みんなの心にも投資 … ソーシャルインベスター(社会投資家)への道

個人投資家の”いとすぎ ”が為替・株式投資を通じた社会貢献に挑戦します。すべてのステークホルダーに良い成果を!

2010年/社会・経済書ベスト10冊 -『スウェーデンはなぜ強いのか』『失われた「医療先進国」』等

2010-12-30 | こんな本を読んでいます
年末なので今年のベスト10冊を選びました。
年末年始の空いた時間にお薦めです。

経済誌のランキングとかなり違いますが
それなりの理由があります。

第1位 『2020年、日本が破綻する日』








「日本経済とともに轟沈しかねない運命を帯びた、
 若い世代の気鋭の研究者による勇敢な問題提起」

として一度紹介しました。その際のメモを見直すと、
いかにこの本の内容が重大であるか再確認できました。

○2020年頃には政府債務が家計金融資産を食い潰す
○金利の急上昇リスクが年々高まっている
○25年後の財政破綻確率を試算すると46~71%に達する
 (プライマリーバランスによって確率は変動する)
○日本の財政は、負担より受益の方が大きくそのツケを先送りしている
○社会保障予算の不足分を国債発行で埋め合わせている
○経済成長の効果は金利上昇によって相殺される可能性がある
○世代会計の不均衡は成長率を抑制している可能性がある

欠点は、経済政策の研究が甘いところ、
特に北欧経済や女性雇用増による経済効果が書かれていない。

また、韓国のようにIMF管理下になった場合のシミュレーションを行い
その結果を公表して欲しい。


第2位 『社会保障の「不都合な真実」』








日本の社会保障は既得権と一体化しており、
利権の塊であることを指摘した勇敢な一冊。

社会保障分野での規制緩和による雇用増効果を初めて指摘した功績は大きい。


第3位 『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』

タイトルは「長期停滞の真実」の方が正しいでしょう。

日本経済を衰弱させる生産年齢人口減少を正しく認識しています。
むきになって反論する論者の必死さがこの本の価値を証明している。

池田信夫教授に至っては自分が大して言及してもいないのに
「それは当たり前の話だ」と開き直っている。
大人げない行為の裏に感情的動機があるのだろう。


……ただこの本の処方箋は弱過ぎ。
退職金に課税優遇の縮小、年金控除廃止、
高額年金課税の方が遥かに有効です。

また、女性労働者を増やすには配偶者控除の削減、
年金の第3号被保険者優遇の廃止、
福祉分野への雇用改善策(給付付き税額控除等)、
効率的な待機児童問題改善策が欠かせません。


第4位 『失われた「医療先進国」』








必読です。本当に質が高いです。

著者が海外の事例を取り上げると医師の方々から抗議を受け、
それでその人々の論文を見てみると「海外では予算が増えた」等の
都合の良い部分ばかり取り上げているそうです。
(矢張りそうだったか)

欧州の医療政策は実は統制が厳しく、
開業ラッシュの日本よりも医師は不自由なようです。


第5位 『スウェーデンはなぜ強いのか』








北欧の政策的合理性から学べるバランスの良い本です。


第6位 『スウェーデン・パラドックス』

「年功賃金も退職金もない、日本よりシビアな競争的社会」です。
スウェーデンの現状を多面的に分析しています。

また、OECDの賃金調査が掲載されており、
日本の労働者の手取りがいかに大きく、
弱者や低所得者との連帯に欠けているかが分かる。


第7位 『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』








何と
出生率を0.4も引き上げたデンマーク。
矢張り予算の大きさがかなり違うようです。


第8位 『日本経済「余命3年」』








それぞれのコメントが興味深い。
でも処方箋はかなり貧弱です。

法人税を下げるなら海外企業を優遇して
対内投資を増やした方がいいに決まっている。
どうしてその程度のことが分からないのでしょうか。


第9位 『ユーロ 危機の中の統一通貨』

ユーロは崩壊しません。
ドイツの優位が瓦解するからです。
巷のユーロ崩壊論と一線を画する本格派の一冊。


第10位 『外交官が見た「中国人の対日観」』








今の日中関係の断面を鋭く捉えています。
安全保障分野は貧弱ですが、立場上仕方ないでしょう。
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60歳以上のパチンコ遊技人口が急増、年金をつぎ込み借金する事例も - 不都合な高齢化社会の事実

2010-12-29 | いとすぎの見るこの社会-コミュニティ関連
この日本社会で非常に不思議な現象として挙げられるのは
これ程迄にパチンコが流行っている事実です。

根本的に損失が出るような構造になっているのに、何を苦しんで
自ら経済的・時間的損失を招いているのか全く理解できません。

また、パチンコは脱税の多い業界としても知られています。
そのようなモラル上の問題を抱えている業界に関わると
碌なことがありません。

私の知っている中で有能な人材がパチンコ好きであるのを
今迄かつて一人も見たことがありません。
計画性や自制心、衝動性において何らかの欠点を抱えている人が多い。
(尚、競馬好きもかなり似た傾向を持つと感じる)
付き合う限りでは愉快な人も多いので私からは何も言いませんが。


…超高齢化社会へと粛々と進んでいる日本で、
今度は高齢層のパチンコ依存症が問題となりつつあるようです。

年金給付には莫大な公費を投入しているのに
それがパチンコ業界に流れるのでは
何のために乏しい税収を割いて年金額を増やしているのか分かりません。

自分で自分をコントロールできないのであれば、
現金給付への公費投入など必要ない。
医療給付に回す方が遥かにましです。

高齢層を無意識的に社会的弱者であると捉えるのは明白な誤りです。
有能な人物も無能な人物も、頭脳明晰な逸材も愚昧な者も、
周囲から信望の厚い人格者も家族に嫌悪される厄介者も、
これら全てを皆含んでいます。
それを一般化して語るのは粗雑な論に過ぎません。


▽ こんな本も出ています。病状として捉えたかなり真面目な内容。





『困った老人と上手につきあう方法』(和田秀樹,宝島社)



パチンコ熱中のお年寄り急増 年金つぎ込み家族借金も(朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/1108/TKY201011070287.html

”パチンコに熱中するお年寄りが急増している。独り暮らしの寂しさをまぎらわせる
 ためだったり、定年後の毎日の退屈しのぎだったり。3年前の規制強化でギャンブ
 ル性の高いスロット機が禁止され、客離れが深刻になっている業界も、高齢層から
 の集客に「生き残り」への期待を寄せる。借金を重ねて大金を浪費する依存症も目
 立ち始めており、新たな社会問題になろうとしている。
 10月15日、東京都板橋区の私鉄駅に近いパチンコ店は白髪の目立つ高齢客で埋
 まっていた。
 〔中略〕
 偶数月の「15日」には、2カ月分の国民年金と厚生年金が全国一斉に支給される。
 どの店舗でも、この日は年金を元手に遊ぶ高齢者で台の稼働率が2~3割上がると
 されている。

 公益財団法人「日本生産性本部」(東京)が15歳以上の男女を対象に調査した結
 果によると、60歳以上のパチンコ遊技人口(推計値)は過去10年間は200万
 ~300万人で推移していたが昨年は急増し、約430万人にのぼった。遊技人口
 全体の25%を占めている

  ■広がる「依存症」 弁護士らに相談相次ぐ
 パチンコ店通いのために借金を重ね、家族関係をも崩壊させる――。お年寄りたち
 にもそんな「依存症」の広がりが心配されている。

 弁護士や司法書士でつくる「依存症問題対策全国会議」(事務局・熊本市)には最
 近、高齢者の家族らからの相談が相次いでいる。
 70代の義父について相談してきた熊本県の男性は「家族内で救おうとしたが、ど
 うにもならなくなった」と打ち明けたという。義父は退職後にパチンコ通いが激し
 くなり、老後の蓄えを使い果たし年金にも手を出し始めた。立ち直らせたくて援助
 するうち、自分もヤミ金融などに300万円の借金を抱えた。
 患者数の正確な統計はないが、専門家の間では、パチンコ依存症は全国で100万
 人以上にのぼると試算されている。全国会議代表幹事の吉田洋一さん(74)は、
 「高齢者の場合、パチンコが唯一の趣味になっていることが多く、依存症であるこ
 とを自覚できていないため問題が表面化しづらい」と話す。(小寺陽一郎)”

 → パチンコしか趣味がないというのは、
   自ら自分を不幸にしているようなものだと思う。

   大阪大学の大竹文雄教授は実証調査により、
   ギャンブルなど中毒財への嗜癖を持つ者は不幸度が高く、
   中毒の進行により更に不幸になることを確かめています。





『競争と公平感―市場経済の本当のメリット』(大竹文雄,中央公論新社)


万引き:常習高齢者 3分の2が「生きがいない」…警視庁(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20101216k0000e040074000c.html

”万引き事件を繰り返す高齢者の3分の2が「生きがいがない」と感じていることが
 警視庁の実態調査で分かった。万引き容疑で摘発される高齢者が10年で9倍以上
 に激増するなか、こうした分析は初の試み。警視庁は、「孤立感の解消が高齢者の
 再犯防止の鍵」とみて、事件で摘発された容疑者に就労を促すなど、社会参加への
 取り組みを充実させる方針だ。 【伊澤拓也】
 調査は4~10月、東京都内で万引き(窃盗容疑)で摘発・補導された容疑者の取
 り調べなどの際、各警察署が実施。6~92歳の男女1070人から回答が得られ
 た。65歳以上の高齢者は119人(初犯61人、再犯58人)だった。
 容疑者らに生きがいが何かを聞くと、「無し」と答えた人の割合は年齢が上がるほ
 ど増える傾向にあり、再犯高齢者の「無し」は67.2%と飛び抜けて多く
、次に
 多い「家族」(10.3%)を大きく上回った。初犯高齢者の「無し」は39.3%
 だった。再犯少年は23.5%、64歳以下の再犯成人は45.3%だった。
   ◇「相談できる人いない」55%
 「普段から相談できる人がいるか」という質問には、再犯高齢者の55.2%が「い
 ない」と答え、事件を繰り返す背景に孤独な状況があることをうかがわせた。
再犯
 少年は18.8%、再犯成人は41.5%だった。
 警視庁によると、09年に都内で万引き事件で摘発・補導された1万4819人の
 うち高齢者は3110人と21%を占め、99年の336人(6%)から9倍以上
 増えた。
3110人の内、警察署の調査に回答した204人についてみると、72
 人(35.3%)が過去にも万引きで摘発されていた

 万引きで摘発される高齢者の割合は全国的にも同じ傾向で、09年は10万522
 8人のうち25.7%が高齢者だった。
 警視庁幹部は今回の調査結果について「高齢者は、一度摘発されてもまた万引きし
 てしまう傾向がある。
働いたりして生きがいを見つけてもらうことが万引き防止に
 もつながる」と指摘。摘発された高齢者に対し、警察署が行う防犯活動や地域のボ
 ランティア活動への参加を促す考えだ。”

「相談できる人がいない」だけでなく、
自ら人間関係を悪化させたり
その果てには断ち切っている人も多いのが実態だ。

彼らが支援を拒む際、我々に可能な選択肢は極度に狭くなる。
これは非常に厄介な問題だ。

そして都市部でふと周囲を見回すと、
大量の「孤独な高齢者」予備軍が私の目に映る。
必ずしも犠牲者ではない、自ら未来を暗くしている人々が。
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「福祉予算を高齢者に集中してきたことが、社会の先細りを加速させた」- 毎日新聞社説、堂々の正論

2010-12-28 | いとすぎから見るこの社会-格差の拡大
先日、現下の社会保障制度の本質を鋭く抉る
毎日新聞の社説を発見しました。

若年層や子供向けの社会保障予算が極端に少ないこと、
新しい高齢者医療制度は現役世代へのつけ回しに他ならないこと、
若年層や子供への支援を怠れば社会自体が地盤沈下するであろうこと、
いずれも多くのメディアが触れない「不都合な事実」です。

偉そうな言い方で恐縮ですが、執筆者は
詳細に社会保障を調べられていることが分かります。

学習院大学の鈴木亘教授は、
日本でこっそり社会保障に投入されている公費は
何と年間
20兆円にものぼり、
その大部分が年金と医療への支出であることを指摘されています。

当ウェブログで指摘したように、子供手当より遥かに額が大きい。





『日本経済「余命3年」』(竹中平蔵/池田信夫/土居丈朗/鈴木亘,PHP研究所)



社説:社会保障改革 若年世代の支援も軸に(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20101220k0000m070114000c.html

”「福祉」といえばこの国ではもっぱら高齢者について考えることだった。社会保障
 給付費約105兆円の半分は年金が占める。医療が30%、介護が7%で、これか
 ら高齢化はますます進展するので医療費と介護費の膨張からは逃れようがない。
 一方、支える側の現役世代は少子化のために人数が減り続けている。大学や高校を
 出ても就職できない若者の問題も深刻だ。若年世代の失業率は平均より2倍も高い。
 また、社会との関係を断ってひきこもる若者も推計70万人に及ぶ。ところが、
 れまで子育てや若者世代の社会保障はあまり顧みられたことがなく、公費支出は先
 進国では最低レベルだ。

   ◇政権公約を実質修正
 老いてからの安心を得ようとして少ない福祉の財源を高齢者に集中してきたことが、
 社会を支える若年層の先細りを加速させ、ますます老いてからの福祉の弱体化を招
 いている
。そうした悪循環を断つためには、安定した財源を確保した上でほころび
 が出ている年金・医療・介護の手当てをしつつも、優先的に取り組む政策の軸足を
 子育てや若者支援に移すしかない
。長期的な視点で抜本改革に着手すべきである。
 菅政権が設置した「社会保障改革に関する有識者検討会」(座長、宮本太郎北海道
 大大学院教授)は当面の優先課題として、(1)子ども・子育て新システムの実現
 (2)新規学卒者と若年層のための就労支援体制の強化(3)与野党の国会議員や
 有識者で構成する「社会保障諮問会議」(仮称)の設置を盛り込んだ報告をまとめ
 た。政府もこれを踏まえて社会保障改革の基本方針を閣議決定した。
 累積赤字、財源不足は危機的な状況だ。消費税アップの道筋をつけるための付け焼
 き刃的な検討会報告ではあるが、その方針は大筋で評価できる。問題はどうやって
 与党内および野党との合意を形成していくかの手順と手法である。
 まず、政権交代を果たした昨年の衆院選時点の公約であるマニフェストとの整合性
 はどうするのか。子ども手当や保育所の待機児童解消はいいとしても、年金制度改
 革、後期高齢者医療制度の廃止、障害者自立支援法の廃止はマニフェストでの社会
 保障改革の目玉だったはずだ。
 政権交代から1年以上がたつものの、年金制度改革については見るべきものがない。
 もともと細部の具体性に欠ける改革案だったが、「年金制度を一元化し、すべての
 人に月額7万円以上を給付する最低保障年金を創設し、その財源に消費税をあてる」
 というものだった。ところが、参院選のさなかに発表した年金改革7原則からは、
 「月額7万円」「財源は全額税で」という項目がなくなった。さらに今回の有識者
 検討会報告では「年金制度一元化」という看板も消えた。基礎年金の国庫負担を3
 分の1から2分の1へと引き上げることすら四苦八苦している現状からすれば当然
 の帰結だろう。
 後期高齢者医療制度に代わる新制度については、急ごしらえでまとめはしたものの
 高齢者の負担を現役世代につけ回ししたに過ぎず、抜本改革にはほど遠い内容だ。
 法案提出すら危ぶまれているのでは、何のために時間を費やしてきたのかわからな
 い。有識者検討会報告では新制度についての記述は一切なく、「病院・病床の機能
 分化の徹底と集約化」「不必要な入院期間を減らし」「家庭医を多数養成」など、
 自公政権時代に進められてきた医療改革を前面に出した記述が目立つ。
 〔中略〕
 社会保障改革は時間的に土壇場であることを各党は深刻に認識すべきだ。消費税を
 含む財源確保ができなければ基礎年金の国庫負担はもうまかなえない。12年4月
 には6年に1度の診療報酬・介護報酬の同時改定が行われる。高齢者医療と介護を
 立て直さなければ、綻びではすまなくなる。子育てや若年世代の支援がこれ以上後
 回しにされると社会全体が地盤沈下していく
ことになる。”

認識は的確ですが、問題は処方箋です。
「与野党で協議」しても彼らは足の引っ張り合いで
点数を稼ごうとするので、時間の無駄だと思います。

取りあえずは優遇し過ぎの退職金課税を即刻見直して
育児支援の財源とすべきでしょう。
豊かな高齢層にもバラまかれている年金・医療給付の公費投入分も
すぐに削減しなければなりません。
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日本の病院までもが国内市場に失望、アジア進出へ -「医師が安定収入を得られる時代は終わった」

2010-12-27 | いとすぎから見るこの社会-対アジア・世界
日本企業が国内市場の将来性のなさに見切りをつけて
国外進出に注力するのはとてもよく分かりますが、
今度は病院も国外進出を始めたようです。

日本の人口動態がいかに破滅的か理解している者なら
この国の未来に死活的な試練が待ち受けているのを予感しています。

毎日新聞の記事によれば医療関係者が海外に目を向ける理由としては
アセアンに日本の医療機器を輸出する狙いの他に、

○国内の人口減少
○診療報酬の頭打ち
○税収減
○医療財政への懸念

が挙げられています。

私は医療財政が不安であれば
(医師を含め)中高所得層の所得税率を数%引き上げるべきと思いますが。
海外に目を向けるのは致し方ないとしても
日本国内の医療問題にこそ責任ある行動を見せて欲しいです。


▽ 公費5000万を投入して育てた医師を自由に開業させている日本





『失われた「医療先進国」』(岩本裕/NHK取材班)


北原脳神経外科病院:総合病院、アジア初「輸出」 カンボジアで上場目指す(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20101214ddm002040014000c.html

”脳神経外科で国内有数の北原脳神経外科病院(東京都八王子市)が来年早々、カン
 ボジアに進出することが明らかになった。救命救急センターや医科大学を併設する
 大規模総合病院とする計画。入院設備を持つ総合病院のアジア進出は国内初という。
 経済産業省も原発などインフラ輸出と並ぶ官民プロジェクトとして支援する方針で、
 医療ビジネスの戦略的“輸出”につなげる考えだ。【清水憲司、和田憲二】
 北原脳神経外科病院は、来年2月をめどに首都プノンペンに救命救急センターを開
 設。在留邦人に加え、富裕層が増え始めた現地の市民にも医療を提供し、医療技術
 の向上も図る。民間から出資を募る株式会社病院とし、7年かけて医科大学を併設
 する大規模総合病院(1000床規模)とし、東南アジア各国から患者を呼び込む
 計画。将来的には現地で株式上場を目指す。
 病院には日本製の高度医療機器を導入。「医療・環境技術を東南アジアに輸出する」
 (北原茂実理事長)狙いだ。ドイツに押され気味の医療機器輸出を後押しするため、
 経産省も支援の具体策を検討している。
 これまでも、岡山県の医療機関が中国・上海などに医院を開設した例はある。しか
 し、国内の人口減少や診療報酬の頭打ちで病院経営は厳しさを増している。国内有
 数の都内の別の総合病院グループも海外進出の検討に着手するなど、典型的な内需
 産業だった病院が海外展開を本格化させている。
   ◇ASEANにらみ
 医師不足が深刻なカンボジアは、日本の医師免許で診療行為が可能だ。また、東南
 アジア諸国連合(ASEAN)は15年に域内の医療サービスを相互開放する方向
 で、カンボジアに拠点を置くことで、域内への展開も容易になる。
 都内の医療移転コンサルタント会社「インターナショナル・デザイン・ジャパン」
 によると、海外進出相談は最近半年で前年同期比3倍のペースとなり、1日40件
 に上ることもある。「税収減で医療財政が維持できるのか、医師が不安を強めてい
 る」
(川崎勝久代表)ことが背景にある。カンボジアに進出する都内の歯科医は、
 「不況で病院への行き控えは深刻。医師が安定収入を得られる時代は終わった」と
 語る。来春、中国・広州の病院で日本人患者向けで24時間体制の通訳サービスを
 始める薬局・医薬品卸の佐野薬品グループ(秋田市)も「人口が減る国内から海外
 に目を転じないといけない」
(堀川勤常務)と話す。
   ◇国内空洞化懸念も
 ただ、アジアの経済成長などで世界的に医療の需要が増えるとみられ、国境を超え
 た「医師の奪い合い」も始まっている。日本の医療制度や市場縮小に見切りをつけ、
 海外へ進出する医師や病院が増えれば、国内の「医療空洞化」を招く事態も懸念さ
 れる。”

……これまで散々、少子化対策をサボりまくってきたのですから
「何を今更」という感じですが面白い方向性ではあります。

日本の医療・製薬産業は輸出競争力が極端に弱いので
この機会にグローバル化を進められるかもしれません。

まだほんの微かな動きに過ぎないが
国内の医療性制度にも医療産業にも影響大と思われます。

ところでこのカンボジアはタイとベトナムを結ぶ要衝であり、
隣国ラオスへの中国の浸透が著しい昨今、
その戦略的価値は否応無しに高まっている。

ベトナム同様、日本にとって最重要国のひとつとなるだろう。
そうした意味でも注目である。
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住友信託銀行・瀬良礼子ストラテジスト「欧州内での貸し借りが多く、問題が他国へ波及しやすい」-燻る懸念

2010-12-26 | 注目投資対象・株価の推移
           ↑ USD/JPY(infoseek)角度が悪く、完全に下向き

先週の注目点は原油先物が遂に91ドル台に達したこと、
中国株の足踏み傾向が明確になったことです。

また、当ウェブログの予想通りムンバイが香港をひたひたと追い上げています。

為替はドル円・ユーロ円とも大きく崩れ、
クリスマス明けの多難な市況を予感させます。

「いきなり強気が増えましたがこのような時は反落に注意」
「ドルの買戻しはほぼ一巡か」
と先週書きましたが、ほぼ想定内の結果と言えるでしょう。

「ドル円の史上最高値更新は「あるか」ではなく
 既に「いつ」の問題となっています」

「ドル円の史上最高値更新はもう確定、
 中印株式とコモディティは高々と舞うことになるでしょう」

との見通しを維持します。ドル円の史上最高値は
あるとしたら確実に来年ですね。


↓ EUR/JPY(infoseek)下放れ、下げ止まり感なし


↓ AUD/JPY(infoseek)欧米株高・商品高で強い展開だが。。


ユーロ圏は決め手を欠く状況が続いており、
市場参加者が疑心暗鬼に囚われる状態が続くでしょう。
欧州の金融機関はグローバル化が進んでおり
危機もグローバル化し易いという体質になっています。


フランス国債CDSが過去最大水準に拡大、格下げのうわさで(reuters)
http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201012200077.html

”マークイットのデータによると、20日のクレジット・デフォルト・スワップ(C
 DS)市場で、フランス国債の5年物のCDSスプレッドが107ベーシスポイン
 ト(bp)に拡大し、過去最高水準を記録した

 マークイットのアナリスト、ガバン・ノーラン氏は、「格下げに関する一部うわさ
 が出ている。うわさに根拠はないが、CDSスプレッド(拡大)の引き金になった
 可能性がある」と指摘。格下げのうわさはここ数週間出ているが、特定の情報源な
 どはないとの見方を示した。
 この日のCDSの動きは特に大きくはないものの、過去数週間にわたりアンダーパ
 フォームしており、この日の取引でスプレッドは過去最高水準に達したと話した。”

 → この後、噂は否定されましたが
   問題が解決した訳ではありません。

   不安げなCDSの値動きを裏付けるような悪材料が出たら
   市場は間違いなく強烈な嵐に見舞われます。


東京外為市場・正午=ユーロはくすぶる欧州債務懸念で2週間半ぶり安値更新(reuters)
http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201012200032.html

”正午のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点とほぼ変わらずの83円後半。
 午前の取引では、ドルが84円を挟んだ小動きとなる一方、くすぶる欧州債務問題
 懸念や、輸出企業の売りを受け、ユーロは対ドルで2週間半ぶり、対円では2週間
 ぶりの安値を更新した。  
 商業決済が集中する5、10日に当たるこの日は、仲値公示付近ではドル買いが売
 りを凌ぎ、ドルは一時84.13円まで上値を伸ばした。また、「韓国の軍事演習
 に関する報道が多少の円売りを招いている」(ファンド・マネージャー)との意見
 も聞かれた。しかし、仲値を経て、ドルは徐々に軟化し83.82円付近まで弱含
 んだ。 他方ユーロは、一時前週末の安値を下抜け、2週間半ぶりの安値となる1.
 3125ドルまで下落。ユーロも110.23円まで下落し、約2週間ぶりの安値
 を更新した。ユーロ/円では、輸出企業の売りが目立ったという。  
   <ユーロ> 
 「(ユーロ/ドルは)直近の安値を下抜けしたので、モデル系などファンド勢が売
 ってきた」(ファンド・マネージャー)という。しかし、その後、値ごろ感からの
 ユーロ買いに支えられ、小幅に反発した。 
 市場参加者によると、ユーロ下落のきっかけは「欧州債務危機が相次ぐ格下げを招
 けば、フランスなど最高格付けの借り手も巻き込まれ、トリプルAの格付けを失う
 危険性があり、ベルギーも格下げリスクに直面している」とのアナリストや投資家
 の見方をまとめたブルームバーグの見通し記事

 市場では「アイルランドの格下げに続き、スペインの方向性も見定めたい。また、
 個別金融機関のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の動向も気になると
 ころだ」(邦銀)との意見が聞かれた。 
 国際通貨基金(IMF)は17日、アイルランドが緊急融資の返済能力に影響を及
 ぼす可能性のある深刻なリスクに直面しており、2015年までに財政赤字を対国
 内総生産(GDP)比3%に削減することは困難との見方を示した。
 市場では、「このタイミングでIMFが厳しい見方を示したことが、(17日に)
 ユーロ安が進行した背景」
(外為アナリスト)との声も聞かれた。  
 〔中略〕
 英ポンド安の背景は、一部国有化された英ロイズ・バンキング・グループが17日、
 アイルランドの経済・財政問題の影響により、アイルランド関連ポートフォリオが
 年末までに、さらに10%棄損する
、との見方を明らかにしたこと。
 同ポートフォリオは267億ポンド(417億2000万ドル)規模。今後ポート
 フォリオに対する引当金を積み増すとし、2010年通年の同国エクスポージャー
 関連費用は約43億ポンドに達する見込みとした。〔以下略〕”

 → これは下落の始まった20日の報道。
   フランス格下げの噂が広まった日です。
   ただの噂でも下がることから、今の市場心理の脆弱さが分かる。

   ロイズのPF毀損も警戒信号です。
   これは延焼の可能性極めて大きく、
   欧州金融機関は確実に疑いの目で見られる筈。


東京外為市場・15時=ドル82円後半、ユーロの下値警戒感は継続(asahi.com)
http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201012240065.html

”午後3時のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点とほぼ変わらずの82円台
 後半。年末特有の薄商いの中、ドル/円は5・10日の需要から仲値にかけて若干
 上昇したが、ドル買い一巡後は方向感を失い、83円を挟んだ値動きに終始した。
 他方、この日は若干強含んだユーロには依然、下値警戒感が強い。
 午後3時までの取引で、ドルは82.90―83.18円、ユーロは1.3087―
 〔中略〕
 ドルは仲値公示後、需給が緩み、じりじりと83円付近に押し戻された。「きょう
 は典型的な5・10日相場。材料が見当たらず、レンジ取引で大きな方向感はない」
 (国内金融機関)という。 
   <ユーロ>
 この日のユーロは1.31ドル前半で若干強含んだが、下値警戒感は払拭されなか
 った。
 海外市場ではユーロが3週間ぶり安値となる1.3055ドル付近まで下落した後、
 反発した。また対ユーロで6日連続で過去最高値を更新していたスイスフランは利
 食いで反落した。
 〔中略〕
 市場では、「ユーロは引き続き下値警戒感が強い。英国系の金融機関などは周辺国
 向けの与信は減少してきているものの、水準はまだ高い。欧州内での貸し借りが多
 く、1国の問題が他国へ波及しやすい状況だ」
と住友信託銀行、マーケット・スト
 ラテジストの瀬良礼子氏は言う。
 「欧州の金融機関に比べ、日、米の金融機関はPIGGS向けの貸出比率も低く、
 リスク回避でドルと円が買い進まれやすい」と瀬良氏は述べた。 
 〔中略〕     
 他方、このところの市場では、ユーロ周辺国の国債と独連邦債との利回り格差拡大
 や、周辺国のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の拡大が、以前と比較
 して、リスク回避の流れを招かなくなった、との指摘も聞かれる。リスク回避が顕
 著な状況では、これまではドルと円が両方買われ、クロス円で円高が進行してきた。
 「最近の相場では、ソブリン問題で対独スプレッドが開いても、原油などの商品や
 株価が上昇しリスク資産が堅調さを維持している。投資家のリスク・アバース(リ
 スク回避姿勢)にはつながっていない」
(外銀)との意見が聞かれた。
 米原油先物は23日、1バレル=91ドルを超え、約2年2カ月ぶりの高値をつけ
 た。石油輸出国機構(OPEC)加盟国であるリビアの石油公社総裁が最近の原油
 高にそれほど懸念を示さなかったことを受け、一部のアナリストの間では、来年に
 は原油先物が1バレル=100ドルに達するとの見方が出ている
。 
 23日のユーロ圏金融・債券市場ではギリシャ国債利回りが上昇。同国の債務保証
 コストも過去最高水準となった。地元紙タネアが23日、ギリシャ政府が2013
 年以降の債務再編の可能性を探っていると報じたことが、利回り上のきっかけ。
 ギリシャ国債の5年物CDSが1000ベーシスポイント(bp)付近に上昇。
 一時、過去最高となる1010bpに達した。CDSスプレッド1bpは、債務
 1000万ユーロに対する保証料1000ユーロに相当する。    
 〔中略〕
 財務省がきょう発表した対外対内証券投資によると、非居住者の日本株投資は7
 週連続の買い越しで、累計約1兆円に達した。
 「日経平均が約10%上昇すると、非居住者の日本株投資が約1兆円起こる。
 日本株は2011年に約20%上昇するとみており、来年は日本株経由で2兆円
 程度の外資が流入するだろう」と野村証券金融市場調査部のシニア為替ストラテ
 ジスト池田雄之輔氏は予想する。〔以下略〕”

 → これは週末金曜の報道です。
   各所に見落とせない見解があります。
   PIIGSへの欧州銀行の与信の問題をはじめ、いずれも必見です。

   年明けも先週のようにリスク許容度が落ち着くとは
   到底考えられません。ユーロ圏に要警戒です。

   尚、野村證券の池田雄之輔氏の見通しが素晴らしいので
   関心のある方は元記事をお読み下さい。

    ◇     ◇     ◇     ◇

注目銘柄、クリスマスで静かでした。

 丸紅(東証一部 8002) 404 → 437 / 453 → 587 / 450 → 587
             542 / 494

 三菱商事(東証一部 8058) 1,700 → 1,890 / 1,914 → 2,442
               2,287 → 2,442 / 2,129
               2,046

 マツダ(東証一部 7261)  232
               201 → 238

 ユナイテッドアローズ(東証一部 7606) 1,044 → 1,215
                     1,087

 SUMCO(東証一部 3436) 1,743 → 2,014
               1,590 → 1,793

 住友金属鉱山(東証一部 5713) 1,492

 昭和シェル石油(東証一部 5002) 987 → 1059 / 966
                  716 → 723 / 688

 金価格連動型上場投資信託(大証二部 1328) 3,200 → 3,360

金ETFは上値が重くなりそう。


NY原油、91ドル台=2年2カ月ぶり高値(時事通信)
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-101224X728.html

”【ニューヨーク時事】23日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物
 相場は、需給逼迫(ひっぱく)懸念を背景とした買いに5営業日続伸し、前日に続
 き約2年2カ月ぶりの高値を更新した。米国産標準油種WTIの中心限月2月物は
 前日終値比1.03ドル高の1バレル=91.51ドルで終了した。
 米エネルギー省が前日発表した週間在庫統計で原油在庫が大幅に減少したことを受
 け、需給懸念が高まった。”

 → 遂に原油先物がバレル90ドルに達しました。
   エネルギー効率の悪い新興国の経済活況を受けた、
   理の当然と言える結果です。
   日本が原油高をヘッジしなければ大損失を招くでしょう。

   尚、前回に要注意と書いたゴールドは頭打ちです。





『日経会社情報』2011年新春号 2011年 01月号


    ◇      ◇     ◇     ◇

  【 いとすぎの為替ポジション 】

週初にドルショートを薄利で決済、
週央に悪い崩れ方になったので再度ドルショートとしています。

 2010/12/23 83.12 USD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/09/10 77.52 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/05/03 87.43 AUD/JPY Lev ×3.0
 2010/03/31 85.75 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)

    現在 > 82.86 豪ドル/円(損益146%)← 今年の損益率
        108.72 ユーロ/円

 ◎ 2008年秋~09年末の損益率(手数料等除外)> 353%

  ▼ ポジション解消済み
 2010/12/08 84.10 USD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/11/26 111.24 EUR/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/11/15 113.30 EUR/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/11/04 115.10 EUR/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/09/16 79.57 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/09/24 112.68 EUR/JPY Lev ×1.5
 2010/07/15 76.20 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/06/29 77.09 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/06/17 78.07 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/06/04 78.18 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2009/07/22 76.77 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/04/21 86.74 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/04/23 86.88 AUD/JPY Lev ×3.0
 2010/04/13 86.28 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/04/01 86.40 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2009/10/29 83.08 AUD/JPY Lev ×1.5
 2009/10/29 82.75 AUD/JPY Lev ×1.5
 2010/03/04 80.12 AUD/JPY Lev ×1.5
 2010/02/16 81.15 AUD/JPY Lev ×1.5
 2009/11/04 81.01 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/01/29 80.01 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2009/12/11 81.38 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)
 2010/01/06 84.86 AUD/JPY Lev ×1.5 (ショート)

 …以下省略…


「資源国通貨は底打ちしました。
 豪中銀は政策金利を引き上げ始めており、
 豪ドルは緩やかな上昇トレンドに入っています」

中長期的な見通しは変更ありません。

「84円から74円のレンジ圏を想定」  ← 修正を忘れていました。。

豪ドルの短期的な見通しも変化なし。

「豪ドルは80円台前半で大きな抵抗に遭う」

豪ドルもユーロも一度は下がらないと上に抜けないでしょう。

……ユーロもドルもチャートの崩れ方が悪い。

※ くれぐれも投資家各位で御判断下さい。
※ このウェブログを参考とし、めでたく投資収益を得られた方は、
  収益への課税分を社会に貢献する組織・団体に寄付して下さい。
  (当ウェブログの こちらのカテゴリーも御覧下さい。)
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