デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

異郷に生きるⅥ

2016-10-19 14:20:42 | 買った本・読んだ本
書名 「異郷に生きるⅥ 来日ロシア人の足跡」
編者 中村喜和・長縄光男、沢田和彦、ポダルコ・ピョートル 出版社 成文堂 出版年 2016

先頃100回の例会を最後にいままでおよそ21年にわたる活動にとりあえず終止符を打ち、休会となった来日ロシア人の会の最後となるアンソロジーである。今回も多岐にわたる分野を横断して、多くの研究者の方が自分たちのテーマを追いかけ執筆している。来日ロシア人という大枠だけで、よくもこれだけ多彩なテーマが出てくるものだと感心してしまう。この会のひとつの持ち味だと言ってもいいのだか、多くの在野の研究者とロシア人の研究者を擁している、論文を書くということより、自分の関心あるところに執拗にアプローチする、その目のつけどころと、詳細な調査報告を読むのはなかなか楽しい読書体験であった。ここで扱われているテーマのひとつひとつは、小さなもの、細かいことに見えるものなのだが、そこを掘り下げていくなかこそ見えてくる事実・真実が浮かび上がる、そうしたレポートがいくつも並んだ。その中にはほんとうにエッと思わされるような事実に何度も遭遇することになった。沢田和彦の外事警察記録を丹念に追いかけたレポートでは、彼らが残していった記録で来日したロシア人の動向がこんなにも明らかになるものかと驚かされたし、シュラトフ・ヤロスラフのレポートで、著名な東洋学者コンラドとポリヴァーノフがロシア軍部から依頼を受けて来日したときに報告を求められていたことを知った。第一次世界大戦期にロシアと日本が急接近し、ロシアが日本に武器を買いつけに来ていたなどということもバールィシェフ・エドワルドのレポートを読んで初めて知った。こうした小さなテーマを掘り下げたものがひとつのアンソロジーとしてまとめられることによって、私たちは日露間にあった豊かな関係を知ることができるのである。それが6冊にもなって続けられたこのシリーズが果たした大きな役割だったといってもいいのではないだろうか。
さらに自らの個人的な体験や縁によって、来日ロシア人の人たちを語るエッセイもある。六本木の赤ひげと言われたアクショーノフ医師の思い出を語る中で、彼にかけられていたスパイ説が根拠がないことを飯島一孝は明らかにした。女医ピニロピによって難病を克服することができた熊谷敬太郎の彼女の半生をたどるエッセイにも言えることだが、実際に付き合ってきた人たちでないと書けない気持ちのこもった文章であった。吉橋泰男はニコライ大主教からぼろくそけなされていた自分の祖父の濡れ衣を見事に晴らした。日露関係を政治や経済の視点からだけ見ていくことにあまりにも慣れさせられてしまった。日露関係の一番の土台は人と人の関係である。その意味では江戸時代から現代まで脈々と日本人とロシア人は豊かな関係を結んでいたことを、このアンソロジーは語っている。未来にもつながっていくのはこうした人と人の関係をじっくりとみつめ、つくりあげていくことではないか。「日本人にとっては「ロシア」への、ロシア人にとっては「日本」への、敬愛の念だけを唯一の参加資格とする、出入りの全く自由な集まり」のこの会だからこそでき得たものである。
この会が100回を期していったん休会するというのは、新たな世代に次を担ってもらいたいという最初からの方針であったようだ。この志を受け継ぐ人たちが早く登場することも期待したい。

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留守番と思ったら

2016-10-19 09:55:15 | デラシネ日誌
長浜公園と船溜の池が果然にぎやかになってきた。これからどんどん増えてくるのではないのかな。楽しみが増えてきた。ただ群れから離れているのもいる。これたぶんロンリー君
ライオン君木隠れの術。可愛いよな。
今日は終日ひとりで留守番の日と思ったらキダム担当の同僚が昼前に出社。キダムは今週末のアートナイト。いろいろ大変なようだ。
16時過ぎに石巻のホヤパイお姉ちゃんが上京したというので会社に来てもらう。ホヤパイの映像をもらう。いろいろ宣伝してやろう。
今日ユーロースペースで「将軍さまあなたのために映画撮ります」を見る。韓国のスター女優と映画監督が北朝鮮に拉致されたという事件(当時は亡命ともいわれた)をドキュメンタリーで追ったもの。目玉はこのふたりが録音した金正日の肉声。ふたりにいい映画を撮って西側を見返そうと呼びかけるのだが、ほんとうに彼の肉声なのだろうか。こうも簡単に録音させるのかなという気もしたのだが・・・
映画の怖さというのも感じた。北朝鮮の人たちのマインドコントロールされているという作り側の主張が、金日成や金正日が死んだときに泣き叫ぶ民衆の画像でモンタージュされていくのだが、そう見えてくる。それが映画の怖さでもある。

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