ジャンル 美術展
観覧日 2024年7月23日(~8月4日)
会場 埼玉県近代美術館
2020年5月に亡くなった画家岡部文明さんのサーカス愛にあふれ、道化師探求の魂の軌跡がたどれる圧巻の展示会である。ラグビーワールドカップが日本で開催された年、横浜の赤レンガ倉庫で開催された展示会のあと、やはり美術館で展示会をしたいと岡部さんが語っていたことを、奥さんがその思いを叶えたいと何年もかけて実現した。その思いが伝わってくる。そんな大きくない部屋4部屋で、岡部さんがその時々に道化師に託した思い、あるいは道化師とはなんたるかを追い求めた思いを探ることができる。これからご覧になる方は、このコーナーに懸けられている岡部さんのメッセージボードをぜひ読んでもらいたい。道化師を描きたい、そして絵の中で道化師を演じたいという岡部さんの真摯な思いを知ることができるだろう。
廊下にひとつのアクセントのように、小さな作品をたくさん見れるのもよかった。それはスケッチだったり、絵ハガキの原画だったり、見ていてあきない。
そして圧巻は中央の一番大きな部屋に展示されたBokabe劇場。
岡部さんがたどり着いたサーカスの楽園の世界がここにある。岡部さんが絵の中で道化師となり、演じるサーカスの世界にの世界を誘われる、そこはまさに楽園、動物も芸人たちも共に生きる場所であった。一枚一枚の絵に描きこまれたサーカスの世界は、この部屋で共鳴しあい、まさに楽園の世界へと誘われていく。シャガールのサーカスの絵からクレズマーの音楽が聞こえてくるように、サーカスマーチが聞こえてきた。見事な展示であった。