書名 「喜劇役者の時代」
著者 高平哲郎 出版社 ヨシモトブックス 出版年 2019
ひどい本である。おそらく宮城県の人はこの本の一頁の一行目も読んで、怒りで本を叩きつけるのではないかと思う。由利徹の伝記を書くのだったら、彼が石巻出身であるということの重要性は承知しているはずであるにも関わらず、岩手県石巻とこの著者は書いているのである。こんなひどい冒頭の一行はない。著者も著者だが校正をしなければならない編集もひどい。基本の基本だろう、地名とか人名をチェックするのは。しかも澤田隆治の名前まで間違っている。なんのリスペクトがないことを暴露している。「由利徹が行く」というのは名著になっているらしいが、ほんとうのことなのと疑ってかかるべきだろう。たぶんこの著者は裏をまったくとっていない、おそらくそういう人なのだろう。由利さんがサービス精神でかなりぼって話していることをそのまま書いている。由利さんのインタビューということであればそれでいいだろうが、この本にしてもあの「由利徹が行く」も評伝として世に問っているものだと思う。それならば裏をとることは著者の義務である。だいたいこの本はなぜいま出されたのか、すでに「由利徹が行く」があるのに、それを越えるものでもなく、ただなぞっただけの本である、ならば「由利徹が行く」を文庫化すればいい。あえてこの本をいま出す意義がまったく感じられない。とにかくひどい本である。