今週の『週刊東洋経済』の定年後就業の特集は予想より良かった。
特集冒頭にある通り『「ほどほどに働く」がシニアの本音』であろう。
就労スタンスが日本女性と驚く程によく似ていて、
〝都合のよい時間に働きたい〟から「希望する働き方」は非正規で、
「希望月収」の過半が10万円未満。いかにも「低温」である。
当ウェブログは、日本の高齢層は個々のスキルの差が非常に大きく、
政府が雇用を創出する必要性に迫られると指摘してきたが、
矢張り案の定である。放置しておくと就労は進まず、格差が拡大するだろう。
……メイン特集以外では、ビームスの記事が矢張り良かった。
昔からセレクトショップの中でもビームスが個人的に好きで
何故か感性の合うところがあると思っていたが、その理由の一端が分かった気がする。
企業理念と言うか、哲学が他社と全く違う。それが商品セレクトに出ているのだ。
東洋経済のサブ特集、再エネ特集は本当に素晴らしい。
これは真に称賛に値する取材記事だ。
「電力の大問題」と題して日本のエネルギー政策や業界の歪みを
真っ向から批判している正々堂々の論である。
「ドイツでは今年、洋上風力で補助金ゼロの事例が出ているそうだ。
日本で風力のコストがなかなか下がらないのは、この記事ではアセスの厳しさとしているが、
それけではないだろう。送電網と風力発電所との接続を遅滞させる政治力が働いていること、
送電網整備に不熱心で原子力を温存したいと企む利権勢力と癒着した政府が原因である」
と当ウェブログは先週に書いたが、案の定であった。
日本では「送電網の闇」の中に政府の利権癒着が隠れている。
この癌細胞を摘出しない限り、改革は遅々として進まず、
投資増や低炭素化が進展しないばかりか
真のエネルギー安全保障も実現しないであろう。
この素晴らしい記事では以下のように
日本の電力分野の「不都合な真実」を暴いている。
・東北電力の昨夏ピーク時の送電利用率は僅か18%、原発や火力のため温存している
・日本の風力事業者はロシアンルーレットのような法外な工事負担金を要求される
・風力が妨害される日本とは対照的、世界の風力産業市場は欧米企業に席巻されている
・「世界の常識は日本の非常識」、世界では5MW級巨大風車や低風速風車も出現
・スペインは日本同様に風況が良くないが、風力のシェアは20%超に
(風向きが変わりやすい、乱流が多い点で日本とスペインは似ている)
・欧州では再生可能エネを受け入れられる国際送電網の増強が大ブームに
(利権を擁護する日本経済の成長率が欧州に劣るのは至極当然の結果である)
既存大手事業者が国民に向かってとんでもない嘘をついていることは、
いま世界で起きている事実に照らして明白である。
日本は、利権勢力によって牛耳られた「原発利権ガラパゴス」なのだ。
送電網については少なくとも省庁には情報公開させ、
(情報を公開させず、悪質な情報操作を許しているから国民が欺かれるのだ)
再生可能エネルギーのゾーニングを行うべきである。
再生可能エネはコストを重視した促進策を採り、
高コストであるかのように偽る悪質な情報操作を粉砕しなければならない。
そうしなければ半永久的に日本を支える再生可能エネを合理的に普及させることができず、
日本経済は投資低迷でエネルギーコスト高止まり、地方経済は衰弱する一方になるのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
ダイヤモンドのソフトバンク特集もかなり良い。
「大企業病」になりかけているとの懸念が出ているようだ。
これもアップルは既に越えた壁だから、ソフトバンク自身の自己革新力に期待したい。
「まるでソニー」と憤る社員は外へ出るべきであろう。
意外な収穫だったのは加藤出氏のコラム「日銀の脱デフレシナリオに狂い」。
週休三日制を取り入れる企業が増えている理由を探った内容で、
価格への転嫁ができない企業は賃上げに踏み切れず、
キャッシュアウトを増加させない(つまり安い)人材確保の手段として
週休三日制が利用されているというのだ。
しかもそれは賃上げより時短を求める若年層のニーズと一致する、との見立て。
日本企業がまた新しいコスト削減のイノベーションを発見し、
インフレ目標2%はまた遠ざかったと加藤氏は見ている。
◇ ◇ ◇ ◇
エコノミストのメイン特集は想定内の内容だったが、
サブで後半に「討論」があって興味深いものであった。
「物価2%目標達成できるか」では、ほぼ「失敗」が見えている。
嶋中氏は相変わらず強気だが、本当に2%インフレとなったら日本は景気後退である。
CPIの推移を見る限りでは、既に吉川氏の勝利は見えていると言えよう。
「賃上げできるか」についても、湯元氏の「完勝」であろう。
嶋津氏は旧態依然の「労働市場の逼迫」を理由に挙げているが、
企業の売上高や国内消費が伸びていないのに賃上げできる訳がない。
そうした面で賃上げが進まないとする湯元氏が正しいが、理由は正しくない。
賃上げが進まない真の理由は少子高齢化と女性の就業抑制である。
その二つが国内消費を停滞させ、企業を慎重にさせているのだ。
(その証拠に、日本より女性就業が進んでいる欧州諸国は日本より成長率が総じて高い)
市場分析では、誰しもが思うところだろうが
展開が予想できない北朝鮮問題が現下での唯一最大のリスク要因のようだ。
海外の材料で非常に気になるのは、
サウジが直近でマイナス成長になったという点だ。
サウジに関しては前々から人口動態の問題が指摘されている。
(エマニュエル・トッド等による)
何しろ大産油国で米の中東戦略の要だったから、
もしリスク要因となるなら重大な事態を迎えるのは間違いない。
◇ ◇ ◇ ◇
次週も注目は東洋経済、「電力シリーズ」が余りにも素晴らしいので「太陽光の正念場」にも期待大!
▽ ただ国語力だけでは駄目で、心理学やマーケティングを組み合わせるべきでは?
▽ 勉強や独学の結果、どう成長できたかが抜けている気がするダイヤモンド特集
▽ エコノミスト特集は「らしい」自動化特集
「地下水マネジメント」というマニアック過ぎて誰も分からないようなレポートも或る意味で凄い。
特集冒頭にある通り『「ほどほどに働く」がシニアの本音』であろう。
就労スタンスが日本女性と驚く程によく似ていて、
〝都合のよい時間に働きたい〟から「希望する働き方」は非正規で、
「希望月収」の過半が10万円未満。いかにも「低温」である。
当ウェブログは、日本の高齢層は個々のスキルの差が非常に大きく、
政府が雇用を創出する必要性に迫られると指摘してきたが、
矢張り案の定である。放置しておくと就労は進まず、格差が拡大するだろう。
……メイン特集以外では、ビームスの記事が矢張り良かった。
昔からセレクトショップの中でもビームスが個人的に好きで
何故か感性の合うところがあると思っていたが、その理由の一端が分かった気がする。
企業理念と言うか、哲学が他社と全く違う。それが商品セレクトに出ているのだ。
『週刊東洋経済』2017年9/30号 (50歳から考える 定年後の仕事選び) | |
東洋経済のサブ特集、再エネ特集は本当に素晴らしい。
これは真に称賛に値する取材記事だ。
「電力の大問題」と題して日本のエネルギー政策や業界の歪みを
真っ向から批判している正々堂々の論である。
「ドイツでは今年、洋上風力で補助金ゼロの事例が出ているそうだ。
日本で風力のコストがなかなか下がらないのは、この記事ではアセスの厳しさとしているが、
それけではないだろう。送電網と風力発電所との接続を遅滞させる政治力が働いていること、
送電網整備に不熱心で原子力を温存したいと企む利権勢力と癒着した政府が原因である」
と当ウェブログは先週に書いたが、案の定であった。
日本では「送電網の闇」の中に政府の利権癒着が隠れている。
この癌細胞を摘出しない限り、改革は遅々として進まず、
投資増や低炭素化が進展しないばかりか
真のエネルギー安全保障も実現しないであろう。
この素晴らしい記事では以下のように
日本の電力分野の「不都合な真実」を暴いている。
・東北電力の昨夏ピーク時の送電利用率は僅か18%、原発や火力のため温存している
・日本の風力事業者はロシアンルーレットのような法外な工事負担金を要求される
・風力が妨害される日本とは対照的、世界の風力産業市場は欧米企業に席巻されている
・「世界の常識は日本の非常識」、世界では5MW級巨大風車や低風速風車も出現
・スペインは日本同様に風況が良くないが、風力のシェアは20%超に
(風向きが変わりやすい、乱流が多い点で日本とスペインは似ている)
・欧州では再生可能エネを受け入れられる国際送電網の増強が大ブームに
(利権を擁護する日本経済の成長率が欧州に劣るのは至極当然の結果である)
既存大手事業者が国民に向かってとんでもない嘘をついていることは、
いま世界で起きている事実に照らして明白である。
日本は、利権勢力によって牛耳られた「原発利権ガラパゴス」なのだ。
送電網については少なくとも省庁には情報公開させ、
(情報を公開させず、悪質な情報操作を許しているから国民が欺かれるのだ)
再生可能エネルギーのゾーニングを行うべきである。
再生可能エネはコストを重視した促進策を採り、
高コストであるかのように偽る悪質な情報操作を粉砕しなければならない。
そうしなければ半永久的に日本を支える再生可能エネを合理的に普及させることができず、
日本経済は投資低迷でエネルギーコスト高止まり、地方経済は衰弱する一方になるのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
ダイヤモンドのソフトバンク特集もかなり良い。
「大企業病」になりかけているとの懸念が出ているようだ。
これもアップルは既に越えた壁だから、ソフトバンク自身の自己革新力に期待したい。
「まるでソニー」と憤る社員は外へ出るべきであろう。
『週刊ダイヤモンド』2017年 9/30号 (孫正義が知らないソフトバンク) | |
意外な収穫だったのは加藤出氏のコラム「日銀の脱デフレシナリオに狂い」。
週休三日制を取り入れる企業が増えている理由を探った内容で、
価格への転嫁ができない企業は賃上げに踏み切れず、
キャッシュアウトを増加させない(つまり安い)人材確保の手段として
週休三日制が利用されているというのだ。
しかもそれは賃上げより時短を求める若年層のニーズと一致する、との見立て。
日本企業がまた新しいコスト削減のイノベーションを発見し、
インフレ目標2%はまた遠ざかったと加藤氏は見ている。
◇ ◇ ◇ ◇
エコノミストのメイン特集は想定内の内容だったが、
サブで後半に「討論」があって興味深いものであった。
「物価2%目標達成できるか」では、ほぼ「失敗」が見えている。
嶋中氏は相変わらず強気だが、本当に2%インフレとなったら日本は景気後退である。
CPIの推移を見る限りでは、既に吉川氏の勝利は見えていると言えよう。
「賃上げできるか」についても、湯元氏の「完勝」であろう。
嶋津氏は旧態依然の「労働市場の逼迫」を理由に挙げているが、
企業の売上高や国内消費が伸びていないのに賃上げできる訳がない。
そうした面で賃上げが進まないとする湯元氏が正しいが、理由は正しくない。
賃上げが進まない真の理由は少子高齢化と女性の就業抑制である。
その二つが国内消費を停滞させ、企業を慎重にさせているのだ。
(その証拠に、日本より女性就業が進んでいる欧州諸国は日本より成長率が総じて高い)
『週刊エコノミスト 2017年10月03日号』 | |
市場分析では、誰しもが思うところだろうが
展開が予想できない北朝鮮問題が現下での唯一最大のリスク要因のようだ。
海外の材料で非常に気になるのは、
サウジが直近でマイナス成長になったという点だ。
サウジに関しては前々から人口動態の問題が指摘されている。
(エマニュエル・トッド等による)
何しろ大産油国で米の中東戦略の要だったから、
もしリスク要因となるなら重大な事態を迎えるのは間違いない。
◇ ◇ ◇ ◇
次週も注目は東洋経済、「電力シリーズ」が余りにも素晴らしいので「太陽光の正念場」にも期待大!
▽ ただ国語力だけでは駄目で、心理学やマーケティングを組み合わせるべきでは?
『週刊東洋経済』2017年10/7号 (学び直し国語力 ビジネスに効く! 「書き方」「話し方」) | |
▽ 勉強や独学の結果、どう成長できたかが抜けている気がするダイヤモンド特集
『週刊ダイヤモンド』2017年 10/7号 (これなら続けられる! 「独学力」) | |
▽ エコノミスト特集は「らしい」自動化特集
『週刊エコノミスト』2017年10月10日号 | |
「地下水マネジメント」というマニアック過ぎて誰も分からないようなレポートも或る意味で凄い。