書名 「蓑虫放浪」
著者 望月昭秀 写真 田附勝 出版社 国書刊行会 出版年 2020
なんとも人を食ったようなおじさんの放浪の足跡を追った本。このおじさん、まず顔が人を食ったような面をしている。絵を描きながら旅していたようで、これで飯を食っていたと思われるのだが、必ずここには蓑虫おじさんの顔がある。この顔がとにかく人を食っている。見るからに怪しいのだが、どこか憎めない愛嬌のようなものもある。この顔がなんとなくこの人の人生を物語っているように思えてならない。
笈が旅の友なのだが、これがいまで言えばテントというかむしろモンゴルのゲルに近い、これを背負って、寝るときに組み立てて寝る、こうした放浪のためのツールをつくっているのが偉い。おかしいのは晩年田舎に引っ込んだとき、竹で家をつくり、それをみんなで運ばせて、イベントにまでしていること。この竹の家すぐに壊れてしまったというのもおかしい。
津軽の亀ヶ岡遺跡の発掘をして、もしかしたらあの有名の斜光土偶を発見したかもしれない、絵を描いて飯を食うだけでなく、どうも庭師のようなこともしていて、あちこちに庭をつくっていた。とにかく面白い人生をおくった人である。そしてなにより旅を生活にしていたうらやましい人であることは間違いない。