今週の週刊エコノミストの特集「AIと銀行」は時期尚早な印象。
もう暫くしたらまた新しい展開が見えただろうに。
それよりも異常な金融緩和策とフィンテックの挟み撃ちで
リストラと採用絞り込みに走らざるを得ない銀行の苦境、
新しい収益源を求めた結果、スルガ銀行のようにシェアハウス問題に関わったり、
消費者ローン問題で批判されたりしている状況を特集した方が良いのでは?
(実際、スルガの株価は大幅に下落している)
…それでもエコノミストを先頭に持ってきたのは、
「戦後最長の景気回復に疑義」(78頁)が非常に素晴らしいからだ。
第一生命の永濱利広氏が書いているのが重要で、
氏は第二次安倍政権成立当初にはアベノミクスを賞賛していたが、
森友・公文書改竄スキャンダルを受けて「安倍政権は終わりだ」と見切ったのだろう、
アベノミクスの「成果」に対し、恐らく初めての厳しい批判を行っている。
機を見るに敏な形勢判断と言うしかない。
内容は至極妥当なもので、2012年が景気後退なら2014年も景気後退である筈、
(経済指標から見て明白で、内閣府は財務省のように公文書改竄したも同然である)
直近でGDPデフレーターも単位労働コストも実質賃金もマイナスに陥っているのだから
安倍政権はデフレ脱却に失敗しつつある、との趣旨である。
経済指標を「忖度」「固定観念」なしで見れば、「戦後最長の景気回復」でなく
小峰隆夫教授の指摘の通り、戦後最長の「横ばい」と判断するのが妥当であろう。
また、今年になってからスフィンクスの藻谷氏が
景況への警戒感を強めているのが注目される。
世界主要17ヵ国のCPIが減速傾向になりつつあり、
金融政策は流動的になる恐れがあるとのことだ。
…FRBが予想に反し利上げ見送りに転じれば、円高は間違いないだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
ダイヤモンドの中高一貫校特集、定番であるが確実に売れる学校教育がテーマである。
驚くほど新しい情報はないが、毎年新しい顧客層が流入してくる分野なので
情報をアップデートしつつ人気特集にできるのだろう。
ただ、個人的には失敗必至の大学入試改革に右往左往して
教育関連産業(私学を含む)がマーケティングに走る構図はかなり不健全と思う。
「開成ショック」と言っても、上位三分の一以外には無縁な話で、
それ以外に高度な読解力や思考力を求めても「鶏に牛刀」の類ではなから無理だ。
「また政府のお花畑な入試制度変更で、俊敏な教育産業や私学が儲けるという馬鹿馬鹿しい展開」
と当ウェブログは厳しく批判したが、これには構造的な要因がある。
私学をはじめとする教育産業は、成果の検証に余りに時間がかかるため
質の向上に務める地道な努力や客観的検証より目先の集客に奔走する体質がある。
そこで「いかにも売れそうな見た目のよい教育コンテンツ」をアピールする、
表面的な糊塗策に走らざるを得なくなるのである。
これこそ、教育メディアでは有名な進学校が出身者にはしばしば意外に評判が悪く、
幻想を抱いた親の過剰期待による子供の進路の「ミスマッチ」が増える原因である。
…だからメディアには「事後検証」を大事にして欲しいと思っている。
自民党の国会議員が典型的だが、自分勝手なことを言いたい放題で周囲を振り回し、
「事後検証」は殆ど行わない、責任も取らないというのが日本の教育行政なのだ。
後半にはガソリンスタンドの減少問題が出ている。
ガソリンスタンドこそ太陽電池を備えEVの充電スタンドにすべきで、
太陽光とバイオマス熱利用の拠点として用途転換が必要だ。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊東洋経済』の電力特集は、やや鋭さに欠けるもののタイムリーだ。
送電網の問題は既得権との正面衝突を伴うので「自粛」したのであろう。
(メイン特集より目立たないサブ特集の方が勇敢な記事だった)
再生可能エネで急成長したスペインのイベルドローラ社の役員は
「風力発電は信用できる電源」と言い切っているインタビュー(30頁)、
ドイツの電力ベンチャーの興隆(31頁)をもっと派手に取り上げるべきだろう。
また、編集部の主要28社アンケートでは意外なことに
「低炭素の電源」を求める意見が第二位(一位は予想通り「料金」)、
CO2削減策として検討している第一位が「省エネとコージェネ」。
エネルギー転換は漸くではあるが、日本でも進みつつあるようだ。
他には「ジャパニーズウイスキー ブーム裏のお寒い実態」が良い。
日本に余り恩恵が及ばない和食ブームと似たところがあるから、
良い話であっても冷静に捉える必要がある。
◇ ◇ ◇ ◇
次週もダイヤモンドに注目、橋本健二氏の「階級社会」と財務省の「改竄」が今年を象徴する語だろう。
▽ 富裕層と貧困層の利己主義、リベラルの欺瞞と自称保守の冷血が根底にあるのを書いて欲しいが
▽ 重要テーマだが、高齢者バラ撒きは無視して吉川洋が出るようでは期待薄の東洋経済
▽ 「マンション販売は「最後のうたげ」 東京五輪後に大幅安の可能性」とあるエコノミスト
洋上風力発電の入札など失敗するに決まっている、送電網を原発のため温存したい電力大手の罠だ。
もう暫くしたらまた新しい展開が見えただろうに。
それよりも異常な金融緩和策とフィンテックの挟み撃ちで
リストラと採用絞り込みに走らざるを得ない銀行の苦境、
新しい収益源を求めた結果、スルガ銀行のようにシェアハウス問題に関わったり、
消費者ローン問題で批判されたりしている状況を特集した方が良いのでは?
(実際、スルガの株価は大幅に下落している)
…それでもエコノミストを先頭に持ってきたのは、
「戦後最長の景気回復に疑義」(78頁)が非常に素晴らしいからだ。
第一生命の永濱利広氏が書いているのが重要で、
氏は第二次安倍政権成立当初にはアベノミクスを賞賛していたが、
森友・公文書改竄スキャンダルを受けて「安倍政権は終わりだ」と見切ったのだろう、
アベノミクスの「成果」に対し、恐らく初めての厳しい批判を行っている。
機を見るに敏な形勢判断と言うしかない。
内容は至極妥当なもので、2012年が景気後退なら2014年も景気後退である筈、
(経済指標から見て明白で、内閣府は財務省のように公文書改竄したも同然である)
直近でGDPデフレーターも単位労働コストも実質賃金もマイナスに陥っているのだから
安倍政権はデフレ脱却に失敗しつつある、との趣旨である。
経済指標を「忖度」「固定観念」なしで見れば、「戦後最長の景気回復」でなく
小峰隆夫教授の指摘の通り、戦後最長の「横ばい」と判断するのが妥当であろう。
『エコノミスト』2018年 4/3号 | |
また、今年になってからスフィンクスの藻谷氏が
景況への警戒感を強めているのが注目される。
世界主要17ヵ国のCPIが減速傾向になりつつあり、
金融政策は流動的になる恐れがあるとのことだ。
…FRBが予想に反し利上げ見送りに転じれば、円高は間違いないだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
ダイヤモンドの中高一貫校特集、定番であるが確実に売れる学校教育がテーマである。
驚くほど新しい情報はないが、毎年新しい顧客層が流入してくる分野なので
情報をアップデートしつつ人気特集にできるのだろう。
ただ、個人的には失敗必至の大学入試改革に右往左往して
教育関連産業(私学を含む)がマーケティングに走る構図はかなり不健全と思う。
「開成ショック」と言っても、上位三分の一以外には無縁な話で、
それ以外に高度な読解力や思考力を求めても「鶏に牛刀」の類ではなから無理だ。
「また政府のお花畑な入試制度変更で、俊敏な教育産業や私学が儲けるという馬鹿馬鹿しい展開」
と当ウェブログは厳しく批判したが、これには構造的な要因がある。
私学をはじめとする教育産業は、成果の検証に余りに時間がかかるため
質の向上に務める地道な努力や客観的検証より目先の集客に奔走する体質がある。
そこで「いかにも売れそうな見た目のよい教育コンテンツ」をアピールする、
表面的な糊塗策に走らざるを得なくなるのである。
これこそ、教育メディアでは有名な進学校が出身者にはしばしば意外に評判が悪く、
幻想を抱いた親の過剰期待による子供の進路の「ミスマッチ」が増える原因である。
…だからメディアには「事後検証」を大事にして欲しいと思っている。
自民党の国会議員が典型的だが、自分勝手なことを言いたい放題で周囲を振り回し、
「事後検証」は殆ど行わない、責任も取らないというのが日本の教育行政なのだ。
『週刊ダイヤモンド』2018年 3/31号 (大学新入試に勝つ! 中高一貫校) | |
後半にはガソリンスタンドの減少問題が出ている。
ガソリンスタンドこそ太陽電池を備えEVの充電スタンドにすべきで、
太陽光とバイオマス熱利用の拠点として用途転換が必要だ。
◇ ◇ ◇ ◇
『週刊東洋経済』の電力特集は、やや鋭さに欠けるもののタイムリーだ。
送電網の問題は既得権との正面衝突を伴うので「自粛」したのであろう。
(メイン特集より目立たないサブ特集の方が勇敢な記事だった)
再生可能エネで急成長したスペインのイベルドローラ社の役員は
「風力発電は信用できる電源」と言い切っているインタビュー(30頁)、
ドイツの電力ベンチャーの興隆(31頁)をもっと派手に取り上げるべきだろう。
また、編集部の主要28社アンケートでは意外なことに
「低炭素の電源」を求める意見が第二位(一位は予想通り「料金」)、
CO2削減策として検討している第一位が「省エネとコージェネ」。
エネルギー転換は漸くではあるが、日本でも進みつつあるようだ。
『週刊東洋経済』2018年3月31日号 (脱炭素化とマネーが起爆剤 電力激変) | |
他には「ジャパニーズウイスキー ブーム裏のお寒い実態」が良い。
日本に余り恩恵が及ばない和食ブームと似たところがあるから、
良い話であっても冷静に捉える必要がある。
◇ ◇ ◇ ◇
次週もダイヤモンドに注目、橋本健二氏の「階級社会」と財務省の「改竄」が今年を象徴する語だろう。
▽ 富裕層と貧困層の利己主義、リベラルの欺瞞と自称保守の冷血が根底にあるのを書いて欲しいが
『週刊ダイヤモンド』2018年 4/7号 (1億総転落 新・階級社会) | |
▽ 重要テーマだが、高齢者バラ撒きは無視して吉川洋が出るようでは期待薄の東洋経済
『週刊東洋経済』2018年4月7日号 (20年後ニッポンの難題 衝撃の未来像) | |
▽ 「マンション販売は「最後のうたげ」 東京五輪後に大幅安の可能性」とあるエコノミスト
『週刊エコノミスト』2018年04月10日号 | |
洋上風力発電の入札など失敗するに決まっている、送電網を原発のため温存したい電力大手の罠だ。