年の暮れです。
皆さんは初詣に続々と向かっているところでしょうか。
今回は予約投稿を活用してみました。
この頃漸く北野幸伯氏の言論活動が知られてきました。
北野氏はロシアの名門大学で学んだだけあって、
一般の日本人が鈍感なリアルポリティークに鋭敏です。
今後、資源ナショナリズムと多極化(=脱秩序化)の進む世界を
読み解くために、注目すべき人物の一人であると見ています。
資源大国・日本の誕生:北野幸伯(Voice)
http://news.goo.ne.jp/article/php/politics/php-20081219-04.html?fr=rk
”数年先を知るのは困難だが、長期で未来を予測するのは、逆に簡単である。
長期的に見ると、世界的エネルギー危機が起こる可能性が高い。
第1の理由は、世界の人口が年8000万人ずつ増えていること。つまりエネ
ルギー需要は1年間に8000万人分ずつ増えていくのだ。米商務省の予測に
よると、世界人口は2013年に70億人、27年に80億人、45年に90億人を突
破する。
第2の理由は、世界経済の拡大によりエネルギー需要が増加していくこと。
米エネルギー省によると、1日当たりの世界石油消費量は2000年の約7700
万バレルから、05年には8500万バレル、10年9400万バレル、15年1億
200万バレル、20年1億1000万バレルと増加しつづけていく。石油消費量
が特に急増していく見通しなのが、中国とインド。
第3の理由は、新エネルギーの普及が進まないこと。
「石油の話ばかりするが、新エネルギーが普及していくのではないか?」
と疑問を抱かれる人もいるだろう。しかし、現時点での見通しは暗い。
2000年の時点で、石油は世界のエネルギー消費の39%を占めていた。2位
は石炭で24%、3位は天然ガス(22%)、4位原子力(6%)。
20年になるとどうなるのだろうか?
37%が石油。20年間で2%しか減らない。減るといってもエネルギー消費
全体内の割合が減るだけで、量は前記のように増加しつづけていく。
2位は天然ガス(29%)、3位石炭で22%。残り12%のなかに原子力、水
力、風力、太陽エネルギー、燃料電池などが含まれる。
新エネルギーと期待される、風力・太陽エネルギー・燃料電池を全部合わ
せても、20年の段階で全エネルギー消費の5~6%にしかならない。
第4の理由は、石油が枯渇する日が近づいていること。世界を牛耳るイギ
リス・アメリカの油田がすでに枯渇しつつあるのは、よく知られた事実で
ある。そればかりか、遅くても2040年ごろには世界的に石油不足が深刻化
していくと予想される。
以上4つから、長期的に石油価格は上昇しつづけていくとの結論に行き着
く。
もう1つ重要なのは、石油の供給が減少していく過程で、石油獲得戦争が
起こる可能性がある。〔中略〕”
→ 私は逆に、代替エネルギーの拡大余地の大きさを
改めて確認しました。フロンティアは確実に見えています。
日本の技術力と開発力が世界を救う日が近づいている、
そのような読み方もできるでしょう。
”日本の進路を語るとき、排除されなければならないのは、「石油争奪戦」
に参戦することである。米中ロは現在、熾烈な資源獲得競争を繰り広げて
いる。いずれも、自国の利益のためなら何でもありのワイルドな大国であ
る。日本は第2次大戦時、この3大国を敵に回して敗れた。同じ過ちを繰
り返してはならない。
では、日本はどうすればいいのか?
エネルギー自給率100%をめざすべきなのだ。
〔中略〕
メタンハイドレートという新エネルギーがある。簡単にいうと、「凍結状
態のメタンガス」。メタンハイドレートは、メタンを中心に周囲を水分子
が囲んだかたちになっている物質で、ほとんどは海底にある。
見た目は氷と同じ。しかし、火を付けると燃えるので、「燃える氷」と呼
ばれている。一立方メートルのメタンハイドレートを解凍すると164立方
メートルのメタンガスになる。
石油、石炭と比較すると、燃焼時の二酸化炭素は半分ほど。温暖化対策に
も有効な新エネルギーなのだ。
米地質調査所とエネルギー省のデータによると、世界のメタンハイドレー
トは、陸域で数十兆立方メートル、海域で数千兆立方メートル。これは、
世界天然ガス確認埋蔵量(145兆立方メートル)数十倍。天然ガス、原油、
石炭の総埋蔵量の2倍以上といわれている。まさに世界を救う新エネルギ
ーといえる。
ここからが重要。メタンハイドレートは日本周辺にたっぷりあることがわ
かっている。
米エネルギー省によると、南海トラフ(東海地方沖から宮崎県沖)北側に
4200億~4兆2000億立方メートル。地質調査所の調査では、南海トラフ、
北海道周辺海域に、6兆立方メートルが存在する。これは、日本の天然ガ
ス使用量の100年分に匹敵する。
日本近海は、なんと世界最大のメタンハイドレート量を誇っている。その
ため、日本は石油枯渇後、世界最大のエネルギー資源大国になる可能性が
ある。
実際、政府、東京ガス、三井造船、三菱重工、日立製作所、新日本石油な
どが、すでに研究開発に取り組んでいる。〔以下略〕”
元記事はもっと長いので、是非全文をお読み下さい。
いとすぎも当ウェブログで書いてきましたが、
メタンハイドレートが実用化されれば
今の日本の抱える問題はほぼすべて解決します。
残るはオランダ病と怠惰とパラサイト根性だけになります。
この未利用資源の重要性を広く伝えた功績は確実に大きいです。
一方、商業利用まで十年はかかると想定されていること、
また、メタンハイドレートの埋蔵海域を巡って
国益追求の姿勢を剥き出しにした中国とロシアとの
紛争に突入する可能性があることも明白です。
北野氏はそこまで言及すべきだったと考えます。
更に、経済政策に関しては国際政治ほどの鋭い分析が見られません。
アメリカは減税だけで経済成長を遂げたのではありません。
イギリスも全般に日本より税負担が重い国です。
日本のように社会保障分野の赤字が巨額(=未来世代に転嫁している)
にのぼる国で、一律減税はすべきではありません。
既に氏の信奉者のなかには自分に都合の良い情報しか見ない
衆愚人が相当数混じり始めています。
氏が影響力を正しく行使することを願ってやみません。
例えば、メタンハイドレートの実用化までは
太陽電池こそが日本経済のフロンティアですし、
日本と同様に森林資源に恵まれた北欧の事例を見れば
日本の木質バイオマスに成長余地があるのは明白です。
その辺りまで言及する必要があるでしょう。
▽ 北野氏は2005年にこの著書を出されています。慧眼恐るべし。
▽ 多極化の基本構図を理解するのに最適。
▽ 最新刊です。
中国の脅威に対抗するため、対東南アジア戦略や対南アジア戦略に
注力すべき、という点も是非触れて欲しいところです。
皆さんは初詣に続々と向かっているところでしょうか。
今回は予約投稿を活用してみました。
この頃漸く北野幸伯氏の言論活動が知られてきました。
北野氏はロシアの名門大学で学んだだけあって、
一般の日本人が鈍感なリアルポリティークに鋭敏です。
今後、資源ナショナリズムと多極化(=脱秩序化)の進む世界を
読み解くために、注目すべき人物の一人であると見ています。
資源大国・日本の誕生:北野幸伯(Voice)
http://news.goo.ne.jp/article/php/politics/php-20081219-04.html?fr=rk
”数年先を知るのは困難だが、長期で未来を予測するのは、逆に簡単である。
長期的に見ると、世界的エネルギー危機が起こる可能性が高い。
第1の理由は、世界の人口が年8000万人ずつ増えていること。つまりエネ
ルギー需要は1年間に8000万人分ずつ増えていくのだ。米商務省の予測に
よると、世界人口は2013年に70億人、27年に80億人、45年に90億人を突
破する。
第2の理由は、世界経済の拡大によりエネルギー需要が増加していくこと。
米エネルギー省によると、1日当たりの世界石油消費量は2000年の約7700
万バレルから、05年には8500万バレル、10年9400万バレル、15年1億
200万バレル、20年1億1000万バレルと増加しつづけていく。石油消費量
が特に急増していく見通しなのが、中国とインド。
第3の理由は、新エネルギーの普及が進まないこと。
「石油の話ばかりするが、新エネルギーが普及していくのではないか?」
と疑問を抱かれる人もいるだろう。しかし、現時点での見通しは暗い。
2000年の時点で、石油は世界のエネルギー消費の39%を占めていた。2位
は石炭で24%、3位は天然ガス(22%)、4位原子力(6%)。
20年になるとどうなるのだろうか?
37%が石油。20年間で2%しか減らない。減るといってもエネルギー消費
全体内の割合が減るだけで、量は前記のように増加しつづけていく。
2位は天然ガス(29%)、3位石炭で22%。残り12%のなかに原子力、水
力、風力、太陽エネルギー、燃料電池などが含まれる。
新エネルギーと期待される、風力・太陽エネルギー・燃料電池を全部合わ
せても、20年の段階で全エネルギー消費の5~6%にしかならない。
第4の理由は、石油が枯渇する日が近づいていること。世界を牛耳るイギ
リス・アメリカの油田がすでに枯渇しつつあるのは、よく知られた事実で
ある。そればかりか、遅くても2040年ごろには世界的に石油不足が深刻化
していくと予想される。
以上4つから、長期的に石油価格は上昇しつづけていくとの結論に行き着
く。
もう1つ重要なのは、石油の供給が減少していく過程で、石油獲得戦争が
起こる可能性がある。〔中略〕”
→ 私は逆に、代替エネルギーの拡大余地の大きさを
改めて確認しました。フロンティアは確実に見えています。
日本の技術力と開発力が世界を救う日が近づいている、
そのような読み方もできるでしょう。
”日本の進路を語るとき、排除されなければならないのは、「石油争奪戦」
に参戦することである。米中ロは現在、熾烈な資源獲得競争を繰り広げて
いる。いずれも、自国の利益のためなら何でもありのワイルドな大国であ
る。日本は第2次大戦時、この3大国を敵に回して敗れた。同じ過ちを繰
り返してはならない。
では、日本はどうすればいいのか?
エネルギー自給率100%をめざすべきなのだ。
〔中略〕
メタンハイドレートという新エネルギーがある。簡単にいうと、「凍結状
態のメタンガス」。メタンハイドレートは、メタンを中心に周囲を水分子
が囲んだかたちになっている物質で、ほとんどは海底にある。
見た目は氷と同じ。しかし、火を付けると燃えるので、「燃える氷」と呼
ばれている。一立方メートルのメタンハイドレートを解凍すると164立方
メートルのメタンガスになる。
石油、石炭と比較すると、燃焼時の二酸化炭素は半分ほど。温暖化対策に
も有効な新エネルギーなのだ。
米地質調査所とエネルギー省のデータによると、世界のメタンハイドレー
トは、陸域で数十兆立方メートル、海域で数千兆立方メートル。これは、
世界天然ガス確認埋蔵量(145兆立方メートル)数十倍。天然ガス、原油、
石炭の総埋蔵量の2倍以上といわれている。まさに世界を救う新エネルギ
ーといえる。
ここからが重要。メタンハイドレートは日本周辺にたっぷりあることがわ
かっている。
米エネルギー省によると、南海トラフ(東海地方沖から宮崎県沖)北側に
4200億~4兆2000億立方メートル。地質調査所の調査では、南海トラフ、
北海道周辺海域に、6兆立方メートルが存在する。これは、日本の天然ガ
ス使用量の100年分に匹敵する。
日本近海は、なんと世界最大のメタンハイドレート量を誇っている。その
ため、日本は石油枯渇後、世界最大のエネルギー資源大国になる可能性が
ある。
実際、政府、東京ガス、三井造船、三菱重工、日立製作所、新日本石油な
どが、すでに研究開発に取り組んでいる。〔以下略〕”
元記事はもっと長いので、是非全文をお読み下さい。
いとすぎも当ウェブログで書いてきましたが、
メタンハイドレートが実用化されれば
今の日本の抱える問題はほぼすべて解決します。
残るはオランダ病と怠惰とパラサイト根性だけになります。
この未利用資源の重要性を広く伝えた功績は確実に大きいです。
一方、商業利用まで十年はかかると想定されていること、
また、メタンハイドレートの埋蔵海域を巡って
国益追求の姿勢を剥き出しにした中国とロシアとの
紛争に突入する可能性があることも明白です。
北野氏はそこまで言及すべきだったと考えます。
更に、経済政策に関しては国際政治ほどの鋭い分析が見られません。
アメリカは減税だけで経済成長を遂げたのではありません。
イギリスも全般に日本より税負担が重い国です。
日本のように社会保障分野の赤字が巨額(=未来世代に転嫁している)
にのぼる国で、一律減税はすべきではありません。
既に氏の信奉者のなかには自分に都合の良い情報しか見ない
衆愚人が相当数混じり始めています。
氏が影響力を正しく行使することを願ってやみません。
例えば、メタンハイドレートの実用化までは
太陽電池こそが日本経済のフロンティアですし、
日本と同様に森林資源に恵まれた北欧の事例を見れば
日本の木質バイオマスに成長余地があるのは明白です。
その辺りまで言及する必要があるでしょう。
▽ 北野氏は2005年にこの著書を出されています。慧眼恐るべし。
『ボロボロになった覇権国家』(北野幸伯,風雲舎) |
▽ 多極化の基本構図を理解するのに最適。
『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日―一極主義 vs 多極主義』(北野幸伯,草思社) |
▽ 最新刊です。
『隷属国家 日本の岐路―今度は中国の天領になるのか?』(北野幸伯,ダイヤモンド社) |
中国の脅威に対抗するため、対東南アジア戦略や対南アジア戦略に
注力すべき、という点も是非触れて欲しいところです。