mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

守門岳・浅草岳(1)

2015-10-27 20:14:37 | 日記

 昨日から新潟・魚沼市の2山に登ってきた。守門岳と浅草岳。いずれも豪雪地帯の1500mを超える山、11月になると雪が降る。この時期が、今年最後になると思って出張った。

 

 じつははじめ、守門岳を登るつもりで予定をたてた。ガイドブックにある温泉宿に電話したら、「現在使われておりません」のコール。インターネットで調べてみたら、「今年3月に閉館」とあった。ほかの宿を調べていたら、「守門岳と浅草岳の登山に」と惹句がある。「越後三山」の市販地図にもその二つの山が一枚になって添付されている。そうか近場にあるのなら2山登る方が、それは面白い。そう考えて、昨日5時に家を出て、守門岳の登山口にまず、駆け付けた。

 

 山間に分け入る道は、地図を見る限り細々としていてわかりにくい。大雑把に国土地理院地図にある「十二神社」の住所をnaviに入力してアプローチする。その途次の道路標識に「守門岳登山口→」の案内標識が出ている。道は工事中とかで「落石の危険あり」と看板。現場事務所もあり、道路の通行整理をしている人も何人かいた。だが難なく、予定していた二口駐車場に車を止め、歩き始める。と、上から降りてきた40歳代の人が「auのケイタイをお持ちですか?」と聞く。「ん?……」「いやじつは、車を側溝に落としちゃって……電話を掛けたいのだけれども、docomoは通じないんです」という。ケイタイを貸して電話を掛けるが、向こうが出ない。そりゃそうだよ、まだ、8時半ころだ。出勤していないんじゃないか。「どうしよう」と困っている。道路工事をしていた現場事務所に行けば、知恵があるかもしれないねというと、「行ってみます」とそちらへ向かって降りて行った。

 

 私が上の登山口への林道を歩いて行っていると、ダンプが下から来て追い越していった。かの40歳代を助手席に乗せている。良かった。これなら、びゅ~んと引っ張り出してくれるだろう。さらに歩いているとダンプが降ってくる。片付いたのだ、と思った。ところが、登山口を入った先に車が左の車輪を両輪、側溝に落としている。後ろから件の40歳代とダンプの運転手2人が来て、「こりゃ、ムツカシイね」と話している。ダンプが入らないのだ。さらに、引っ張ると、車体全体がさらに左へ動いて、木々にも接触してひどく傷ついてしまう、とすこぶる論理的に話す。JAFを呼んで釣り上げてもらう方が、傷もつかないしいいと思う、と。40歳代氏はそうすることにしたようだ。気の毒に。山歩きの一日が、車救出の一日になるに違いない。

 

 登山路は水が溜まっていたりして、歩きにくい。守門岳は水を溜めこんでいるようだ。ブナ林になる。なるほど、水が蓄えられるわけだ。コースタイム通りの時間で保久礼(ほきゅうれい)小屋につく。みると林道がすぐ近くにまできている。この先の駐車場に車を止めてここから登り降る人が多いようだ。先の40歳代氏も、ここまで来ようとして道を間違えたのかもしれない。

 

 案内標識はわりと丁寧に作られていて、行程時間が記されている。それが私の歩度にちょうど合っているようだ。紅葉が良かったのは、このあたりまで。ほとんど木の葉は枯れ落ちて冬の様子を呈している。キビタキ小屋付近を通過するときに60代の男性が「早いですね」と私を見ていう。「えっ?」「いや、貴方を追い越してきたから……」というが、(追い越された覚えがないから)よく呑み込めなかった。彼は林道を歩いているときの私を車の中から見かけたらしい。さらに上で、単独行の男性に追いついた。大岳まで行くという地元の人。「若い頃みたいに歩けない」という78歳。それでも私に追い越されまいと、さかさかと登る。途中の水場があるところで、3人の人たちを追い越した(この人たちにはあとで出会うことになる)。

 

 守門岳という名の山は、じつはない。この大岳、青雲岳、袴岳の三山を総称して守門岳と言っているようだ。地理院地図も総称らしく、連なりの全体にかかるように大きな文字で記している。この大岳から北の方がよく見える。78歳氏が佐渡も見えると話すが、遠くは雲がかかって見晴らせない。

 

 ここもほぼコースタイム。私の歩行能力が落ちているのだろうか。それとも、この地図のコースタイムが速いのだろうか。大岳から青雲岳と袴岳が一望できる。だが、その両山の切れ落ちた北側は、南から吹く風に吹きはらわれる雲に埋め尽くされて、見ることができない。北アルプスの富山側と長野側の稜線を見ているようである。大岳からはいったん降って登り返す。今日の私の下山路になる「二口分岐」は目立たない背の高い笹に囲まれている。そこから青雲岳へは稜線歩き。袴岳の肩のように湿原が広がっていて、見晴らしもよい。袴岳はひときわ高い。1537m。ちょうど若者が一人下山にかかるところであった。保久礼駐車場へ戻るという。ちょうど12時。少し強い風を避けるため、羽毛服を着込んで、お昼にする。温かいラーメンが元気につながる。陽が当たりはじめた。先ほど通過した青雲岳の湿原に、あとから来た人たちがいる。先ほど山頂ですれ違った若者が、その手前を歩いている。

 

 山頂の石の山名表示板は、飯豊山から尾瀬の山々、谷川岳まで記している。新潟県の三条市の方は良く見えるが、日本海までは見晴らせない。西の方を見るが、雲が張り出して明日登る予定の浅草岳はまったく見ることができない。山頂付近には融け残った雪が笹原の間にみえる。昨日降ったものだろうか。

 

 下山にかかる。ほどなく明るく開けた青雲岳に差し掛かる。先ほどの3人が木製のテーブルを囲んでお昼を食べている。60歳代男、50歳代女、30歳代男の3人。同じ職場の人たちだろうか。もうここから引き返すという。「えっ、もったいない。10分ほどで行けるのに」と私がいうと、「地元です、何度も来てますから」と。後続の人たちは来ていない。

 

 二口分岐から下山にかかる。長い尾根を降り、伝い歩いて車を止めた駐車場に戻るのに、2時間。歩いていて、足元が危ういと感じた。足場が悪いというよりも、疲れが出てきて、私の足元がおぼつかないのだ。こうしたことを気にしていないと、滑ったり転んだりして、大きな事故になってしまう。振り返ると、いま歩いた守門岳の一番手前の山腹が見事に紅葉している。うむ、これがいいのだと、カメラのシャッターを押した。

 

 そこから今日の宿、大白川の音松荘に向かう。その途次に、車を荷台に乗せたキャリア車が方向転換をしていた。ひょっとしたら、今朝の側溝に落ちた車じゃないか。とりあえずは良かったね、と思う。下山の報告メールもしなくてはならなかったが、宿についてからで良かろうと、車を走らせた。ところが、宿についてメールを入れると「送信不能」という。みると「圏外」である。浅草岳の麓なのだが、辺境なのだね。昔の登山基地の宿らしく、楚々としたたたずまい。温泉であった。実はすぐ隣の大きな「国民宿舎」に宿泊を申し込んだら、一人だと知って、断られてしまった。なんてことだ。そちらはひっそり閑としている。(つづく)