今週の『ダイヤモンド』の特集「金融エリートの没落」は、
絞り込み過ぎなのではないかと最初思ったのだが、杞憂だった。
「銀行〝余命〟ランキング ワースト25」のような凄みある記事が並んでいる。
貸出金利低下がメガバンク(緑)を直撃し、ワーストランキングに載っているのが驚きである。
特に「金融エリートがはまったマイナス金利底なし沼」や
AI・フィンテックの打撃で「消える職種を徹底アンケート」を強く推したい。
(恐らく、業界は懸念をずばりと言い当てられて騒然としている筈だ)
この調子で、編集部にはぜひ「「女性活躍」の虚妄」「「働き方改革」の嘘」特集を期待したい。
「日本の金融業は結局、アベノミクスで衰退する日本経済と一蓮托生の運命なのだろう」
と当ウェブログは先週書いたが、その通りの内容だったかもしれない。
巻頭の「移転延期でも解決できない豊洲新市場の根本的な欠陥」も切れ味鋭く、
ダイヤモンド編集部の底力を感じる力作の号だった。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊エコノミスト』もいつも通りに質が高かった。
マクロ分析では矢張りエコノミストが最も優れている。
個人的に高く評価したいのがUBSの青木大樹氏の論考だ。
「貿易総量停滞で〝日本化〟する世界経済」と題して、
多くの先進国が日本と同じ「人口オーナス期」に突入する一方で
「第二の中国」となるべきインドはまだ世界の牽引役になれない現状を記している。
ただ青木氏は処方箋として凡庸な生産性向上や技術革新しか紹介しておらず、
なぜスウェーデンが3%成長でアメリカを上回っているかよくよく考えて欲しいものだ。
また、元国際投信の堀井正孝氏の素晴らしい寄稿があり、
「米国の景気と株価 長短金利差縮小なら株下落か」
とした鋭い分析を見逃さないようにしたい。
「米株高はグローバル資金の流入という特殊要因により
実体経済離れしている可能性がある」
との指摘には全く同感である。
日銀が完全に思考停止している日本も、必ず米株の影響を受けるから要注意だ。
エコノミスト・レポートは大学病院の苦しい現状を捉えた
島本明氏の力の入った取材・論考で、非常に価値が高い。
群大の医療事故の背景に、独法化によるコスト意識強化の弊害があったこと、
人事抗争をはじめ大学側のガバナンスの問題があったこと、
懲戒解雇や論旨解雇が出る異常事態も理由なきことではなかったことが分かる。
急速な高齢化・人口減少が進む日本の税収が伸びる筈がない以上、
ノバルティス問題で民間企業からの資金獲得に暗雲が漂っている以上、
医師を含めた高所得層の負担増も必至と言わざるを得ない。
他には、78ページの「現状の送電インフラ活用で全電源の50%再エネも可能」が良い。
九電が以前、これ以上の再生可能エネルギーは受け入れ不可能と称していたが、
矢張りトリックがあったようだ。原発稼働を前提としていた上に、
活用できる筈の地域間連系線を無視した意図的な結論だったのである。
結局は電力会社の収益や経営の都合で結論を変えてくるのだから、
絶対に検証が必要だと改めて確信させる内容であった。
風力や地中熱への投資増で締め上げない限り、こうした企業体質は絶対に変わらないのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
『東洋経済』の幸之助特集は悪くはないが、
「日本企業の活力低下を示唆する」ものと捉えている。
松下翁は確かに偉大な経営者で、その著者は素晴らしい。
しかし、なぜ「今」取り上げるのか。
パナソニックが存続の危機に陥ったのはごく最近、
松下翁の経営思想や手法が現代の日本企業を救うかどうかは甚だ疑問だ。
「不況さらによし」も、松下翁が存命だった人口増の時代には良かっただろう。
今は歴史上経験したことのない急激な高齢化と需要沈滞の時代である。
個人的には、松下翁より稲盛氏の哲学や手法の方が今の時代に重要と思う。
後半にある横浜ベイスターズの池田社長へのインタビューの方が面白いと思う。
詳しい経営改善手法は余り聞き出していないような気もするが。
◇ ◇ ◇ ◇
次週もダイヤモンドに注目、メイン特集より興味深い「日銀有力OB2人が明かす金融緩和の功罪」。
▽ 孫子は冷酷非道な中国大陸の乱世に生まれた書なので「副作用」も大きいと思うのだが。。
▽ きちんと大量殺処分の無惨な現実も取り上げて欲しい東洋経済特集
▽ エコノミストは、今はまだ焦点にはならないと思われる中国経済特集
レポート「日本経済は第三の停滞期」の方が質は高そうだ。
絞り込み過ぎなのではないかと最初思ったのだが、杞憂だった。
「銀行〝余命〟ランキング ワースト25」のような凄みある記事が並んでいる。
貸出金利低下がメガバンク(緑)を直撃し、ワーストランキングに載っているのが驚きである。
特に「金融エリートがはまったマイナス金利底なし沼」や
AI・フィンテックの打撃で「消える職種を徹底アンケート」を強く推したい。
(恐らく、業界は懸念をずばりと言い当てられて騒然としている筈だ)
この調子で、編集部にはぜひ「「女性活躍」の虚妄」「「働き方改革」の嘘」特集を期待したい。
「日本の金融業は結局、アベノミクスで衰退する日本経済と一蓮托生の運命なのだろう」
と当ウェブログは先週書いたが、その通りの内容だったかもしれない。
『週刊ダイヤモンド』2016年 9/3号 (金融エリートの没落) | |
巻頭の「移転延期でも解決できない豊洲新市場の根本的な欠陥」も切れ味鋭く、
ダイヤモンド編集部の底力を感じる力作の号だった。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊エコノミスト』もいつも通りに質が高かった。
マクロ分析では矢張りエコノミストが最も優れている。
個人的に高く評価したいのがUBSの青木大樹氏の論考だ。
「貿易総量停滞で〝日本化〟する世界経済」と題して、
多くの先進国が日本と同じ「人口オーナス期」に突入する一方で
「第二の中国」となるべきインドはまだ世界の牽引役になれない現状を記している。
ただ青木氏は処方箋として凡庸な生産性向上や技術革新しか紹介しておらず、
なぜスウェーデンが3%成長でアメリカを上回っているかよくよく考えて欲しいものだ。
また、元国際投信の堀井正孝氏の素晴らしい寄稿があり、
「米国の景気と株価 長短金利差縮小なら株下落か」
とした鋭い分析を見逃さないようにしたい。
「米株高はグローバル資金の流入という特殊要因により
実体経済離れしている可能性がある」
との指摘には全く同感である。
日銀が完全に思考停止している日本も、必ず米株の影響を受けるから要注意だ。
『週刊エコノミスト』2016年09月06日号 | |
エコノミスト・レポートは大学病院の苦しい現状を捉えた
島本明氏の力の入った取材・論考で、非常に価値が高い。
群大の医療事故の背景に、独法化によるコスト意識強化の弊害があったこと、
人事抗争をはじめ大学側のガバナンスの問題があったこと、
懲戒解雇や論旨解雇が出る異常事態も理由なきことではなかったことが分かる。
急速な高齢化・人口減少が進む日本の税収が伸びる筈がない以上、
ノバルティス問題で民間企業からの資金獲得に暗雲が漂っている以上、
医師を含めた高所得層の負担増も必至と言わざるを得ない。
他には、78ページの「現状の送電インフラ活用で全電源の50%再エネも可能」が良い。
九電が以前、これ以上の再生可能エネルギーは受け入れ不可能と称していたが、
矢張りトリックがあったようだ。原発稼働を前提としていた上に、
活用できる筈の地域間連系線を無視した意図的な結論だったのである。
結局は電力会社の収益や経営の都合で結論を変えてくるのだから、
絶対に検証が必要だと改めて確信させる内容であった。
風力や地中熱への投資増で締め上げない限り、こうした企業体質は絶対に変わらないのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
『東洋経済』の幸之助特集は悪くはないが、
「日本企業の活力低下を示唆する」ものと捉えている。
松下翁は確かに偉大な経営者で、その著者は素晴らしい。
しかし、なぜ「今」取り上げるのか。
パナソニックが存続の危機に陥ったのはごく最近、
松下翁の経営思想や手法が現代の日本企業を救うかどうかは甚だ疑問だ。
「不況さらによし」も、松下翁が存命だった人口増の時代には良かっただろう。
今は歴史上経験したことのない急激な高齢化と需要沈滞の時代である。
個人的には、松下翁より稲盛氏の哲学や手法の方が今の時代に重要と思う。
『週刊東洋経済』2016年9/3号 (不滅のリーダー 松下幸之助) | |
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後半にある横浜ベイスターズの池田社長へのインタビューの方が面白いと思う。
詳しい経営改善手法は余り聞き出していないような気もするが。
◇ ◇ ◇ ◇
次週もダイヤモンドに注目、メイン特集より興味深い「日銀有力OB2人が明かす金融緩和の功罪」。
▽ 孫子は冷酷非道な中国大陸の乱世に生まれた書なので「副作用」も大きいと思うのだが。。
『週刊ダイヤモンド』2016年 9/10号 (現代に通じる「不敗」の戦略 孫子) | |
▽ きちんと大量殺処分の無惨な現実も取り上げて欲しい東洋経済特集
『週刊東洋経済 2016年9/10号』 (みんなペットに悩んでる) | |
▽ エコノミストは、今はまだ焦点にはならないと思われる中国経済特集
『週刊エコノミスト』2016年09月13日号 | |
レポート「日本経済は第三の停滞期」の方が質は高そうだ。