ジャンル 映画
DVD
国立演芸場展示室で開催されていた「エノケン」展で、この映画のダイジェスト版が流されていた。その中でサーカスの一座の場面がちらっと出ていたのがとても気になり、企画した原さんに問い合わせところ、柿沼サーカスが映画の中に出ていると教えてもらい、これは見なければと思っていたのだが、原さんからDVDを送ってもらい、見ることができた。
映画自体も共演している若山セツコの初々しい清純さがエノケンのやんちゃぶりをうまく際立たせ、最後地獄での10年間のお勤めを終え、地上に1時間だけ戻してもらったエノケンが自分の大きくなった子どもと相撲をとったり、妻と再会(妻には見られないようにしながら)するラストなどはぐっとくる佳作である。
ただ私にとって大事だったのはサーカスのシーンである。
エノケンが若山セツコと出会うのが柿沼サーカスが浅草(だと思う)で公演しているところが出てくる。エノケンはここで口上役をしていた。サーカス場のなかで馬の曲芸をしている場面などが出てくる。サーカス的に見れば、これはかなり貴重なものである。サーカス場はテントではなく、かなり立派なものなので、実際の柿沼サーカスのものではないかと思う。セットではないだろうか。丸太を組んだ小屋であった。馬の芸は火の輪くぐりとか、ジギド風の騎馬などが見られる。映画では団長が女で(清川虹子が演じる)、若山セツコを追い出すなどいじわるに描かれている。柿沼サーカスと実名で出ているのに、この設定をよく了解したなと思ったりした。トラックで宣伝を兼ねながら次の場所に移動する場越しも描かれている。それとチンパンジーとエノケンが共演しているのにも驚いた。これはサーカス団のチンパンジーではないようだ。つくられたのが1954年、サーカスが盛んだったころである。その頃のサーカス映像を収めている意味でも貴重な映画である。