline.cfm?i=2008110700718cs
”11月4日夜、シカゴの中心にあるグラントパークには、約10万人の支持者
が集まっていた。CNNのニュースがスクリーンに流れる。そして、午後10
時、カリフォルニア州やワシントン州の開票時間に、「オバマが大統領に
当選」というテロップが流れた。
その瞬間、大観衆が拳を突き上げ、地響きのような歓声がわき起こった。
抱き合う若者たち、輪になって踊り出す黒人、そしてテレビの女性リポー
ターが涙を流した。
「歴史が変わった」「偉大な大統領が誕生した瞬間だ」
興奮が収まらない聴衆は、主役の登場を待った。
午後11時、ついに、壇上にバラク・オバマが姿を現した。再び、歓声が耳
を劈く。
「Hello Chicago」
オバマの第一声は、地元への感謝の言葉だった。
「この勝利は、間違いなくあなた方が勝ち取ったものだ。そのことを、私
は決して忘れないだろう」
そして、大統領としての姿勢を、こう語った。
「政府がすべての問題を解決できるはずもない。だから、私はあなたの声
に真摯に耳を傾けるだろう。特に、私に反対している人の声に」
大衆の声から、政治を考える――。
究極のボトムアップ型の政治を宣言した。それは、新しい世紀の大統領像
だった。
演説が終わったシカゴの街は、お祭り騒ぎとなった。あちこちで歓声とオ
バマコールがわき上がる。集会に参加できなかった人がビルの窓から手を
振ると、街頭の人々が拳をあげ、歓声で応える。”
→ 非常に質の高い日経BPの取材です。
歴代大統領とは明らかに熱気が違います。
実際には彼の手腕は内政でも外交でも未知数。
それでも何か偉業を成し遂げてしまいそうな
強烈な存在感があります。
”それは、シカゴのサウスサイドで、貧困を救うために20年以上を費やして
きたオバマにとってのサクセスストーリーでもあった。彼がサウスサイド
で地域活動家(オーガナイザー)になった時、ハドソンは4歳だった。そ
の後、オバマは貧民街の子供の未来のために、教育を受ける環境作りに打
ち込むなど、地域住民の生活向上に力を注いできた。
今年の民主党大会は、サウスサイドから生まれたこの2人の国民的スター
にとって、飛躍の舞台でもあった。
ところが、ハドソンは一瞬にして悲劇のどん底に突き落とされた。
米国社会の現実――。
シカゴの街でこの話題を出すと、意外なほど冷めた声が返ってくる。
「サウスサイドでは日常茶飯の事件さ。芸能人の家だから話題になったけ
ど、隣の家だったら、誰も取り上げなかっただろうね。毎日、銃で誰かが
死んでいる所だから」
ホテルマンのエリックは、そう言って肩をすくめた。
オバマは、あえて、米国が抱える社会問題と隣り合わせに生きようとして
いるのではないだろうか。
「プライベートジェットは快適だが、人々の生活感覚を失いそうになる」
と感じるという。そして、「人々の暮らしの中にこそ、真実がある」と語
っている。
23年前、オバマがシカゴに来た時もそうだった。アイビーリーグの一角、
名門コロンビア大学を卒業し、ニューヨークのコンサルティング会社で高
給を取っていた生活を捨てて、サウスサイドにやってきた。そして、住民
が抱える社会問題を解決するために、年俸1万ドルで地域活動家になった。”
→ これは、政治的野心や功名心ではありません。
すべてアメリカ社会に捧げた精神。
この人物がアメリカ国民を熱狂させるのも当然でしょう。
日本とは比較にならない超格差社会アメリカ。
その過酷な試練の中から飛翔する人材もまた、
日本とは比較にならないアメリカ。
”ハーバード・ロー・レビュー編集長という要職を務めたオバマには、卒業
時に数々の輝かしい道が用意された。その1つには、連邦控訴裁判所裁判
長の補佐官があった。学者としての将来を考えれば、誰もが飛びつくはず
のポストだった。
だが、その要請を断って、オバマはシカゴに戻る。そして、弁護士事務所
に勤める傍らで、シカゴ大学の教壇に立つ。
「彼には明確なビジョンがあった。シカゴに戻って行政に関わりたいと言
っていた」
シカゴ大学教授のジェフリー・ストーンは、ロースクール学長として採用
面接を担当して、その知性に惚れ込んだという。
だが、シカゴに戻ったオバマが目にしたのは、地域活動では手に負えない
ところまで悪化した地域社会の実情だった。
公営住宅団地オールトゲルドの惨状に、ジョンソンはため息をついた。
「オバマが去ってから、どうなったと思う? 荒廃する一方よ。今では、
2000戸のうち、623戸しか入居してない。ついに、この地区の失業率は87
%になったわ」
90年代、マクロ経済で見れば、米国は不況から脱して成長軌道に乗ってい
る。だが、多くの貧困地区は状況が好転することはなかった。富の集中度
を示すジニ係数は上がり続け、先進国で最も格差が激しい社会になってい
る。それでも、高所得者への優遇税制を続けるべきなのか。一部の富裕層
の所得が増え続ける状況に、多くの米国民が疑念を抱く。
オバマの「ブッシュ減税廃止」や「中間層減税」「国民皆保険」などは、
シカゴで遭遇した庶民生活の視点から生み出されている。だから、予備選
がスタートしてから1年弱の間、大きな政策のブレがない。”
「オバマのアメリカ」はどのような経済になるのでしょうか。
欧州型の社会民主主義にシフトすることは間違いありません。
その場合、アメリカ経済の成長率はどうなるのか。
世界経済にどのような影響があるのか。
実効的な成長政策は行われるのか。
『暴走する資本主義』のロバート・ライシュ氏が
オバマ次期大統領のブレーンに加わっていると伝えられています。
『暴走する資本主義』(ロバート・ライシュ,東洋経済新報社) |
また、アメリカの変化は強烈な影響を日本に与えます。
(最近の「富裕層バブル」がその一例)
遠からずその新たな姿が見えてくるに違いありません。